「訪問看護に関係ある2024年介護報酬改定のポイントをまとめて理解したい!」
「改定で訪問看護のリハビリはどう変わるの?」
「届け出ないと減算されるの⁈」
訪問看護にも大きな変更がもたらされる、2024年の介護報酬改定。
質の高いサービス提供を促進し、在宅移行の推進や他職種連携の強化、24時間対応体制の充実などを目指した改定となっています。
しかし、変更点が多岐にわたるため、訪問看護ステーションの管理者にとってはわかりにくいと感じる人も多いのではないでしょうか?
そこでこの記事では、2024年4月末時点の以下の内容を詳しく解説します。
・訪問看護の改定の重要ポイント ・基本報酬のベースアップ ・加算の新設・見直し・減算 ・訪問看護のリハビリテーション関連の変更 ・改定を踏まえたステーションの対策、届出 |
これからの訪問看護の方向性を見据えた上で適切な準備と対応を行うために、最後まで読んでぜひ参考にしてください。
≫関連記事:「介護保険による訪問看護とは?管理者に必要な介護保険の知識や、報酬単位・加算の算定について」
はじめに:2024年介護報酬改定の背景とポイント
3年ごとに行われる介護報酬改定。まずは、改定の背景と、管理や経営にかかわる重要なポイントをおさえましょう。
改定の背景
2024年は診療報酬と介護報酬の同時改定であり、物価高等賃金上昇、人材確保の必要性などが改定の柱となっています。今回の介護報酬の改定率は+ 1.59%であり、過去2番目に高い改定率です。
また、高齢化の進展に伴い、医療と介護のニーズを併せ持つ利用者の増加が見込まれています。そのため、今回の同時報酬改定では、医療と介護の連携推進に向けた情報提供の内容や連携のあり方などが検討されました。
訪問看護においても、在宅移行の促進、24時間対応体制の充実など、さまざまな課題に対応するための改定がなされます。
以下に特に重要となるポイント5つを挙げます。
訪問看護における要点5つ
- 質の高い訪問看護の提供
- 専門性の高い看護師による訪問看護を評価する「専門管理加算」の新設
- 訪問看護のリハビリテーションの評価見直し
- 理学療法士などリハビリ職による訪問の場合、人員配置などに応じた減算の適用
- 在宅移行の促進と他職種連携の強化
- 退院当日の訪問看護を評価する「初回加算」の新区分設定
- 退院時共同指導の指導内容の提供方法の柔軟化
- 口腔管理に係る連携を強化する「口腔連携強化加算」の新設
- 24時間対応体制の充実と業務の効率化
- 夜間の看護師の勤務環境改善に向けた新たな加算区分の創設
- 夜間対応を補助職員が可能となる場合の見直し
- 適切なサービス提供の確保
- 業務継続計画の策定の義務付けと未策定時の減算
- 高齢者虐待防止の取り組みの努力義務化と未実施時の減算
- 身体拘束の適正化の義務付け など
訪問看護の基本報酬ベースアップ
基本報酬改定
訪問看護ステーションの基本報酬は以下のように改定され、わずかに引き上げられます。
例えば、看護師による60分の訪問が1カ月に1000回ある事業所では、2000単位、つまり月額約2万円の売り上げ増加が見込まれます。
2024年介護報酬改定で新設される加算と算定要件
専門管理加算 250単位/月 NEW
緩和ケア、褥瘡ケア、人工肛門ケア、人工膀胱ケアなどの専門研修を受けた看護師や、特定行為研修を修了した看護師が、計画的な管理を行った場合に、月1回に限り250単位を加算できます。
専門の研修を受けた看護師 「皮膚・排泄ケア」「緩和ケア」「乳がん看護」「がん放射線療法看護」「がん薬物療法看護」「皮 膚・排泄ケア」の認定看護師と、「がん看護」の専門看護師 |
特定行為研修…厚生労働大臣が指定する指定研修機関において行われる以下の研修 ① 「呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連」「ろう孔管理関連」「創傷管理関連」「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」のいずれかの区分の研修 ② 「在宅・慢性期領域パッケージ研修」 |
それぞれの対象者は以下のとおりです。
緩和ケア、褥瘡ケア又は人工肛門ケア及び人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護師が計画的な管理を行った場合 |
□悪性腫瘍の鎮痛療法又は化学療法を行っている利用者 □真皮を越える褥瘡の状態にある利用者 □人工肛門又は人工膀胱を造設している者で管理が困難な利用者 |
特定行為研修を修了した看護師が計画的な管理を行った場合 |
□診療報酬における手順書加算を算定する利用者 □対象の特定行為 ・気管カニューレの交換 ・胃ろうカテーテルもしくは腸ろうカテーテルまたは胃ろうボタンの交換 ・膀胱ろうカテーテルの交換 ・褥瘡または慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去 ・創傷に対する陰圧閉鎖療法 ・持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整 ・脱水症状に対する輸液による補正工肛門又は人工膀胱を造設している者で管理が困難な利用者 |
専門管理加算の届出
専門管理加算の算定には、各自治体への届出が必要です。
届出書は以下のとおりです。
計画的な管理が必須で、アセスメントや記録をきちんと残す必要がありますね
遠隔死亡診断補助加算 150単位/回 NEW
離島などに居住する利用者に対する医師による死亡診断について、ICTを用いた在宅看取りに関する研修を受けた看護師が主治医の指示に基づき補助した場合の加算が新設されました。
訪問看護ターミナルケア療養費に150単位/回を加算できます。
遠隔死亡診断補助加算は、離島などの僻地での在宅での看取りを円滑にするための加算です。利用者の居住地域によっては、すみやかな医師の往診などが困難な場合があります。このような場合に、情報通信機器を活用して看護師が死亡診断の補助を行うことで、在宅での看取りを行うことができます。
厚生労働大臣が定める地域(特掲診療料の施設基準等 第四の四の三の三)に居住する利用者に限ります
なお、看護師による死亡診断の補助は2017年からなされており、今回の改定で加算を算定できるよう評価されました。
遠隔死亡診断補助加算の届出
遠隔死亡診断補助加算の算定には、各自治体への届出が必要です。
届出書は以下のとおりです。
口腔連携強化加算 50単位/月 NEW
利用者の口腔の健康状態の維持・改善を図るために、訪問看護ステーションと歯科医療機関との連携を強化することを目的とし、口腔連携強化加算が新設されました。
訪問看護の利用者は医療的ニーズが高い方が多く、何らかの口腔の問題を抱えた方は少なくありません。しかし厚生労働省によると、要介護者の8割が何らかの歯科治療あるいは専門的な口腔ケアを必要としているにも関わらず、実際に治療を受けたのは約27%に過ぎず、わずか3割にも満たないのが現状です。
訪問看護の提供時に利用者の口腔の状態の確認を行い、その結果を歯科医療機関や介護支援専門員に情報提供した場合に、月1回に限り50単位を加算します。
口腔連携強化加算の算定要件
- 看護師等が利用者の口腔の健康状態の評価を実施した場合において、利用者の同意を得て、歯科医療機関および介護支援専門員(ケアマネージャー)に対し、当該評価の結果を情報提供すること(評価項目については下の「口腔連携強化加算に係る口腔の健康状態の評価及び情報提供書」参照)
- 事業所は利用者の口腔の健康状態に係る評価を行うに当たって、歯科医療機関の歯科医師または歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、当該従業者からの相談等に対応する体制を確保し、その旨を文書等で取り決めていること
口腔連携強化加算の届出
口腔連携強化加算の算定には、各自治体への届出が必要です。
届出書は以下のとおりです。
口腔連携強化加算の算定を通じて、全身の健康状態の維持・改善に向けた取り組みを進めていくことが求められているとわかります。利用者のQOLの向上や誤嚥性肺炎等の予防につながることが期待されますね。
2024年介護報酬改定で見直される主な加算
今回の改定でルール変更される加算を解説します。
24時間対応体制の充実
24時間対応体制の充実をはかるため、緊急時訪問看護加算に、①上位区分の緊急時訪問看護加算(Ⅰ)、②訪問看護における24時間対応のニーズに対する即応体制の確保(電話対応のルール変更)が導入されます。
厚生労働省の調査によると、24時間対応体制の課題として、「看護職員の精神的・身体的負担が大きい」、「夜間・休日対応 できる看護職員が限られているため負担が偏る」が多く挙げられてました。特に小規模のステーションにおいて、オンコール体制の負担が大きくなっていた背景があります。
①緊急時訪問看護加算(Ⅰ)600単位/月 NEW
緊急時訪問看護加算に、夜間対応する看護師の勤務環境に配慮した場合を評価する新たな区分「緊急時訪問看護加算(Ⅰ)」が新設されます。
改定前 | 改定後 | |
緊急時訪問看護加算 574単位/月 | ➡ | 緊急時訪問看護加算(Ⅰ) 600単位/月 新設 緊急時訪問看護加算(Ⅱ) 574単位/月 |
(出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」)
「緊急時訪問看護加算(Ⅰ)」の算定要件
- 利用者またはその家族等から電話等により看護に関する意見を求められた場合に常時対応できる体制にあること
- 緊急時訪問における看護業務の負担の軽減に資する十分な業務管理等の体制の整備が行われていること NEW
次に掲げる項目のうち、 次のアまたはイを含むいずれか2項目以上を満たす必要があること- ア 夜間対応した翌日の勤務間隔の確保
- イ 夜間対応に係る勤務の連続回数が2連続(2回)まで
- ウ 夜間対応後の暦日の休日確保
- エ 夜間勤務のニーズを踏まえた勤務体制の工夫
- オ ICT、AI、IoTなどの活用による業務負担軽減
- カ 電話等による連絡及び相談を担当する者に対する支援体制の確保
緊急時訪問看護加算(Ⅰ)の届出
緊急時訪問看護加算(Ⅰ)の算定には、緊急時訪問看護加算の届出として各自治体への届出が必要です。
届出書は以下のとおりです。
緊急時訪問看護加算(Ⅰ)】の算定に向けて、代休や翌日の勤務開始時刻の調整などの配慮を明確化しておく必要がありますね。
≫関連記事:「訪問看護の緊急時加算とは?複雑な医療保険・介護保険の緊急時加算について」
②訪問看護における24時間対応のニーズに対する即応体制の確保
看護師等に速やかに連絡できる体制が確保されている場合は、看護師等以外の職員も利用者からの電話連絡を受けられるよう見直されます。
上記の緊急時訪問看護加算(Ⅰ)の導入と同じく、オンコール体制の負担軽減をはかるものです。
看護師・保健師以外の職員でも電話連絡を受けられる算定要件
次のいずれにも該当し、24時間対応体制に係る連絡相談に支障がない体制を構築している場合
- マニュアルの整備
看護師等以外の職員が利用者またはその家族等からの電話等による連絡及び相談に対応する際のマニュアルが整備されていること - 緊急の訪問の必要性を判断できる連絡体制と訪問可能な体制
緊急の訪問看護の必要性の判断を保健師または看護師が速やかに行える連絡体制および緊急の訪問看護が可能な体制が整備されていること - 電話対応する職員の勤務体制・状況の明確化
訪問看護ステーションの管理者は、連絡相談を担当する看護師等以外の職員の勤務体制および勤務状況を明らかにすること - 報告と記録
看護師等以外の職員は、電話等により連絡および相談を受けた際に、保健師または看護師へ報告すること。報告を受けた保健師または看護師は、報告内容等を訪問看護記録書に記録すること。 - 利用者・家族への説明と同意
上記4点を利用者および家族等に説明し、同意を得ること
届出
看護師・保健師以外の職員も電話対応できるようにするためには、緊急時訪問看護加算の届出が必要です。
届出様式は、上記の緊急時訪問看護加算(Ⅰ)の届出書式と同じものです。
どちらも、夜間対応する看護師の業務負担を軽減し、24時間対応体制の充実を図ることを目的としているんですね。オンコール体制を整備すると同時にオンコール手当を充実させ、体制と給与両方からスタッフの負担を軽減することが必要ですね。
初回加算(Ⅰ)300単位/月 NEW
退院当日の訪問看護を評価する新たな区分として、「初回加算(Ⅰ)」が新設されます。
退院直後の利用者に対する訪問看護の提供を促進し、在宅生活への円滑な移行を支援します。
退院日に初回の訪問看護を行った場合に、1月につき350単位を算定できます。
改定前 | 改定後 | |
初回加算 300単位/月 | ➡ | 初回加算(Ⅰ) 350単位/月 新設 初回加算(Ⅱ) 300単位/月 |
(出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」)
「初回加算(Ⅰ)」の算定要件
- 新規に訪問看護計画書を作成した利用者に対して、病院、診療所または介護保険施設から退院または退所した日に看護師が初回の訪問看護を行った場合に算定する。
- 初回加算(Ⅱ)を算定している場合は、算定しない。
≫詳しくはこちら:「完全版:訪問看護初回加算の徹底攻略マニュアル」
退院時共同指導の指導内容の提供方法の柔軟化
指導内容の提供方法が文書以外の方法でも可能となります。
こちらも、上の初回加算(Ⅰ)の新設と同じく、病院から在宅への円滑な移行支援が目的で、より効果的な退院時共同指導の実施と、業務の効率化が期待されます。
退院時共同指導の指導内容の提供方法の柔軟化に当たっては、以下の点に留意する必要があります。
- 文書以外の方法でも可能であるが、利用者の同意を得た上で行うこと
- 対面のほか、履歴が残る郵送やメール等によることも差し支えないこと
ターミナルケア加算の見直し 2,500単位/月
介護保険の訪問看護等におけるターミナルケアの内容が、医療保険におけるターミナルケアと同様であることを踏まえ、評価が引き上げられます。
なお算定要件に変更はありません。
改定前 | 改定後 | |
2,000単位/月 | ➡ | 2,500単位/月 |
2024年介護報酬改定で導入される減算と対策
未実施・未届出により減算の対象となるものもあるので、必ず対応が必要です。
高齢者虐待防止措置未実施減算 NEW(要届出)
高齢者虐待防止措置の実施が義務化され、未実施の場合は所定単位数の100分の1に相当する単位数が減算されます。
高齢者虐待防止措置には、以下の取り組みが含まれます。
- 虐待の防止のための対策を検討する委員会の定期的な開催
- 虐待の防止のための指針の整備
- 従業者に対する虐待の防止のための研修の定期的な実施
- 虐待の防止のための担当者の配置
高齢者虐待防止措置未実施減算の適用を避けるためには、組織的な取り組みを進めていくことが求められます。
未策定では減算となるので、絶対に実施しないといけないこととして早めに対応しましょう。
高齢者虐待防止措置実施の有無の届出
留意点は、策定をしても届け出をしないと減算扱いとなります。
高齢者虐待防止措置未実施減算の適用を避けるためには、2024年5月15日までに届け出が必要です。
届出は、介護給付費算定に係る体制等状況一覧表に新たに「高齢者虐待防止措置実施の 有無」欄が追加されますので、「1:減算型」、「2:基準型」 のいずれかを選択し提出します。
届出がない場合は、2024年6月1日以降「1:減算型」とみなされます。
なお自治体によっては上の一覧表ではなく、簡易的に電子申請システムで届け出る場合もあるので、確認しましょう。
業務継続計画未策定減算 NEW(要届出)
業務継続計画(BCP)の策定が義務化され、未策定の場合は所定単位数の100分の1に相当する単位数が減算されます。
業務継続計画は、感染症や非常災害の発生時において、利用者に対する訪問看護の提供を継続的に実施するための、および非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画です。
業務継続計画には、以下の内容を盛り込む必要があります。
- 感染症や非常災害の発生時において、利用者に対する訪問看護の提供を継続的に実施するための、および非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画
- 感染症や非常災害の発生時における訪問看護の提供を継続的に実施するための体制および非常時の業務再開に向けた計画の具体的内容
- 計画に従い、定期的に訓練を実施すること
業務継続計画策定の有無の届出
留意点は、策定をしても届け出をしないと減算扱いとなります。
訪問看護においては、2025年3月31日までは減算されない経過措置が設けられています。
業務継続計画未策定減算の適用を避けるためには、2025年3月15日までに届け出が必要(2025年3月31日までは減算が適用されないため、2024年4月時点では届出は不要)です。
業務継続計画と高齢者虐待防止措置では届出の時期が10カ月違いますね。
どちらにせよ、早急に取り組みを進めていくことが求められます。
リハビリテーション関連の減算
理学療法士等リハビリ職による訪問看護の提供状況を適正化するための措置として、新たな減算が導入されます。
医療ニーズの高い在宅療養者が増加している中、より質の高い訪問看護を効果的・効率的に利用できるようにする観点から、看護職とリハビリ職それぞれの専門性に即した役割を適切に評価するため、訪問看護と訪問リハビリの役割分担が必要とされています。
具体的には①訪問回数、②加算状況、③要支援者への12カ月を超えるリハビリ職の訪問、の3点において減算が設けられます。
①理学療法士等の訪問回数が看護職員の訪問回数を超えた場合の減算 NEW -8単位/回
②緊急時訪問看護加算、特別管理加算および看護体制強化加算のいずれも算定していない場合の減算 NEW -8単位/回
算定要件
① 前年度の理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士による訪問回数が、看護職員による訪問回数を超えていること
⇒1回につき8単位を所定単位数から減算します。
② 緊急時訪問看護加算、特別管理加算および看護体制強化加算をいずれも算定していないこと
⇒これらの加算の算定は、医療ニーズの高い利用者への対応状況を示すものです。どれか1つも算定していない場合のリハビリは、適切な訪問看護の介入がなされていないとういう評価で、1回につき8単位を所定単位数から減算します。
つまりリハビリ特化型のステーションに対しての措置といった内容ですね。これまで訪問看護からリハビリを主に利用する場合、最低でも3ヵ月に1回は看護師が訪問してモニタリングすることや、一緒に計画書を立てるといったルールはありました。今回特化型ステーションには大幅な減算となりますね。
しかし地域によっては訪問リハビリや通所リハビリの事業所は不足している状況もあるので、ある程度訪問看護のリハビリも必要に思います。都会と地方一律の減算は公平でないようにも感じました。
結構な減算なので今後も注目ですね。
③12カ月を超える理学療法士等による訪問の減算(介護予防訪問看護のみ) NEW さらに-15単位/回
介護予防訪問リハビリテーションにおけるADLの経時変化は、12カ月まではADLの改善に効果があるが、一方で12カ月以降は維持されていたという厚生労働省の調査結果があります(下図)。
このことから、要支援者への12カ月を超えるリハビリ職の訪問には、上記の①②の減算から更に1回につき15単位減算されます。
維持期には、市町村の行う介護予防・日常生活支援総合事業へ移行をはかるなどして地域包括ケアシステムの構狙を推進する国の狙いとも読めますね。
しかし利用者目線から見ると、リハビリを長期にわたり利用すればお得ともいえます。加算・減算だけでは済まない問題に感じます。
≫関連記事:「訪問看護リハビリのルール徹底理解と協業体制の極意~2024年度改定を踏まえた看護師とセラピストの連携~」
2024年介護報酬改定のその他の改定ポイント
身体的拘束等の適正化の推進
身体的拘束等の適正化を推進するための取り組みが求められます。
運営基準に以下2点が規定されます。
- 利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行ってはならないこと。
- ・身体的拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録しなければならないこと。
筆者の経験では、身体拘束を行うことは滅多にないことですが、認知症の方でケア時の不安が大きく攻撃的になり、家族とスタッフが毎回のようにケガをするケースがありました。家族の相談もありケア時のみミトンを使用させていただきました。
訪問看護ステーションにおいては、身体的拘束等の適正化を通じて、利用者の尊厳を守り、質の高い訪問看護サービスを提供していくことが求められます。
テレワークの取扱いの明確化
提供する介護サービスの質の担保に留意しつつ、柔軟な働き方を可能としていくため、テレワークの取り扱いについて明確化が行われます。
個人情報を適切に管理 していること、利用者の処遇に支障が生じないことを前提に、テレワークが可能となりますが、配置基準についてはまだ明確な基準が示されていません。
厚生労働省による介護業界でのテレワークに関するアンケート結果では、ケアマネージャーの約90%がテレワークの余地ありと回答した一方で、看護職員や介護職員、薬剤師などは、職務上テレワークが難しいとの意見が多数でした。テレワークの課題としては、情報管理のリスクやコミュニケーション不足などが挙げられています。
実験的にテレワークを行った結果、1日丸ごと不在だと支障があるものの、時間単位であれば問題ないとの意見が多数でした。(参考:R5年厚生労働省「人員配置基準等(改定の方向性) 」)
テレワークを活用し、働く人の心と体の健康を大事にしながら、パフォーマンス向上につなげていくことが期待されます。
特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算及び中山間地域に居住する者へのサービス提供加算の対象地域の明確化
離島や豪雪地帯などに所在する事業所や居住する利用者への訪問に算定できる加算です。
地理的条件等により訪問看護サービスの提供が困難な地域において、サービス提供を行う訪問看護ステーションを評価するために設けられているものです。
今回の改定で、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」で規定する「過疎地域」が含まれることが告示改正で明確化されます。
対象地域に該当するかどうかを確認しましょう。
特別地域加算の対象地域の見直し
特別地域加算の対象地域について、見直しが行われます。
特別地域加算の対象地域の見直しに伴い、加算の算定状況が変化する可能性があります。
見直し後の対象地域を確認しましょう。
地域区分について
地域区分について、周りの市は高いのに囲まれている自分の地域だけ低い というような公平性を欠く状況があったため、特例が設けられ是正されます。
隣のステーションと同じような動きをしているのに売上がこちらの方が低いという状況ではスタッフの給与も公平性を欠くなどの課題がありました。
今回の改定で、周りの地域区分状況によって地域区分を変更できます。
地域区分の変更は以下の図に赤字で記載されています。改めて確認してみましょう。
人員配置基準における 両立支援への配慮
治療と仕事の両立が可能となる環境整備を進め、職員の離職防止・定着促進を図る観点から、 各サービスの人員配置基準や報酬算定について、以下の見直しが行われます。
大体1日2時間の時短でも1人と数えられるということですね。
国のガイドラインによると病気になって働いている状況、病気と治療の状況から主治医が作成した意見書をもとに、どう働くか相談するんですね。治療もしながら働きやすくなります。
≫参考:令和6年厚生労働省「事業場における治療と仕事の 両立支援のためのガイドライン」
管理者の責務及び兼務計画の明確化
管理者が他の職務を兼ねることができる範囲が拡大されましたが、同時に指定訪問看護ステーションの管理業務に支障がないことを確保するための条件が詳細化・明確化されました。
ローカルルール について
人員基準にかかる地域の実情に応じたローカルルールについて、必要性についてQ&Aで示しておくようにと厚労省から都道府県や市町村に示されました。
全国でそれぞれ人員基準に関しての取り決めが若干違う実情があります。
地域の実情に応じた独自のローカルルールについてQ&Aできちんと示されることで、訪問看護ステーションから自治体に何度も問い合わせる必要がなくなるので、期待がもてますね。
書面提示規制の見直し
令和7年度より、運営規程の重要事項などを、情報公表システムなどのウェブサイト上に掲載・公表することが義務付けられます。
訪問看護計画書の書式変更
訪問看護計画書の内容が一部変わります(赤丸部分)。
変更点:「問題点・解決策」⇒「療養上の課題・支援内容」
≫関連記事:「ケア&ステーションの質向上!訪問看護計画書の効果的な書き方を徹底解説」
報酬体系変更が経営に与える影響と対策
2024年介護報酬改定による報酬体系の変更は、訪問看護ステーションの経営に大きな影響を与えるものです。
報酬体系の変更を適切に把握し、収益向上の可能性を最大限に活用しつつ、減算リスクを確実に回避していくことが重要です。
具体的には以下のような取り組みが考えられます。
– 報酬体系の変更内容の確認と理解 – 新設加算の算定に向けた体制整備の計画的な実施 – 減算リスク回避のための体制整備の確実な実施 – 加算の算定状況や減算リスクの定期的な確認と改善 – 適切な経営判断に基づく事業運営の実施 |
まとめ:2024年介護報酬改定が訪問看護にもたらす変化と展望
2024年介護報酬改定では、専門性の高い訪問看護の提供や在宅移行の促進、24時間対応体制の充実など、さまざまな観点から訪問看護に関する改定が行われます。
リハビリ関連の減算など、事業所によっては大きな転換を求められるものもあります。
同時に、2024年介護報酬改定は、訪問看護の重要性がますます高まる中で、サービスの質の向上と事業運営の安定化を実現するための重要な機会でもあります。
改定を踏まえ、中長期的な視点に立った事業運営を行うとともに、地域の医療・介護関係者との連携強化、地域包括ケアシステムにおける積極的な役割の発揮が期待されます。
2024年介護報酬改定を機に、訪問看護ステーションが地域包括ケアシステムの中核的な存在として、さらなる発展を遂げることを願っています。
質の高い訪問看護サービスの提供を通じて、利用者の尊厳ある暮らしを支え、地域社会に貢献していくことが、私たち訪問看護ステーションに求められる使命であると言えるでしょう。
えがおDE看護は”電子カルテ機能”と”レセプト請求機能”に特化して、26年現場の声や複雑な制度に対応し続けているので、訪問看護ステーション業務をお任せできます。
管理者の本来の使命であるステーション運営を通じた「良質な看護サービスの提供」 に当たり前に集中できる毎日を実現します。是非お問い合わせください。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
参考ページ
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示」
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」
- 厚生労働省「人員配置基準等(改定の方向性)」
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