共同で行う退院時共同指導加算の基本と目的
退院前カンファレンス(退院に向けた共同指導)を評価する「退院時共同指導加算」。病院・施設スタッフと訪問看護師が退院前に共同で指導・情報共有を行い、患者の円滑な在宅療養移行を支援することで算定できます。
加算の目的と算定メリット
退院時共同指導加算には、収益面とケアの質向上、双方に大きなメリットがあります。
- 収益向上:医療保険なら8,000円、介護保険なら600単位。入院・入所中1回(条件次第で2回)算定できます
- 医療機関との連携強化:病院スタッフと顔を合わせて情報共有することで、入退院時の強固な連携ルートが構築できます
- ケアの質向上:退院前の段階で利用者の詳細な医療情報・療養方針を把握できるため、初回訪問から安心・的確な看護ケアを提供できます
退院後の在宅療養を支える訪問看護ステーションにとって、取りこぼしを防ぐべき極めて重要な加算です。
混同しやすい「退院支援指導加算」との違い
名称が似ているため混同されやすいですが、実施するタイミングと場所が全く異なります。
| 項目 | 退院時共同指導加算 | 退院支援指導加算 |
|---|---|---|
| 実施タイミング | 退院・退所前(入院・入所中) | 退院当日 |
| 実施場所 | 病院・施設など | 利用者の居宅(自宅) |
| 実施者 | 訪看の看護師等+病院等の医師・看護師等が共同で | 訪看の看護師等が単独で |
| 保険適用 | 医療保険・介護保険の両方 | 医療保険のみ |
| 算定額 | 医療:8,000円 / 介護:600単位 | 6,000円(別表7・8該当者等) |
両方の算定要件を満たす場合は、同月に両加算を算定することが可能です。退院当日の自宅への訪問(退院支援指導加算)と、退院前の病院での共同指導(退院時共同指導加算)は、実施日も支援内容も異なるため、レセプト上でも区別して正しく請求します。
共同指導加算の要件|医療・介護の違いと比較表
退院時共同指導加算は、医療保険と介護保険で算定要件や単位数・金額が異なります。まずは全体像を比較表で把握し、その後に各保険ごとの詳しい留意点を確認していきましょう。
▼ 一目でわかる!医療・介護保険 比較表
| 項目 | 医療保険(訪問看護療養費) | 介護保険(指定訪問看護) |
|---|---|---|
| 加算額 | 8,000円 | 600単位 |
| 上乗せ加算 | 特別管理指導加算:+2,000円 | なし |
| 対象者 | 退院・退所後に訪問看護を利用する患者 | 同左 |
| 算定回数(原則) | 退院・退所につき1回 | 退院・退所につき1回 |
| 算定回数(例外) | 厚生労働大臣が定める疾病等の患者は2回まで | 特別な管理を必要とする利用者は複数日実施で2回まで |
| 指導方法 | 対面が原則。ビデオ通話(リアルタイム通信)も可。電話のみは不可 | 同左 |
| 文書等の提供 | 指導内容を文書で提供 | 指導内容を文書または履歴の残るメール等で提供 |
| 訪看記録 | 訪問看護記録書に記録 | 同左 |
| 算定タイミング | 退院・退所後の最初の訪問看護日に算定 | 退院・退所後の初回訪問看護日に算定 |
| 他加算との関係 | ― | 初回加算との併算定不可 |
【医療保険】算定ポイント
対象者と実施要件
- 対象:保険医療機関、または介護老人保健施設・介護医療院に入院・入所中で、退院・退所後に訪問看護を利用する患者(退院せずに死亡した場合や、他の医療機関へ直接転院する場合などは対象外)
- 実施者:訪問看護ステーションの看護師等(准看護師は不可)と、病院等の医師・看護師等が共同で指導を行うこと。
算定回数の詳細
- 原則1回(退院・退所ごとに1回)
- 例外(2回まで算定可能):厚生労働大臣が定める疾病等(別表第七・別表第八相当)の患者が対象。複数の訪問看護ステーションが関与している場合は、各事業所が1回ずつ(合計2回)算定することも可能です。
特別管理指導加算(上乗せ+2,000円)
退院時共同指導加算の算定対象者が、特別な管理を必要とする状態等にある利用者(特別管理加算の対象者に相当)に該当する場合、さらに2,000円を上乗せ算定できます。
レセプト上の注意点
- 算定は退院後の最初の指定訪問看護を行った日に行います(退院前に共同指導を実施した日単体では請求できません)。
- 退院後の初回訪問前に利用者が死亡、または再入院となった場合は算定できません。
- 前月に共同指導を実施した場合でも、翌月の初回訪問日に合算して算定することが可能です。
【介護保険】算定ポイント
対象者と実施要件
- 対象:病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院に入院・入所中の患者が、退院・退所後に指定訪問看護を利用する場合。
- 実施者:訪問看護ステーションの看護師等(准看護師は不可)と、病院等の医師・看護師等が共同で指導を行うこと。
算定回数の詳細
- 原則1回(退院・退所ごとに1回)
- 例外(2回まで算定可能):特別な管理を必要とする利用者について、複数日にわたり退院時共同指導を行った場合(医療保険の「別表第七・第八」とは要件の定め方が異なる点にご注意ください)。
⚠️ 初回加算との併算定不可
介護保険における退院時共同指導加算(600単位)と初回加算(300単位)は、同一月に重複して算定することができません。
両方の算定要件を満たすケースでは、単位数が高い退院時共同指導加算(600単位)を優先して算定することが一般的です。請求前にケアマネジャーとも確認し、返戻や請求ミスを防ぎましょう。
その他の注意点
- 区分支給限度基準額の対象となります(利用者の区分支給限度額を超過していないかケアマネジャーへ確認が必要です)
- 同月に定期巡回・随時対応型訪問介護看護費、複合型サービス費を算定している場合は、退院時共同指導加算を算定できません
- 医療保険で退院時共同指導加算を算定した場合は、同一患者について介護保険での算定はできません
オンライン(ビデオ通話)指導の要件
退院時共同指導は対面が原則ですが、ビデオ通話等のICTを活用したリアルタイム通信による参加も認められています。
実施する際の留意点
- 電話のみ(音声通話のみ)での参加は不可です。映像と音声をリアルタイムで双方向通信できるICT環境が必要です
- 患者・利用者の個人情報を扱うため、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等に準拠した通信セキュリティ対策とプライバシー保護への配慮が求められます
- オンラインで参加した場合も、指導内容の文書(電子含む)提供、訪問看護記録書への記載、退院後の初回訪問実施といった要件は、対面と同じように求められます
共同指導の書式と算定漏れを防ぐ情報提供書
退院時共同指導加算の確実な算定には、適切な記録と文書提供が欠かせません。「何を書けばよいか」「どの書式で残せばよいか」を整理しておきましょう。
記録様式のテンプレートと記載項目
医療保険・介護保険共通で、以下の項目を網羅した記録を残すことが算定要件の客観的な根拠となります。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 実施日時・場所 | カンファレンス実施の日時、実施場所(病院名・病棟、またはオンライン会議等) |
| 出席者 | 医療機関側(医師名・看護師名・MSW等)、訪看ST側(看護師名)、利用者・家族、ケアマネジャー |
| 指導・共有内容 | 利用者の現在の病状・医療的管理内容、療養上の注意点、退院後の訪看への指示・役割分担、利用者の意向 |
| 今後の計画・方針 | 退院後の訪問看護計画の方向性、緊急時の連絡体制と対応方針 |
| 文書提供の方法 | 文書(紙)の手渡し、または電子メール等での送付(介護保険は送信履歴が残る方法) |
記録作成を効率化する3つのコツ
- テンプレートを作成・活用する:記載漏れを防ぎ、記入時間を大幅に短縮できます。ステーション内で統一書式を用意しましょう
- カンファレンス直後に記録する:記憶が鮮明なうちに記載することで正確性が高まり、後からの追記・修正の手間が省けます
- 5W1H(誰が・いつ・どこで・何を・どのように)を意識する:客観的な事実と必要な指導項目を簡潔にまとめます
以下に、ステーションでそのまま使える共通テンプレート(PDF形式)をご用意しました。ダウンロードして日々の運用に合わせてご活用ください。
📄 退院時共同指導 記録書(共通テンプレート)
≫ 共通テンプレート(PDF)をダウンロードする実務で役立つ記載例と作成のコツ
医療保険の場合の記載例(レセプト摘要欄)
医療保険のレセプトを請求する際、摘要欄には以下のように簡潔かつ具体的に記載します。
【基本】
R8.9.10 △△病院にて退院時共同指導(医 佐藤、看 鈴木、MSW 田中、本人・家族、当ST看 訪問)
【特別管理指導加算を上乗せする場合】
R8.9.10 △△病院にて退院時共同指導(対象:別表第七該当、医 佐藤、看 鈴木、本人・家族、当ST看 訪問)、特管指導加算(退院時共同指導上乗せ分)
介護保険の場合のポイント
- ケアマネジャーへの事前通知と、可能であればカンファレンスへの参加依頼を行いましょう
- 文書提供はメール等での送付も可能ですが、送信記録(送達した証拠)が確実に残る方法を選びます
- 月2回算定する場合は、別日に実施した共同指導であることが要件です(同日に2回実施しても1回分しか算定できません)
- 初回加算と退院時共同指導加算はどちらか一方のみ算定可能です。請求前に必ず確認しましょう
退院調整フロー(算定漏れを防ぐ一連の業務管理)
① 入院中の患者から退院調整の依頼・情報を受ける
↓
② 病院の退院調整看護師・MSWと連絡を取り、カンファレンスの日時・場所を調整
(オンライン参加の可否もこの段階で確認)
↓
③ 共同指導・カンファレンスを実施
(訪問看護記録書への記録 + 利用者・家族への文書提供を速やかに完了)
↓
④ 退院後の初回訪問看護を実施
↓
⑤ 初回訪問日のレセプトに退院時共同指導加算を算定
(前月実施分も初回訪問日に算定可能。介護保険では初回加算との選択確認を忘れずに実施)
多職種との連携で退院時共同指導を円滑に
退院時共同指導加算の算定には、院内・院外の多職種とのスムーズな連携が欠かせません。
病院・施設スタッフとの連携ポイント
- 事前確認:カンファレンス日時・場所・目的、参加予定者の確認を行います。オンライン参加を希望する場合は、ツールと接続テストを事前に済ませておきましょう
- 当日の役割:訪問看護ステーションの担当として、退院後の在宅生活を見据えた具体的な指導内容(医療処置の手技、服薬管理、緊急時対応など)を積極的に協議します。
- 終了後:決定事項と指導内容を記録し、情報提供書を患者・家族へ速やかに提供します
ケアマネジャー・リハビリ職(PT・OT・ST)との連携
- ケアマネジャー(CM):退院調整の早い段階から情報共有を行い、退院時共同指導加算の算定見込みや、ケアプランへの適切な位置付けを確認しておきましょう。介護保険の場合、区分支給限度額の空き状況も忘れずに確認しましょう
- PT・OT・ST(リハビリ専門職):リハビリ職が関与する利用者については、病院のリハスタッフと退院後の自宅リハビリ方針や住環境整備の情報を共有することで、より質の高い在宅復帰支援につながります
- MSW(医療ソーシャルワーカー):退院調整の窓口として、日程調整や福祉サービスの手配等で密に連携します
「退院時共同指導加算を知らない」ケアマネへの対処法
介護保険では、ケアマネジャーが加算の存在を詳しく知らなかったり、ケアプランに組み込まれていなかったりするケースがあります。その際は、以下の2点を丁寧に説明して協力を依頼しましょう。
- 利用者へのメリットを伝える:単なるステーションの収益ではなく、退院前からの専門職共同指導が在宅移行の安全性を高め、利用者や家族の不安解消につながることを説明します
- 算定根拠の提示:必要に応じて厚生労働省の関連通知や資料を簡潔に示し、ケアプランへの位置付けを依頼します。なお、介護保険の退院時共同指導加算は区分支給限度基準額の対象となるため、事前に限度額の枠を確認することも大切です
まとめ:加算を算定し質の高いケアと安定へ
今回は、訪問看護の退院時共同指導加算について、診療報酬・介護報酬の改定ポイントを踏まえた算定要件、記録書式、多職種連携のポイントを解説しました。
この記事のポイントまとめ
- 退院時共同指導加算の基本:医療保険8,000円、介護保険600単位。退院・退所後の初回訪問看護日に算定
- 「退院支援指導加算」との違い:退院当日・自宅訪問・医療保険のみの加算。要件を満たせば両方算定可能
- 2回算定の要件違い:医療保険は「厚生労働大臣が定める疾病等」、介護保険は「特別な管理を必要とする利用者」で複数日実施した場合
- 介護保険の注意点:初回加算との併算定は不可。単位数が高い退院時共同指導加算を優先する
- オンライン指導:ビデオ通話等のリアルタイム通信は認められているが電話のみは不可。文書提供と記録は対面と同じように必要です
- 算定漏れ防止:退院前の共同指導から退院後の初回訪問・レセプト算定まで、一連のフローとして管理することが重要
退院時共同指導加算の確実な算定は、質の高い在宅療養移行支援と、訪問看護ステーションの安定経営の両立に欠かせません。この記事の比較表やテンプレート、連携のコツを日々の実務にぜひご活用ください。
【主な参照資料】
・厚生労働省 訪問看護療養費算定告示
・厚生労働省 指定居宅サービス介護給付費単位数表(訪問看護)
・厚生労働省 訪問看護療養費に係る留意事項
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- 医療・介護保険の自動判定機能
入力された指示書や状態情報から算定すべき保険を自動判別し、返戻リスクを低減 - 加算・加算期間の自動管理
加算の算定漏れを防ぎ、期限が近づくとアラート通知





