「毎日、記録のための残業が減らない…」「手書きの複写用紙とPCへの二重入力に限界を感じている…」
日々の訪問看護記録の負担について、そんな悩みを抱えるステーションは少なくありません。
訪問看護記録は適切なケアを証明する必須書類ですが、令和8年度(2026年度)の制度改定を見据え、正確な時間管理の重要性がこれまで以上に増しています。曖昧な運用や、予定ベースの入力の流用は、実地指導での指摘や、最悪の場合は返戻(差し戻し)となるリスクを高めます。
本記事では、実務ですぐに使える状態別のSOAP記入例から、制度改定にも対応できるステーションを守るための正しい書き方を網羅。さらに、現場の残業を劇的に減らす二重管理ゼロのペーパーレス運用術もあわせて解説します。記録業務に不安がある、または業務効率を底上げしたいと考える管理者・看護スタッフの方は、ぜひ参考にしてください。
訪問看護記録の基本と作成する目的

訪問看護記録は、提供したケアを公的に証明する必須書類です。その定義と作成目的を整理します。
訪問看護記録の定義と対象書類の比較
主な対象書類は以下のとおりです。
| 書類名 | 主な作成タイミング | 記載項目と特徴 | 時間要件 |
|---|---|---|---|
| 訪問看護記録書Ⅰ | 初回訪問時、病状変化時など | 利用者の基本情報、家族構成、既往歴、看護アセスメント、長期的な目標や課題など | なし |
| 訪問看護記録書Ⅱ | 毎回の訪問ごと | バイタルサイン、ケアの内容、状態の変化、主治医への連絡事項など | 実施時間(概要)の記録 |
| 訪問看護記録書Ⅲ (令和8年度新設) |
包括型訪問看護療養費を算定する日 | 包括型ケアの経過記録(バイタル、ケア内容、職種など) | 実際の開始時刻・終了時刻(分単位)の記録 |
各書類は法令によって作成と保存が義務づけられており、ステーションの適正な運営に欠かせない基礎書類です(※参考:厚生労働省|訪問看護計画書等の記載要領等について(保医発0327第10号))。
なお、新設された訪問看護記録書Ⅲについては、下図様式の備考欄に記載されているとおり、「訪問時間、訪問職種、看護師等の氏名、利用者の状態、リハビリテーションの内容等がわかる様式を作成している場合は、この様式に代えても差し支えない」とされています。記載内容が基準を満たしていれば、必ずしも新様式そのものを使用する必要はなく、既存の訪問記録書などを代替として使用することが可能です。

記録を作成する3つの目的
訪問看護記録を作成する目的は、以下の3点に整理できます。
- ケアの継続性と多職種連携の強化:
複数スタッフ間での一貫したケアの提供や、ケアマネジャーや主治医など他職種との正確な情報共有を支える共通言語として機能します。 - 報酬算定の法的・客観的な根拠(返戻の防止):
診療報酬の請求時、ケア内容や加算要件を満たしていることを証明する客観的証拠となります。記録の不備は、返戻(差し戻し)リスクに直結します。 - 実地指導・監査における適合性の立証:
自治体による実地指導や監査において、運営基準を遵守し適切なサービスを提供していることを証明する公的な証拠書類となります。
令和8年度改定を見据えた訪問時間の記録管理

令和8年度(2026年度)の制度改定を見据え、訪問看護における時間管理はこれまで以上に重要視されるようになります。曖昧な記録運用を続けていると、実地指導での指摘や、返戻(請求の差し戻し)といった経営リスクに直結する可能性があります。
分単位の実績入力と予定とのズレ対策
従来の運用では、予定通りの時間を一律で記録し、多少のズレを無視するケースが目立ちました。
しかし、訪問時間の正確な記録は本来の必須ルールです。現在は制度厳格化と「記録書Ⅲ」の新設により、より緻密な管理が求められています。
例えば予定と実際の滞在時間にズレがある場合は、分単位で正しい時間を記録しなければなりません。特に介護保険では、ズレがある際に理由の記載が必要となります。
手書きや予定ベースソフトが抱える返戻リスク
以下のような従来の運用は、返戻リスクにつながります。
- 手書きによる記録管理:
毎回の訪問開始・終了時刻を手書きでメモし、後から複写用紙やパソコンに転記する運用では、書き間違いや記憶違いによる記入ミスを防ぎきれません。転記の手間もスタッフの大きな負担です。 - 予定データをそのまま実績として流用する古いレセプトソフト:
「予定=実績」として自動的に請求データを作成してしまう古いシステムでは、当日の突発的な時間変更や短縮に対応できません。結果として、実際の訪問時間と請求データに矛盾が生じ、実地指導での指摘や過誤申立(自主返還)の対象になります。
分単位で動く現場の実績時間を、その場で正確に記録できる体制づくりが、今後のステーション経営において重要です。
訪問看護記録書Ⅰの書き方と記載項目

訪問看護記録書Ⅰは、利用者の全体像を把握し、適切なサービスを提供するための書類です。初回訪問時や病状の変化時に記載する手順を解説します。
初回訪問時における基本情報の整理
初回訪問時、まずは利用者の基本情報を漏れなく収集し、記録書Ⅰに整理します。
- 基本項目:氏名、生年月日、住所、連絡先などの基本情報
- 家族環境:同居家族の有無、主な介護者の状況、キーパーソンとの連絡方法など
- 医療情報:主治医の医療機関名・医師名、指示書の発行状況、既往歴、現在の主な病名、アレルギーの有無など
基本情報は単なるプロフィールではなく、緊急時の連絡体制や、家族による介護力を客観的に評価するための重要なデータです。
アセスメントと看護課題の明確化
次に、看護師独自の視点によるアセスメントを行い、看護課題を明確にします。
- 日常生活動作(ADL)の評価:食事や入浴などADLの自立度や介助の必要性の記述
- 病状と医療処置の必要性:現在の症状や、点滴、褥瘡処置などの医療ニーズの整理
- 認知症状や精神状態:認知症の有無や、不安・抑うつなどの精神的な状態の把握
収集した情報を分析し、「安全な在宅療養に何が不足しているか」という看護課題を抽出し、具体的な看護目標と支援方針を記載します。
訪問看護記録書Ⅱの書き方とSOAP形式の活用

訪問看護記録書Ⅱは、毎回の訪問で残す経過記録です。
多忙な中で簡潔に記録するには、SOAP形式の活用が効果的です。
訪問看護記録書Ⅱの主要な記載項目
記録書Ⅱには、毎回の訪問における以下の事実を客観的に記載する必要があります。
- 訪問日時および実際の滞在時間(分単位の実績)
- バイタルサイン(体温、血圧、脈拍、経皮的酸素飽和度など)
- 実施した看護ケアやリハビリの具体的内容
- 利用者の状態変化、愁訴、主治医への報告内容
- 指導内容(本人や家族への服薬指導、介護方法の指導など)
各項目が漏れなく、かつ簡潔に整理されていることが、適切な報酬請求と実地指導対策の土台です。
SOAP形式による分かりやすい記録のコツ
| 要素 | 意味・定義 | 記載内容のポイント | 記入の具体例 |
|---|---|---|---|
| S (Subjective) |
主観的データ | 利用者やご家族の生の発言や訴え | 「昨夜は足が痛くて眠れなかった」 |
| O (Objective) |
客観的データ | バイタル数値、観察した事実、実施した処置・ケア | 血圧 138/84、脈拍 72。右下腿に軽い浮腫を認める。 |
| A (Assessment) |
アセスメント | SとOのデータを統合した看護師としての専門的判断 | 右下腿の軽度浮腫と疼痛による夜間の中途覚醒と推測。経過観察が必要。 |
| P (Plan) |
ケア計画 | 分析(A)に基づく次回のケア方針、主治医連絡、家族指導など | 次回訪問時に浮腫の推移を確認。主治医へ報告し鎮痛剤の処方意向を確認。 |
毎回の記録でSOAPの4項目を意識して整理するだけで、文章作成の迷いがなくなり、記録時間を大幅に短縮できます。
実務で使える訪問看護記録の記入例

現場で頻繁に遭遇する代表的な状態の記入例を紹介します。
状態変化や医療処置がある場合の記載例
バイタル異常が発生した場合や、褥瘡処置を行った際のSOAP記入例は以下のとおりです。
| 状態・ケア内容 | SOAP項目 | 具体的な記入例 |
|---|---|---|
| 発熱・バイタル異常時 | S | 本人「今朝から体がだるくて、少し寒気がする」 |
| O | 体温 37.8℃(平熱 36.2℃)、血圧 112/68、脈拍 88。呼吸音に異常なし。水分摂取量は普段の半分以下。 | |
| A | 脱水に伴う軽度の発熱および感冒の初期症状の疑い。 | |
| P | 経口補水液での水分補給を促した。保冷剤でのクーリング実施。主治医へ発熱を報告し指示を仰ぐ。ご家族へ室温調整を指導。 | |
| 褥瘡処置時 | S | 本人「お尻のあたりが少しむずがゆい」 |
| O | 仙骨部に2×2cmの発赤あり。一部表皮剥離を認める。滲出液は少量。洗浄後、処方軟膏を塗布し被覆材で保護。 | |
| A | 同一姿勢の継続による圧迫が原因と推測される褥瘡初期段階(ステージ2)。 | |
| P | 訪問時の洗浄・処置を継続。ご家族へ2時間ごとの体位変換の重要性を再指導。福祉用具(エアマット)の導入検討をケアマネジャーへ提案。 |
リハビリテーション実施時の記載例
理学療法士や作業療法士、またはリハビリを担当する看護師が記載する際の記入例です。
| 状態・ケア内容 | SOAP項目 | 具体的な記入例 |
|---|---|---|
| 歩行訓練とADL評価 | S | 本人「最近、廊下を歩くときに少し足元がふらつくようになった」 |
| O | バイタル異常なし。平行棒内での片脚立位保持:右8秒、左6秒(前回より低下)。屋内歩行時に右立脚期の不安定さを認める。歩行器を使用した歩行訓練を20分実施。 | |
| A | 右下肢筋力の軽度低下によるバランス能力の低下。転倒リスクが上昇している状態。 | |
| P | 下肢筋力強化訓練とバランス訓練の継続。福祉用具専門員に歩行器の適合確認を依頼。屋外歩行は当面介助のもとで行うよう指導。 |
記録業務の負担を軽減し請求ミスを防ぐシステム活用

制度改定への適切な対応と、スタッフの残業削減を両立するには、紙の記録からの脱却と、訪問看護専用システムの活用が有効な解決策です。
タブレットを活用したその場でのリアルタイム入力と二重管理の解消
多くのステーションでは、利用者用の手書き複写と、レセプト請求用のパソコン入力という「紙とデジタルの二重運用」に悩まされています。
電子保存の3原則(真正性・見読性・保存性)を満たした専用のシステムを導入すれば、公式な訪問看護記録(記録書Ⅱ)はデータ保存だけで法的に有効となり、基本的には紙で印刷して保管し続ける義務はなくなります(※自治体独自の指導方針により、紙での保管や提示を求められる一部例外的な場合を除きます)。
また手渡しが必要な場合も、タブレットに入力したデータをその場でモバイルプリンターから印刷して渡す運用に変更できます。その結果、手書きの二重入力の手間が完全にゼロになり、事務所に戻ってからの思い出し入力のための残業を劇的に削減できます。
【二重管理に関する現場のリアルな悩み】
「利用者宅用の手書き複写と、事務所に戻ってからのシステム入力で、毎日1時間近く無駄な転記時間が発生している…」
「月末にレセプト請求用の実績時間を手書きメモから照合する作業があり、毎回膨大な確認作業に追われる…」
「計画書や報告書の作成にも同じような基本情報を何度も手入力しており、システム化による一元管理ができないか限界を感じている…」
実績優先の入力方式によるレセプト自動連携
制度改定に対応するための時間管理(分単位の実績入力)に対応するためには、システムの入力方式が重要です。
予定ベースのデータをそのまま流用するシステムではなく、実際に訪問した時間(実績)を最初に入力し、それが自動的にレセプト(請求データ)へ連動する実績優先のシステムを選ぶ必要があります。
実績優先のシステムであれば、予定と実績のズレがあった場合でも、タブレットに入力した当日のリアルな時間データがそのまま国保連の請求データに反映されるため、請求漏れや時間のズレによる返戻リスクを未然に防げます。
将来のAI連携による記録作成とチェックの効率化
訪問看護ソフトの未来像としてAI連携機能の準備が進んでいます。音声やメモからAIがSOAPなどの下書きを自動作成し、アセスメントの抜け漏れもチェック可能になります。デジタルに不慣れなスタッフでも、質の高い記録をスムーズに作成できる未来が近づいています。
まとめ:訪問看護記録の時間管理と業務効率化のポイント

訪問看護記録は、ステーションのサービス品質を担保し、適正な報酬を得るための重要な基盤です。実績時間管理の重要性が増した今、手書き複写や予定ベースのシステムによる二重運用は、返戻リスクや残業を増やす大きな経営課題となります。
現場の課題を解決し、アナログな管理者やスタッフでも安心して直感的に使えるのが、訪問看護専用ソフトえがおDE看護です。
- 実績優先のシンプルな入力:分単位の当日の実績時間をタブレットから簡単入力でき、そのままレセプトに自動連携して返戻を防止
- ペーパーレス化とモバイルプリンタ連携:電子保存の3原則を満たした設計で紙の二重保管は不要、携行プリンター連携で現場の二重入力を完全にゼロへ
- 将来のAIロードマップ:AIによる記録下書き・不備チェック機能の実装も見据えた進化の継続
手書きや古いシステムでの二重管理に限界を感じている管理者の皆様は、ぜひこの機会に、現場も経営もラクにする「えがおDE看護」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。





