「医療保険と介護保険、どちらを適用すればいいのだろう?」
「医療保険による訪問看護の対象者は?」
「それぞれの保険で、どのような違いがあるの?」
訪問看護サービスでは、公的保険制度である医療保険、または介護保険のいずれかが適用されます。しかし、利用者の年齢や状態などの条件によって適用される保険が細かく異なるため、複雑に感じられる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、訪問看護における医療保険と介護保険の対象者や条件、制限について、フローチャートやQ&Aを用いて分かりやすく解説します。それぞれの保険の違いや押さえておきたいポイントを、ぜひこの機会に整理してみてください。
訪問看護で利用できる医療保険、介護保険などの保険制度の違いは?
まずは基本となる、訪問看護で利用する保険制度についておさらいしましょう。
訪問看護で提供するサービスは、公的保険である医療保険と介護保険のいずれかが適用されます。
医療保険とは?
公的医療保険制度は、医療保険各法に基づき、主に以下の制度で構成されています。
- 被用者保険(健康保険法、各共済組合法、船員保険法)
- 国民健康保険(国民健康保険法)
- 後期高齢者医療(高齢者の医療の確保に関する法律)
- 公費負担医療(生活保護法、障害者総合支援法、母子保健法、感染症法、精神保健福祉法など)
公的医療保険は、年齢や所得に応じて自己負担割合が異なります。なお、子どもの医療費については、市区町村ごとに小学校卒業まで、中学校卒業までなど、自己負担分に対する独自の助成制度が設けられています。
具体的な医療保険の自己負担割合の区分は、以下のとおりです。
| 年齢・区分 | 自己負担割合 | ||
|---|---|---|---|
| ~小学校入学前 | 2割 | ||
| 小学校入学後~69歳 | 3割 | ||
| 70歳~74歳 | 一般・低所得世帯 | 現役並み所得者 | |
| 2割 | 3割 | ||
| 75歳~ (後期高齢者) |
一般・低所得世帯 | 一定以上所得のある人 | 現役並み所得者 |
| 1割 | 2割 | 3割 | |
高額療養費制度と付加給付制度
公的医療保険制度である各種健康保険には、【高額療養費制度】という仕組みが設けられています。これは、1ヶ月の間に医療機関で支払った自己負担金の総額が一定の上限額を超えた際、その超過分が払い戻される制度です。医療保険で訪問看護を利用した場合の訪問看護療養費も、この高額療養費制度の対象に含まれます。
また、健康保険によっては、高額療養費制度に加えてさらに自己負担を軽減できる独自の付加給付制度を設けている場合もあります。代表的なものとして、訪問看護療養費に対する【訪問看護療養費付加金】などが挙げられます。
なお、これらの付加給付は健康保険組合や共済組合などの被用者保険に特有の制度であり、国民健康保険にはありません。
介護保険とは?
介護保険は、40歳以上の人が加入して介護保険料を納め、要介護・要支援状態になった際に必要な介護サービスを受けられる制度です。
主な対象者と自己負担割合の区分は以下のとおりです。
| 第1号被保険者 | 第2号被保険者 | ||
| 65歳以上 | 40歳〜64歳までの医療保険加入者 | ||
| 要介護・要支援状態(原因を問わない) | 要介護・要支援状態が、末期がん・関節リウマチなどの加齢に起因する疾病(16特定疾病)による場合 | ||
| 1割 | 一定以上の所得のある場合は2割 | 特に所得の高い場合は3割 | 1割 |
16特定疾病について
特定疾病とは、加齢に伴って生じる身体的・精神的変化に起因し、加齢現象を加速させて要介護状態に至らせる原因となる疾患として、国が指定した16の疾病を指します。
具体的な特定疾病の一覧は以下のとおりです。
- がん末期
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靭帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症(アルツハイマー病、脳血管性認知症など)
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病 ≪パーキンソン病関連疾患≫
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症(ウェルナー症候群)
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患(脳梗塞、脳出血など)
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎など)
- 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
自費でもサービスは受けられる
訪問看護は公的保険を使わず、全額自己負担(自費)で利用することも可能です。医療保険や介護保険といった公的保険の訪問看護には、訪問回数や利用時間、支給限度額などの上限が設けられていますが、自費の訪問看護にはこうした制限がありません。そのため、公的保険だけではカバーしきれない部分を補う形で、必要なだけサービスを受けることができます。
具体的な利用例としては、24時間の見守りや看護が必要で夜間のケアを増やしたいケース、家族だけでは対応が難しい旅行や冠婚葬祭への付き添いなどが挙げられます。
また、自費での訪問看護は、公的保険による訪問看護と併用することもできます。ただし、公的保険と自費を併用して利用する場合には、それぞれのサービスに対応した医師の指示書が個別に必要となる点に注意しましょう。
民間の介護保険について
公的介護保険を補完し、将来要介護状態になった際のリスクを軽減する手段として、民間保険会社が提供する介護保険商品があります。これらには、要介護状態と認定された際に一時金としてまとまった給付金を受け取れるタイプや、一定期間にわたって毎年年金形式で受け取れるタイプなど、多様なプランが存在します。公的保険ではカバーしきれない自己負担額を補填し、家族の経済的負担を減らす備えとして、今後こうした民間サービスの重要性や利用者はさらに高まっていくと予想されます。
訪問看護で適用する医療保険、介護保険どっち?

優先順位を確認するためのポイント5つとフローチャート
サービスの利用を開始する際や、利用者の状態が変化したタイミングなどでは、医療保険と介護保険のどちらを適用すべきか判断に迷う場面が少なくありません。
適用の優先順位を見極める上では、以下の5つのポイントが指標となります。
💡 どちらの保険が適用になるかの5つのポイント
- •ポイント1. 年齢が40歳未満はすべて医療保険。
- •ポイント2. 介護認定を受けている場合は、介護保険が優先。
- •ポイント3. 介護認定を受けていても、厚生労働大臣が定める疾病など(別表7)の対象者は医療保険。
- •ポイント4. 介護認定を受けていても、退院後すぐや急性増悪などで特別訪問看護指示書が発行された期間は医療保険。
- •ポイント5. 精神科訪問看護指示書が交付された、認知症以外の精神疾患患者は医療保険。
これら5つの重要なポイントを踏まえ、どちらの保険が優先されるかを視覚的に分かりやすくまとめたフローチャートを用意しました。日々の業務における適用の判断に、ぜひお役立てください。

訪問看護で医療保険適用の条件は?
ここでは、訪問看護において医療保険が適用される具体的な条件や対象者について、詳しく掘り下げて確認していきましょう。
医療保険が適用となる対象者
医療保険の適用対象となるかどうかは、年齢や特定の状況に応じて以下のように区分されています。
- 65歳以上…医師が訪問看護の必要性を承認し、かつ要支援・要介護に該当しない方。
- 40歳以上65歳未満…医師が訪問看護の必要性を承認し、かつ16特定疾病の対象ではない方。16特定疾病の対象であっても、要支援・要介護に該当しない方。
- 40歳未満…医師が訪問看護の必要性を承認した方。
- 要支援・要介護の認定を受けた方でも、厚生労働大臣が定める疾病(別表7)に該当する方。
- 要支援・要介護の認定を受けた方でも、特別訪問看護指示書が発行された場合。
医療保険適用での訪問看護を受けられる回数
医療保険を利用して訪問看護を受ける場合、1回の利用時間や訪問できる頻度には、原則として以下のような制限(枠組み)が設けられています。
- 週3回までの訪問看護を提供
- 訪問回数は1日1回まで(30〜90分)
- 1カ所の訪問看護ステーションから看護師1人が訪問
医療保険適用で週4回以上や1日2回以上の訪問看護を受けられる対象者は?
医療保険での訪問看護は原則として「週3回まで」ですが、以下のいずれかに該当するケースでは、例外的に週4回以上の訪問や、2カ所の訪問看護ステーションによる並行利用が認められます。
- 厚生労働大臣が定める疾病(別表7)に該当する方
- 厚生労働大臣が定める身体状態(別表8)に該当する方
- 医師から特別訪問看護指示書が交付された期間
なお、医師の指示に基づき週7日の訪問看護が計画されている場合は、例外的に最大3カ所までのステーションを組み合わせて利用することが可能です。
訪問回数も原則は「1日1回まで」とされていますが、上記のいずれかに該当する利用者は、1日に複数回(2回〜3回)の訪問看護を受けることができます。
別表7と別表8
適用される保険の切り替えや、訪問頻度・利用制限を緩和する鍵となる別表7と別表8の制度について整理します。
(出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要(訪問看護ステーション向け)」(PDF))
厚生労働大臣が定める疾病(別表7)について
別表7とは、厚生労働省の告示に定められた特掲診療料の施設基準等別表第七に掲載されている疾病や状態を指します。これらは、いずれも日常的に高度な医療的ケアや継続的な観察を必要とする重篤な疾患です。
ここで実務上特に注意したいのは、難病指定されている=すべて医療保険適用になるわけではないという点です。例えば、国の指定難病として特定医療費受給者証をお持ちであっても、その疾患が別表7に指定されていなければ、介護保険の認定者は介護保険が優先されます。医療保険の対象となるのは、あくまで別表7に明記された疾病に合致する利用者に限られます。
別表7の疾病一覧は以下のとおりです。
- 末期の悪性腫瘍
- 多発性硬化症
- 重症筋無力症
- スモン
- 筋萎縮性側索硬化症
- 脊髄小脳変性症
- ハンチントン病
- 進行性筋ジストロフィー症
- パーキンソン病関連疾患
- 多系統萎縮症
- プリオン病
- 亜急性硬化性全脳炎
- ライソゾーム病
- 副腎白質ジストロフィー
- 脊髄性筋萎縮症
- 球脊髄性筋萎縮症
- 慢性炎症性脱髄性多発神経炎
- 後天性免疫不全症候群
- 頸髄損傷
- 人工呼吸器を使用している状態
厚生労働大臣が定める身体状態(別表8)について
別表8とは、特掲診療料の施設基準等別表第八に定められた、利用者の身体や管理の状態に関する基準です。
別表7が特定の疾病名(疾患)を対象にしているのに対し、別表8は人工呼吸器や各種カテーテルといった医療機器の使用状況、あるいは重度の褥瘡といった具体的な病状・処置状態を基準にしているのが特徴です。
なお、令和8年度の診療報酬改定では、光熱費・衛生材料費等の高騰に対応した物価対応料の導入に加え、別表8の管理対象として在宅難治性皮膚疾患処置指導管理(表皮水疱症や水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症)が新たに追加され、適用範囲がさらに広がっています。
別表8の状態一覧は以下のとおりです。
- 在宅悪性腫瘍等患者指導管理若しくは在宅気管切開患者指導管理を受けている状態にある者又は気管カニューレ若しくは留置カテーテルを使用している状態にある者
- 以下のいずれかを受けている状態にある者
- 在宅自己腹膜灌流指導管理
- 在宅血液透析指導管理
- 在宅酸素療法指導管理
- 在宅中心静脈栄養法指導管理
- 在宅成分栄養経管栄養法指導管理
- in在宅自己導尿指導管理
- 在宅人工呼吸指導管理
- 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理
- 在宅自己疼痛管理指導管理
- 在宅肺高血圧症患者指導管理
- 【追加】在宅難治性皮膚疾患処置指導管理(表皮水疱症又は水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症)
- 人工肛門又は人工膀胱を設置している状態にある者
- 真皮を超える褥瘡の状態にある者
- 在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者
別表8該当と別表7該当の違いに注意
介護保険の認定を受けている人が別表7の疾病に該当した場合は、保険適用が医療保険に切り替わります。
これに対し、別表8の状態に該当しただけでは、保険の切り替えは起こりません。別途、別表7の疾病に該当するか、あるいは医師から特別訪問看護指示書が交付されない限り、基本的には介護保険の枠組みの中で訪問看護サービスを利用し続けることになります。この2つの違いは実務で非常に混同しやすいため、正しく区別しておきましょう。
訪問看護における「別表7」について、別表8との違いから計画・最新情報まで、以下の記事で詳しく解説しています。
≫ 【訪問看護における「別表7」を徹底解説:別表8との違いから計画・最新情報まで、管理者必見の知識と活用術‼】
精神科訪問看護の対象者(認知症除く)の訪問回数
精神科医療の主治医から精神科訪問看護指示書および精神科訪問看護計画書が交付されている場合、訪問看護の利用頻度は原則として週3日まで(精神科病棟の退院後3ヶ月以内の期間は週5日まで)認められます。
訪問看護で介護保険適用となる条件は?
続いて、もう一つの柱である介護保険が適用される具体的な条件について整理しておきましょう。
介護保険での訪問看護を受けられる対象者、疾患
介護保険を適用して訪問看護を利用できる対象者は、年齢や認定の状況によって以下のように定められています。
- 40歳以上~65歳未満の第2号被保険者で16特定疾病の方
- 65歳以上の第1号被保険者で要支援・要介護認定を受けている方
介護保険での訪問看護を提供できる回数や時間は?
介護保険を適用する場合、医療保険とは異なり、原則として訪問看護の週の利用回数に上限は設けられていません。
1回の利用時間数は、以下の4区分の中から、必要性に応じて選択することができます。
- 20分未満
- 30分未満
- 30分以上、60分未満
- 60分以上、90分未満
ただし、介護保険のサービスはあらかじめ決められた区分支給限度基準額(上限額)の範囲内でやりくりする必要があります。一般的に、訪問看護が必要な利用者は福祉用具レンタルやデイサービスなど複数のサービスを併用しているケースが多く、限度額の兼ね合いから、実際には訪問看護の利用頻度が週1〜2回程度に調整される場面が少なくありません。
介護保険による訪問看護の基礎知識や、報酬単位・加算の算定については、以下の記事で詳しく解説しています。
≫ 【介護保険による訪問看護とは?管理者に必要な介護保険の知識や、報酬単位・加算の算定についてわかりやすく解説します。】
訪問看護での医療保険と介護保険の料金算定 【どちらが安いの?】

ここからは、実務や利用者への説明で非常に重要な料金の算定について解説します。
医療保険の報酬の仕組み
まず、医療保険における訪問看護の基本的な報酬体系と計算方法を確認しておきましょう。
算定方法
医療保険を適用した訪問看護の費用は、公的医療保険から訪問看護療養費として支払われます。

※令和8年度の診療報酬改定により、上記(出来高制)とは別に、高齢者向け住まいに併設されたステーションなどが重症者を対象に算定する包括型訪問看護療養費(区分番号04)が新設されました。
訪問看護ステーションからの訪問 1回あたりの訪問看護療養費の算定は【訪問看護基本療養費+訪問看護管理療養費+それぞれの加算】で計算されます。
訪問看護基本療養費と加算は、それぞれ以下の状況で異なります。
訪問看護基本療養費:訪問する職種と訪問する場所(老人ホームなどの同一建物居住者)による。
加算:利用者の状態や事業所の体制などによる。
訪問看護基本療養費
訪問看護基本療養費とは、主治医から交付された訪問看護指示書および訪問看護計画書に基づき、ステーションの看護師等が行った訪問看護サービスに対して、1回の訪問ごとに算定される基本報酬です。原則として週3日、かつ1日1回を限度とします。
ただし、厚生労働省が定める特定疾病(別表7)の該当者や、特別訪問看護指示書が交付されている期間の利用者については、算定日数の制限が解除され、週4日以上の算定が可能になります。
令和8年度改定後も基本点数は据え置きとなっており、通常の訪問看護基本療養費(Ⅰ)は、週3日までの訪問については5,550円(555点)、制限解除時などの週4日目以降の訪問については6,550円(655点)を算定します。
また、基本療養費には、夜間や早朝の訪問、長時間の訪問など、利用者の状況や体制に応じて以下の追加加算が適用されます。
- 夜間・早朝訪問看護加算
- 深夜訪問看護加算
- 難病等複数回訪問加算
- 緊急訪問看護加算
- 複数名訪問看護加算
- 長時間訪問看護加算
- 乳幼児加算
- 特別地域訪問看護加算
訪問看護管理療養費
訪問看護管理療養費は、安全かつ適切な訪問看護サービスを提供するための24時間体制や計画管理などを総合的に評価する報酬です。基本的には、基本療養費とセットで毎回上乗せして算定されます。
令和8年度の診療報酬改定においてこの評価が見直され、月の初日の訪問管理療養費は通常7,680円(768点)に引き上げられました。
さらに、常勤の看護職員数や24時間対応の実績などにおいて一定の基準をクリアした機能強化型のステーションと認定されている場合、月の初日の管理療養費は区分(強化型1〜4)に応じて9,000円〜13,730円のより高い報酬が算定可能です。
なお、月の2日目以降の訪問管理療養費についても、改定に伴い事前の届出が不要となり、一律でスムーズに算定できるようになりました。
管理療養費に上乗せされる主な追加加算は、以下のとおりです。
- 24時間対応体制加算
- 特別管理加算
- 退院時共同指導加算
- 退院支援指導加算
- 在宅患者連携指導加算
- 在宅患者緊急時カンファレンス加算
- 精神科重症患者支援管理連携加算
- 看護・介護職員連携強化加算
【令和8年度新設】訪問看護物価対応料と包括型訪問看護療養費
令和8年度の診療報酬改定に伴い、現場の実情に即した新たな評価軸として以下の2つの報酬・加算が導入されました。
- 訪問看護物価対応料:光熱費や衛生材料費の高騰への対応として新設。施設基準の届出は不要で、医療保険による訪問時に月の初日は60円(6点)、2日目以降は20円(2点)を上乗せして算定できます。
- 包括型訪問看護療養費:高齢者向け住まいなどに併設するステーションが、別表7や別表8等に該当する重症者へ24時間体制で頻回なケアを行う場合の包括的評価です。
介護保険の報酬の仕組みと算定方法
一方で、介護保険による訪問看護の費用は介護報酬として計算されます。
介護報酬は、円ではなく単位数を用いて計算するのが特徴です。1単位あたりの単価は、事業所の所在地(地域区分)に応じて10円〜12円の範囲で変動します。介護保険を適用した訪問看護の1回あたりの自己負担額は、大まかに【(基本単位数 + 加算単位数)× 地域単価】という式で算出されます。
この計算式の構成要素である基本報酬、加算、地域区分は、それぞれ以下の要件に基づいて決定されます。
基本報酬:訪問する職種(看護師または理学療法士等)とサービスの提供時間によって決定。
加算:利用者の健康状態や、ステーション側の24時間対応体制などの実績に応じて上乗せ。
地域区分:事業所が所在する自治体の物価水準などに応じて国が指定。
医療保険と介護保険どちらを利用した方が安い?
医療保険と介護保険のどちらが経済的な負担を抑えられるかは、利用者の年齢、所得区分、さらには必要となる各種加算の有無によって異なるため、一概にどちらが安いと断言することは困難です。
前提として、要介護・要支援の認定を受けている方は介護保険の適用が法的に最優先されるため、任意でどちらか安い方を選んで利用できるわけではありません。
その基本ルールを前提とした上で、それぞれの保険を適用した場合の1ヶ月あたりの自己負担額の目安を試算・比較してみましょう。
💡 【医療保険利用の例】
24時間対応体制加算を付け、週1回1時間程度のサービスを提供
訪問看護療養費は 6,800円(24時間対応体制加算イ) + (5,550円 + 7,680円 + 60円) + (5,550円 + 3,000円 + 20円) × 3 = 45,800円
1割負担の方では、1ヶ月の料金は約4,580円となります。
💡 【介護保険利用の例】
緊急時加算を付け、週1回60分未満のサービスを提供(要介護、6級地1単位10.42円)
(574単位 + 821単位 × 4回) × 10.42 = 40,200円
1割負担の方では、1ヶ月の料金は約4,020円となります。
今回の試算では医療保険の適用例が若干高くなっていますが、どちらも1割負担が適用される場合、月額の総額に極端な開きは生じません。
ただし、一般的な所得水準における自己負担割合のルールとして、介護保険は年齢に関わらず原則1割(所得により2〜3割)であるのに対し、医療保険は74歳までは原則3割(75歳以上の後期高齢者で原則1割)となります。この年齢条件を踏まえると、74歳以下で訪問回数がそれほど多くない方の場合は、介護保険の対象であれば介護保険を利用した方が自己負担額を安く抑えられる可能性が高くなります。
訪問看護における医療保険適用についてのQ&A

医療保険による訪問看護でよくある質問を以下にまとめました。
Q.訪問看護で医療保険と介護保険の併用はできるの?
A. 医療保険と介護保険を同じ日に併用して訪問看護のサービスを受けることはできません。
原則として同時に併用することは不可ですが、例えば重度の褥瘡処置などで毎日の頻繁な訪問ケアが必要になり、介護保険の支給限度額内に収まらないケース等があるでしょう。その場合には、例外的に医師から特別訪問看護指示書が交付された期間(交付日から14日間、年2回まで)に限り、介護保険の訪問看護と並行しつつ、その不足分を一時的に医療保険に切り替えて毎日利用する、といった弾力的な組み合わせは認められます。
Q.医療保険による訪問看護でケアプランは必要?
A. 医療保険を適用して訪問看護を利用する場合は、ケアマネジャーによるケアプラン(居宅サービス計画書)の作成は不要です。
医療保険でのサービス利用は、主治医が交付する訪問看護指示書の指示内容に基づいて直接計画・実行されます。そのため、介護保険のようなケアプランの調整や月々の給付管理手続きを経る必要はありません。
Q.医療保険による訪問看護で契約書は必要?
A. 医療保険における訪問看護の開始にあたって、契約書の作成は法律上の義務とはされていません。
ただし、利用料金や具体的なサービス内容、緊急時の対応方法などについての認識のズレから、後々のトラブルに発展するケースも考えられます。そのため、実務上は契約書を用意し、内容を十分に説明して同意を得た上でサービスを開始するのが安心です。なお、令和8年度の診療報酬改定において、ペーパーレス化と手続きの簡素化推進のため、指示書や計画書などの各種書類から押印欄が削除され、サインのみでの運用が可能となっています。
Q.医療保険適用の訪問看護で30分未満の算定はできる?
A. 医療保険適用の訪問看護は1回あたり30分〜90分が基本ルールと定められており、原則として30分未満の短時間訪問では算定できません。
ただし例外として、精神科訪問看護指示書が交付されている対象者について、医師が治療上の必要性から短時間のケアを指定し、かつ指示書にその旨が明記されている場合に限り、1回30分未満の精神科訪問看護を算定することが認められています。
Q.障害者の訪問看護では医療保険が適用になりますか?
A. 障害をお持ちの方についても、基本的には年齢や要介護認定の有無によって医療保険と介護保険のいずれかが選択・適用されます。
もし障害者の方が医療保険を適用して訪問看護を利用する場合、自治体が実施している重度障害者医療費助成制度などの受給者証を活用することで、窓口での自己負担分について助成を受けられるため、実質的な自己負担を大幅に抑えられます。助成の範囲や要件は地域によって異なるため、お住まいの市区町村の担当窓口やケアマネジャーに事前に確認することをお勧めします。
まとめ

今回は、訪問看護における医療保険の適用条件や制限、そして介護保険との基本的な違いについて解説しました。
医療保険や介護保険の正確な知識は、訪問看護ステーションの安定的かつ適切な運営に必要不可欠です。乳幼児から高齢者まで、誰もが安心して良質な看護ケアを受けられる社会を支えるために、令和8年度の法改正情報も踏まえつつ、本記事の内容を日々の実務に役立てていただけますと幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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