訪問看護の特別管理加算とは?
訪問看護の特別管理加算は、特別な管理を必要とする利用者に対して、訪問看護の実施に関する計画的な管理を行った場合に「月1回」加算できます。利用者の状態や医療的処置の内容に応じて「特別管理加算Ⅰ」と「特別管理加算Ⅱ」の2つの区分が設けられています。
特別管理加算の概要および基本ルールは以下のとおりです。
- 月1回の算定:利用者の病状や処置内容に基づき、計画的な看護管理を行った場合に月単位で算定する
- 医療保険と介護保険の共通性:医療保険と介護保険の両方に制度が存在し、対象者の状態や基本的な考え方は概ね共通している
- ⅠとⅡの同時算定不可:特別管理加算ⅠとⅡ両方の同時算定はできない(両方の要件を満たす場合はⅠを優先して算定する)
- 介護保険の支給限度額の扱い:介護保険における特別管理加算は、区分支給限度基準額の対象外(枠外)として扱われる
特別管理加算の算定状況
特別管理加算を算定している訪問看護ステーションは、特別管理加算Ⅰが69.8%、Ⅱが68.9%と、7割近くのステーションで算定しています(参照:R2厚生労働省『訪問看護の報酬・基準について(検討の方向性)』)。
上記の資料中の厚生労働省のアンケートによる「訪問看護ステーションの利用者に占める特別管理加算算定者の割合」は、以下のグラフのとおりです。
利用者数の10%〜30%未満に算定しているステーションが全体の半数以上(52.9%)を占めており、約9割の事業所で算定実績があります。自ステーションの算定割合が1割未満の場合は、算定漏れの有無や、医療依存度の高い利用者の受け入れ体制を見直すひとつの指標となります。
特別管理加算の、医療保険と介護保険で異なる点2つ
特別管理加算は医療保険と介護保険の双方に設定されていますが、一部の運用ルールや算定条件において重要な違いが存在します。
特に留意すべき異なる点は以下の2点です。
① 2カ所以上の事業所から訪問看護を提供している場合
複数事業所が共同して同一利用者に訪問看護を提供している場合、保険種別によって請求ルールが異なります。
| 保険種別 | 複数事業所介入時の算定ルール |
|---|---|
| 医療保険 | 要件を満たすすべての訪問看護ステーションで算定可能 |
| 介護保険 | 1カ所の事業所に限り算定可能(どの事業所が算定するか協議し、必要に応じて業務比重に応じた事業所間での按分等を行う) |
「介護保険では、どの事業所が特別管理加算を算定するのか事前に話し合っておく必要がありますね。月に1回の算定なので、1カ所の事業所が加算を請求した後に、事業所間で協議して、各事業所の特別管理にかかる業務の比重に応じて請求を按分することになるのですね。今月はこの事業所で来月は別の事業所というように分けることも考えられますね。」
介護保険で複数事業所が介入する場合は、あらかじめどの事業所が特別管理加算を請求するか話し合いを行っておく必要があります。
② 体制・届出要件の違い
特別管理加算を算定するための事業所体制や事前の届出要件にも違いがあります。
| 保険種別 | 体制・届出に関する要件 |
|---|---|
| 医療保険 | 24時間対応体制加算の届出が必須(24時間対応できる体制が整備されていることが前提条件) |
| 介護保険 | 常時対応できる体制の整備が推奨(緊急時訪問看護加算の届出自体は必須要件ではないが、常時連絡・対応できる体制が必要) |
「医療保険での特別管理加算では、24時間対応体制加算を届け出ていることが算定要件となっているのですね。」
医療保険で特別管理加算を算定する場合は、24時間対応体制加算の事前届出が不可欠です。
特別管理加算を届出・申請する手続き
特別管理加算の算定を開始するには、指定の管轄機関へ事前の申請・届出を行う必要があります。
医療保険と介護保険それぞれの申請手続きの概要は以下のとおりです。
【医療保険】特別管理加算の申請・届出手順
医療保険における特別管理加算の届出は、訪問看護ステーションが所在する府県を管轄する地方厚生局(支局)に対して行います。
- 提出先:所在地を管轄する地方厚生局(支局)
- 要件:特別管理加算単独の届出は不可であり、24時間対応体制加算の届出が必須
- 体制整備:医療機器の取り扱いや緊急時の病状変化に対応できるよう、医療機関等との密接な連携体制および勤務体制を構築する
【介護保険】特別管理加算の申請・届出手順
介護保険における届出は、ステーションが所在する都道府県または市区町村の介護保険主管課(指定権者)へ提出します。
- 提出先:所在地を管轄する自治体(都道府県・指定都市・中核市等の介護保険課)
- 提出期限:原則として算定開始月の前月15日までに届出を完了する(受理された翌月より算定開始)
- 要件:緊急時訪問看護加算の届出は必須ではないが、利用者や家族からの連絡に常時対応できる体制を整える
特別管理加算(Ⅰ)の算定要件と対象者(5,000円 / 500単位)
特別管理加算Ⅰは、医療依存度や処置の緊急性がより高い利用者に対して計画的な看護管理を行った場合に算定できます。
算定額および単位数は、医療保険 5,000円/月(※改定による再編項目あり)| 介護保険 500単位/月 です。
特別管理加算Ⅰの対象となる状態・処置は以下の4つの区分です。
1. 在宅悪性腫瘍等患者指導管理を受けている状態(※医療保険は令和8年改定で再編)
医療機関から在宅悪性腫瘍等患者指導管理を受けている末期悪性腫瘍等の利用者が対象です。
- 介護保険:従来通り「在宅悪性腫瘍等患者指導管理」を受けている状態が算定対象
- 医療保険:令和8年度改定により項目が再編され、「在宅麻薬等注射指導管理料」「在宅腫瘍化学療法注射指導管理料」「在宅強心剤持続投与指導管理料」を受けている状態として明確化
持続的な疼痛コントロールのための注射薬投与や輸液ポンプ(PCAポンプ等)の管理、抗悪性腫瘍剤の投与管理を実施し、計画的な看護を行う必要があります。経口薬や貼付剤のみの投与では対象とならない点に注意が必要です。
2. 在宅気管切開患者指導管理を受けている状態(永久気管孔含む)
医療機関から在宅気管切開患者指導管理を受けている利用者が対象です。気管切開術を行い、永久気管孔を造設している場合も含まれます。
喉頭摘出後や神経難病等により気管切開を行っている利用者に対し、気道開口部の衛生管理や感染予防、適切な管理指導を計画的に実施します。
3. 気管カニューレを使用している状態
気道確保や気道分泌物の吸引のために、気管カニューレを装着・使用している利用者が対象です。
カニューレの閉塞予防、カフ圧の調整、周囲皮膚の観察、日常的な吸引や衛生管理など、生命維持に関わる専門的な管理を計画的に行います。
4. 留置カテーテルを使用している状態
特定の留置カテーテルを使用し、訪問看護計画に基づいた継続的・計画的な管理を行っている利用者が対象です。
対象となる主な留置カテーテルおよび管理内容は以下のとおりです。
- 胃チューブ(経鼻栄養・胃ろう・腸ろう):挿入部の観察、皮膚トラブルの予防、注入・処置の管理
- ドレーン類・腹膜透析カテーテル・膀胱留置カテーテル:排液の性状・量の観察、消毒、水分バランスの管理
- 継続的な点滴留置針・輸液ポート:持続的な点滴管理やポート穿刺に伴う管理
単にカテーテルが留置されているだけでは算定できず、訪問看護計画書に観察項目や管理手順を明記し、実際に計画的な看護管理を実施・記録していることが条件です。
特別管理加算(Ⅱ)の算定要件と対象者(2,500円 / 250単位)
特別管理加算Ⅱは、一定の在宅指導管理を受けている状態や、特定の管理・処置を必要とする利用者に対して算定できます。
算定額および単位数は、医療保険 2,500円/月 | 介護保険 250単位/月 です。
特別管理加算Ⅱの対象となる主な条件は以下のとおりです。
1. 対象となる指導管理を受けている状態
医療機関において、以下の在宅各種指導管理料を算定・実施している利用者が対象です。
- 在宅自己腹膜灌流指導管理(CAPD:腹膜透析の管理)
- 在宅血液透析指導管理(自宅での維持血液透析の管理)
- 在宅酸素療法指導管理(HOT:酸素供給機器の導入・管理)
- 在宅中心静脈栄養法指導管理(IVH/TPN:中心静脈カテーテルの管理)
- 在宅成分栄養経管栄養法指導管理(成分栄養剤の経管投与管理)
- 在宅自己導尿指導管理(カテーテルによる自己導尿の指導管理)
- 在宅人工呼吸指導管理(NPPV含む人工呼吸器の管理)
- 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理(CPAPによる睡眠時無呼吸等の管理)
- 在宅自己疼痛管理指導管理(植え込み型刺激装置等による自己疼痛管理)
- 在宅肺高血圧症患者指導管理(プロスタグランジンI2製剤の投与管理)
- 在宅難治性皮膚疾患処置指導管理(※令和8年度改定により医療保険の対象として追加)
※人工呼吸器使用時に気管カニューレを使用している場合など、加算Ⅰの要件にも該当する場合は特別管理加算Ⅰが優先されます。
💡 「〇〇指導管理を受けている状態」の解釈(医療の算定有無との関係)
要件にある「指導管理を受けている状態」について、東京都福祉局の疑義解釈では以下のように示されています。
Q. 算定要件にある『在宅〇〇指導管理を受けている状態』とは、医療機関で実際に指導管理料が算定されている状態を指すのか。それとも、利用者がそういった状態であれば良いのか。
A. 医療における報酬算定の有無に関係なく、利用者の実際の状態で判断する。
(引用:東京都福祉局『疑義解釈資料(訪問看護)について』)
医療機関側の算定漏れや施設基準の都合に関わらず、利用者の状態が客観的に該当していれば訪問看護側で特別管理加算を算定できます。
2. 人工肛門・人工膀胱を造設している状態
ストーマ(人工肛門または人工膀胱)を造設している利用者が対象です。
ストーマ装具の交換補助、皮膚障害の観察・予防、排泄管理や本人・家族への手入れ指導を計画的に実施した場合に算定できます。なお、膀胱瘻は留置カテーテルとして特別管理加算Ⅰの対象となります。
3. 真皮を越える褥瘡の状態
真皮を越える深さの褥瘡(NPUAP分類Ⅲ度・Ⅳ度、DESIGN-R分類D3・D4・D5相当)を有する利用者が対象です。
週1回以上の定期的な褥瘡状態の観察・アセスメント(深さ、浸出液、大きさ、炎症・感染等)を行い、実施したケア内容や指導記録を訪問看護記録書へ記載する必要があります。
4. 点滴注射を実施している状態(医療・介護の算定ルールの違い)
医師の指示に基づき、頻回の点滴注射を実施している利用者が対象です。
- 介護保険:医師が点滴注射を週3日以上行う必要性を認め、かつ訪問看護師が週3日以上点滴注射を実施した場合に算定
- 医療保険:医療機関において「在宅患者訪問点滴注射管理指導料」が算定され、同様に週3日以上の点滴注射管理を行った場合に算定
1週間(指示日から7日間)の中で、実際に訪問看護師が3日以上点滴注射を完了した週が月に1回以上あれば、その月の特別管理加算Ⅱが算定可能です。
特別管理加算のよくあるQ&A
特別管理加算の現場運用で寄せられる代表的な疑問点をまとめました。
Q1. 特別管理加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の同時算定はできますか?
回答:同時算定はできません。同一月にⅠとⅡの両方の要件を満たす利用者の場合は、Ⅰを優先して算定します(医療 5,000円/介護 500単位)。また、月途中に医療保険から介護保険へ移行した場合でも、加算の算定は月1回のみです。
Q2. 週3回の点滴指示が出たが、受診時に医療機関で点滴を行う週でも算定できますか?
回答:指示が出された日から7日間を1週間として、その期間内に訪問看護師が3日以上点滴注射を実施した週が月に1度でもあれば算定可能です。医療機関で点滴を行った日は訪問看護での点滴回数にカウントできませんが、別の7日間で3回以上の訪問点滴実績があれば対象となります。
Q3. 訪問看護師による間欠的な導尿で特別管理加算は算定できますか?
回答:算定できません。訪問看護師による単発の間欠導尿は「留置カテーテル」には該当せず(加算Ⅰ不可)、「在宅自己導尿指導管理を受けている状態」(利用者自身や家族が自己導尿を行う管理)にも該当しないためです。
Q4. 理学療法士等によるリハビリメインの訪問でも算定できますか?
回答:原則として算定できません。特別管理加算は、看護職員による計画的な医学的管理および評価が行われていることを前提としています。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による訪問のみで看護職員の管理介入がない場合は、加算の算定対象とは認められません。
まとめ ~特別管理加算を適切に算定し質の高い訪問看護へ~
特別管理加算は、医療依存度が高い利用者が住み慣れた自宅で安心して療養生活を継続するために欠かせない加算制度です。
算定要件や対象条件は多岐にわたりますが、医療保険と介護保険のルール規定、最新の告示内容(令和8年度改定)を正しく理解し、計画的な看護管理と正確な記録・届出を行うことが重要です。
適切な加算算定を通じて適切な評価を受け、地域に貢献する質の高い訪問看護サービスの提供と安定したステーション運営を目指しましょう。
📢 面倒な加算管理や保険判断は「えがおDE看護」にお任せください
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- 医療・介護保険の自動判定機能
入力された指示書や状態情報から算定すべき保険を自動判別し、返戻リスクを低減。 - 加算・加算期間の自動管理
加算の算定漏れを防ぎ、有効期限や状態変化に合わせたアラート通知。





