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精神科訪問看護のまるわかり算定ガイド。算定要件から研修、レセプトまでわかりやすく解説します。

精神科訪問看護のまるわかり算定ガイド。算定要件から研修、レセプトまでわかりやすく解説します。

目次

「精神科訪問看護を始めたいけれど、算定要件がわかりにくい…」
「精神科訪問看護と訪問看護の算定要件の違いは?」

変化する社会のニーズに対応し、質の高いケアを提供するために、精神科訪問看護の実情を反映した制度や診療報酬が次々に改訂されています。

精神科訪問看護を行うにあたっては、様々な要件もあり、少し難しく感じる方もおられるかもしれません。
今回は、精神科訪問看護の算定要件について、わかりやすくお伝えします。
精神科訪問看護の開始を検討されている管理者の方は、最後まで読んでぜひ参考にしてみてください。

【精神科訪問看護基本療養費】とは、精神疾患のある利用者様やご家族に対して訪問看護を行った場合に給付される費用です。

精神疾患のある利用者に訪問看護を行うには、以下の4つの算定要件があります。

①⇒精神科を標榜する保険医療機関において精神科を担当する医師から交付を受けた精神科訪問看護指示書に基づき実施(開始)する。

②⇒基準に適合しているとして地方厚生(支)局長に届け出た指定訪問看護ステーションのみが算定できる。

③⇒精神疾患を有する者への看護について相当の経験を有する保健師、看護師、准看護師、又は作業療法士が指定訪問看護をする必要がある。

④⇒精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)及び(Ⅲ)を算定する場合には、訪問看護記録書、訪問看護報告書及び訪問看護療養明細書に、月の初日の訪問看護時におけるGAF尺度により判定した値を記載する。

(出典:令和3年度 厚生労働省近畿厚生局 訪問看護療養費の取扱いの理解のために)

精神科訪問看護基本療養費の届出


【精神科訪問看護基本療養費に係る届出】は、訪問看護ステーションの所在地を管轄する地方厚生(支)局長に対し、届出書を提出します。

様式は各地方厚生局HPからダウンロードできます。

届け出を行った職員以外が訪問しても算定はできません。(ただし、複数名訪問の同行者に限ってはその限りではありません。)

人員が追加になった場合には、追加後の担当者を含めた全員の氏名・ 経験等を記載し変更を届け出る必要があります。

精神科訪問看護基本療養費の資格要件


精神科訪問看護基本療養費の届出要件である、精神疾患を有する者に対する看護について相当の経験を有する保健師、看護師、准看護師または作業療法士は以下のいずれかを満たす必要があります。

  1. 精神科を標榜する保険医療機関において、精神病棟又は精神科外来に勤務した経験を1年以上有する者  
  2. 精神疾患を有する者に対する訪問看護の経験を1年以上有する者
  3.  精神保健福祉センター又は保健所等における精神保健に関する業務の経験を1年以上有する者 
  4. 国、都道府県又は医療関係団体等が主催する精神科訪問看護に関する知識・技術の習得を目的とした 20 時間以上を要し、修了証が交付される研修を修了している者。

精神科訪問看護では、理学療法士、言語聴覚士は対象になりません。

精神科の経験や精神疾患の方への訪問看護の経験、精神保健に関する経験がない職員は、「国、都道府県又は医療関係機関団体等が主催する精神保健に関する研修」を修了することで、算定要件を満たすことができます。

研修は各都道府県の協会や団体が開催しており、オフラインorオンライン形式、日程が決まっているものor期間内いつでも受けられるものなど様々です。

受講時間はおよそ20時間〜23時間、受講期間は3日間ほどとなっています。

研修内容は以下のとおりです。

  • 精神疾患を有する者に関するアセスメント 
  • 病状悪化の早期発見・危機介入 
  • 精神科薬物療法に関する援助 
  • 医療継続の支援 
  • 利用者との信頼関係構築、対人関係の援助 
  • 日常生活の援助 
  • 多職種との連携 
  • GAF尺度による利用者の状態の評価方法 

(出典:令和2年厚生労働省 訪問看護ステーションの基準に係る届出に関する手続きの取扱いについて

講師陣など特長ある研修を開催しているものもありますので、ぜひご都合に合った研修を調べてみてください。

ここからは、精神科訪問看護で算定できる【精神科訪問看護療養費】について解説します。

精神科訪問看護療養費のしくみ


精神科訪問看護療養費は、医療保険適用となります。

精神科以外の訪問看護療養費と同様のしくみですが、以下の青枠で囲った部分の、精神科訪問看護基本療養費とそれぞれの加算が異なります。

精神科訪問看護療養費と加算一覧


精神訪問看護基本療養費、訪問看護管理療養費、訪問看護情報提供療養費、訪問看護ターミナルケア療養費と、それぞれの加算一覧は以下のとおりです。

精神科訪問看護基本療養費は(Ⅰ)から(Ⅳ)まであります。
(精神科訪問看護基本療養費(Ⅱ)は2018年(平成30年)4月改定で廃止されました。)

精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)および(Ⅲ)については、訪問看護を実施した者の職種や人数によって費用が異なります

精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ) とは?


同一建物居住者以外に対して精神科訪問看護を行った場合に算定する療養費です。

准看護師による場合とそれ以外の職種で区別されています。

精神科訪問看護基本療養費(Ⅲ) とは?


同一建物居住者に対して精神科訪問看護を行った場合に算定する療養費です。
精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)同様に、准看護師による場合とそれ以外の職種で区別されています。

同一日に「2人まで」か「3人以上」かで費用が異なります。
2人までは、精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)と同じ設定額です。

精神科訪問看護基本療養費(Ⅳ)とは?


入院中に、退院後訪問看護を受けようとする方が、在宅療養に備えて一時的に外泊(1泊2日以上)をする場合に、入院中1回に限り算定できる療養費です。

ただし、特掲診療料の施設基準等別表7と別表8に掲げる、末期の悪性腫瘍や多発性硬化症などの難病等の利用者については、入院中2回まで算定できます。

なお、精神科訪問看護基本療養費(Ⅳ)を算定する場合は、同一日に訪問看護管理療養費は算定できません。

精神科訪問看護基本療養費には以下の7つの加算項目があります。

  1. 特別地域訪問看護加算
  2. 精神科緊急訪問看護加算
  3. 長時間精神科訪問看護加算
  4. 複数名精神科訪問看護加算
  5. 夜間・早朝訪問看護加算
  6. 深夜訪問看護加算
  7. 精神科複数回訪問加算

下線4の【複数名精神科訪問看護加算】以外の加算は、精神科以外の訪問看護基本療養費の加算と要件はほぼ同じで、金額も同額です。

なお、精神科訪問看護基本療養費には、【乳幼児加算(6歳未満)】の加算項目はありません。

精神科複数回訪問加算の算定要件は?


上記の加算項目4の、【複数名精神科訪問看護加算】は、精神科以外の複数名訪問加算とは算定要件が異なるため注意が必要です。


複数名精神科訪問看護加算では、
【同行職種】×【同一建物居住者の訪問人数】×【1日あたりの訪問回数】の3つの要件により加算額が設定されています。

異なる点を以下の表に示します。

複数名精神科訪問看護加算複数名訪問看護加算
職種1人以上は保健師または看護師1人以上は保健師、助産師、看護師または准看護師
加算できる回数1日当たりの回数に応じて所定額に加算
(ただし、看護補助者又は精神保健福祉士が同行する場合には、週1日に限り加算)
精神科訪問看護指示書に複数名訪問の必要性が記載されている必要がある
週1回に限り加算
(ただし、看護補助者と同行する場合には、
①特別訪問看護指示書・特掲診療料の施設基準等別表7、8に該当する場合は1日当たりの回数に応じて加算
②それ以外は週3回まで加算)

なお、複数名精神科訪問看護加算は、30分未満の訪問では算定できません。

訪問看護管理療養費の算定要件と設定金額は、精神科以外の訪問看護と同じです。

加算項目は以下の9つです。
下線8の【精神科重症患者支援管理連携加算】以外は精神科以外の訪問看護管理療養費の加算項目と同じです。

  1. 24時間対応体制加算
  2. 特別管理加算 
  3. 専門管理加算
  4. 退院時共同指導加算 
  5. 退院支援指導加算
  6. 在宅患者連携指導加算
  7. 在宅患者緊急時等カンファレンス加算
  8. 精神科重症患者支援管理連携加算
  9. 看護・介護職員連携強化加算


精神科重症患者支援管理連携加算の算定要件は?


上記加算項目8の【精神科重症患者支援管理連携加算】は、重度の精神疾患患者が在宅で安定して過ごせるよう訪問看護ステーションの保健師、看護師、准看護師、作業療法士が保険医療機関と連携して行う訪問看護を評価する加算です。

算定項目には、【精神科在宅患者支援管理料2のイ】と【精神科在宅患者支援管理料2のロ】の2種類があり、月1回に限り算定できます。

精神科重症患者支援管理連携加算の算定要件は以下の通りです。

  • 精神科訪問看護基本療養費、24時間対応体制加算、精神科重症患者支援管理連携加算の届出を地方厚生(支)局長に行っている。
  • 利用者が保険医療機関において精神科在宅患者支援管理料2の算定対象者になっていて、その保険医療機関と訪問看護ステーションが連携している。
  • 保険医療機関の職員と共同でカンファレンスを行う。
  • 支援計画を以下のとおり策定する。
    • 保険医療機関と連携して設置する多職種チームに、保健師、看護師、作業療法士、精神保健福祉士のいずれか1名以上が参加する。
    • 利用者またはその家族の同意を得ている。
    • 利用者の病状、治療計画、直近の診療内容等緊急対応に必要な診療情報について随時提供を受ける。

次の1,2両方に該当する場合はイ、いずれかに該当する場合はロとなります。

  1. 1年以上の入院歴を有する者、措置入院または緊急措置入院を経て退院した患者であり、都道府県等が精神障害者の退院後支援に関する指針を踏まえて作成する退院後支援計画に関する計画に基づく支援機関にある患者または入退院を繰り返す者
  2. 統合失調で、統合失調症型障害もしくは妄想性障害、気分(勘定)障害または重度認知症の状態で、退院時または算定時におけるGAF尺度による判定が40以下の者

イとロそれぞれの算定要件は以下のとおりです。

カンファレンスの回数訪問回数
多職種チームによるカンファレンスを週1回開催、うち月1回以上は多職種チームと保健または精神保健福祉センター棟と共同してカンファレンスを開催する。週2回以上
多職種チームと保健所または精神保健福祉センター等が共同してカンファレンスを月1回以上開催する。月2回以上

精神科訪問看護と、精神科以外の医療保険適用となる訪問看護の診療報酬算定要件の違いを以下の表にまとめました。

訪問看護ステーションの
精神科訪問看護
精神科以外の訪問看護
指示書の交付患者、または家族の同意を得て交付患者の同意を得て交付
対象者本人(または家族のみでも可)本人
主治医保険医(精神科の医師に限る当該患者を診療する保険医
訪問看護提供者保健師、看護師、准看護師、作業療法士
(複数名、精神科、訪問看護加算は、30分未満を除く)
保健師、助産師、看護師、准、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士
訪問看護の時間30分未満。または30分以上の報酬1回あたり30分から90分の報酬
訪問看護の回数原則週3回、ただし退院直後から3カ月間は週5日訪問可原則週3日
複数回訪問加算精神科複数回訪問加算難病等複数回訪問加算
別表第7と8の対象者
特別訪問看護指示期間
その他精神科重症患者支援管理連携加算


自立支援医療(精神通院医療)は、精神疾患(てんかんを含む)で、通院による精神医療を続ける必要がある病状の方に、通院のための医療費の自己負担を軽減するもので、訪問看護療養費にも適用されます。

対象となるのは全ての精神疾患です。            

症状がほとんど消失している方でも、再発を予防するために通院治療を続ける必要があると判断された場合は対象となります。

自立支援医療(精神通院医療)の自己負担額


自己負担は通常、1割負担になります。

所得に応じ1ヶ月の自己負担上限額が定められており、市町村住民税非課税世帯では、負担上限額は2,500円か5,000円です。

市町村民税課税世帯では、高額療養費の限度額が適用になります。

さらに、統合失調症などで、医療費が高額な治療を長期間にわたり続けなければならない方は【重度かつ継続】という区分が適用され、市町村民税課税世帯でも1か月当たりの負担上限額が5,000円から20,000円と軽減されます。

Q.精神科訪問看護は精神保健福祉士単独の訪問は可能ですか?


→精神保健福祉士(PSW)単独の訪問は、医療機関からの訪問看護では算定可能ですが、訪問看護ステーションからの訪問看護では精神科訪問看護療養費を算定できません。

しかしながら、PSWは医療と福祉のつなぎ役として、精神科訪問看護の導入まで等において在宅療養をする利用者・ステーション双方にとってメリットが大きく、今後単独訪問も可能になることを望む声が多く、要望が出されています。

Q.精神科訪問看護で30分未満の訪問の算定要件は?


→30分未満の訪問については、利用者に短時間の必要性があると医師が認め、精神科訪問看護指示書に明記されている場合のみ算定できます。

今回は、精神科訪問看護の算定要件について解説しました。

精神障がい者が在宅で安心して暮らすため、利用者に寄り添い支援する精神科訪問看護は地域で重要な役割を担っています。

ぜひこの記事を活用し、精神科訪問看護の算定要件について理解を深めて下さい。





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最後まで読んでくださりありがとうございました。

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