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訪問看護の同一建物減算|医療保険・介護保険の違いと小規模ステーション向け実務ガイド【2025年最新版】

訪問看護の同一建物減算|医療保険・介護保険の違いと小規模ステーション向け実務ガイド【2025年最新版】

公開:

2025年4月8日

更新:

2025年4月8日

訪問看護における「同一建物減算」、正しく理解できていますか?

医療保険と介護保険では要件が異なり、適切な対応が事業所運営に欠かせません。特に小規模ステーションでは、減算の仕組みを理解し、効率的なサービス提供を行うことが重要です。

 

この記事では、訪問看護における同一建物減算の仕組みを、医療保険と介護保険の違いを比較しながらわかりやすく解説します。

この記事を読むとわかること

  • 医療保険と介護保険、それぞれの同一建物減算の算定要件を明確に区別できる
  • 「同一建物」の定義を正しく理解し、減算対象となるケースを正確に判断できる
  • 最新の法改正情報に基づいた、適切な対応策を講じることができる

 

小規模ステーションの管理者としておさえるべきポイントを具体的に紹介します。同一建物居住者へのサービス提供で迷わないために、ぜひ最後まで読んで、適切な運営にお役立てください。

目次

訪問看護における同一建物減算とは?基礎知識と最新情報


まずは、同一建物減算の基本的な考え方と最新の改定情報について解説します。



同一建物減算とは、同じ建物や敷地内に居住する複数の利用者に対して訪問看護を行う場合に、診療報酬や介護報酬が減算される仕組みです。

この減算制度が導入された主な理由は以下の点にあります。

  • 訪問に要する時間や移動コストが効率化される場合、報酬を適正化するため
  • 集合住宅等への過度な集中を防ぎ、地域全体へのサービス提供を促進するため
  • 医療・介護資源の公平な分配を図るため


同一建物減算は、訪問看護だけでなく訪問介護や訪問診療など、「訪問系」のサービス全般に適用される制度です。特に訪問看護においては、医療保険と介護保険の両方で減算の仕組みがありますが、その定義や適用条件は大きく異なります。

医療保険では同一日に同一建物居住者への訪問が3人以上となる場合に減算されるのに対し、介護保険では、訪問看護ステーションと同一建物または同一敷地内の建物に居住する利用者へのサービス提供時に減算が適用される点が特徴的です。

なお、2024年度の改定では訪問介護において同一建物減算に関する新たな区分が創設されましたが、訪問看護に関しては同様の変更は見られません。

医療保険と介護保険|同一建物減算の違いを徹底比較


訪問看護における同一建物減算は、医療保険と介護保険で摘要基準が大きく異なるため、正確な理解が欠かせません。

以下の表で、主な違いを比較します。

項目医療保険介護保険
減算の基準同一日の訪問人数建物の位置関係と月の利用者数
対象となる建物同一建物内に居住する者・事業所と同一建物
・事業所と同一敷地内や隣接する建物
・上記以外で月20人以上利用の建物
減算率・0%(2人目)
・50%(3人目以降)
・10%(基本)
・15%(月50人以上の場合)
計算単位1日(暦日)単位で判定1か月単位で判定




医療保険では、同一日に同じ建物に居住する複数の利用者を訪問した場合に訪問看護療養費(Ⅱ)を算定します。

同一日に同一建物内で3人以上の利用者を訪問した場合に減算されます。

  • 2人目まで:基本療養費(Ⅰ)と同一点数で算定
  • 3人目以降:50%カット


訪問看護療養費(Ⅱ)は以下のとおりです。

訪問職種利用者数週3日まで(1日につき)週4日以降(1日につき)
看護師・保健師・助産師同一日に2人まで5,550円6,550円
同一日に3人以上2,780円3,280円
准看護師同一日に2人まで5,050円6,050円
同一日に3人以上2,530円3,030円
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士同一日に2人まで5,550円
同一日に3人以上2,780円

 

 



介護保険では、訪問看護ステーションと建物の位置関係や、建物内の利用者数に基づいて減算が適用されます。減算率には、10%と15%の2種類があります。

減算率

  • 10%減算:同一建物や同一敷地内建物への訪問
  • 15%減算:月50人以上の利用者が居住する場合



2つの減算率の違いは以下のとおりです。

10%減算が適用されるケース

  • 訪問看護ステーションと同一敷地内または隣接する敷地内に所在する建物に居住する利用者にサービス提供する場合
  • 上記以外の範囲に所在する建物であっても、当該建物に居住する利用者が1月あたり20人以上いる場合

例)サ高住に居住する利用者が、1月あたり、A棟に15人、B棟に8人利用している場合、合計23人となり、20人以上の基準に該当するため10%の減算が適用されます。

15%減算が適用されるケース

  • 訪問看護ステーションと同一敷地内または隣接する敷地内に所在する建物に居住する利用者が1月あたり50人以上いる場合

例)事業所が公道を隔てて併設している建物に居住する利用者が1月あたり50人以上の場合


この減算率の違いは、効率化の度合いに応じて設定されています。より多くの利用者が同一建物に居住している場合、移動効率がさらに高まるという考え方に基づいています。


介護保険における同一建物減算の算定には、以下の点に注意が必要です。

  • 減算は各訪問ごとに適用される(回数ごとに計算)
  • 1月あたりの利用者数をカウント
  • 同じ敷地内にある複数の建物の利用者も合算
  • 同一日に複数回訪問した場合でも、それぞれの訪問に減算が適用される

 

 

 

管理者は、医療保険と介護保険の減算制度を正確に理解し、常に利用者本位の適切なサービス提供に注力する必要があります。減算は単なる事務的な問題ではなく、サービスの質と効率性を適正に評価するための仕組みであることを認識し、法令を遵守した誠実な運営が求められます。


同一建物とは何か?定義と判断基準を詳しく解説


訪問看護における「同一建物」の定義は、医療保険と介護保険で異なります。それぞれの制度における「同一建物」の考え方を詳しく解説します。



医療保険では、「同一建物」は居住者の単位で判断されます。
 つまり、同じ建物内に居住する利用者の人数が基準となります。

同一建物減算とみなされる例

  • 同一のマンションに3人以上の利用者が居住している
  • グループホームで3人以上が共同生活をしている
  • サービス付き高齢者向け住宅に3人以上が入居


このように、同じ建物内で生活する人数が基準となり、一定人数を超えると「同一建物」として扱われます。



介護保険では、「同一建物」は建物そのものを基準として判断されます。
 つまり、訪問看護ステーションと建物の物理的な距離関係によって、同一建物と見なされるかが決まります。


同一建物とみなされる基準

  1. 訪問看護ステーションと同じ建物内にある集合住宅
  2. ステーションと隣接する建物
  3. ステーションと公道を挟んで隣接する建物
  4. 利用者合計が20人以上いる建物
  5. 同一敷地内にある複数の建物で利用者合計が20人以上


このように、A~Cでは建物の物理的な位置関係、D・Eでは利用者20人以上が、「同一建物」かどうかの判断基準となります。

小規模訪問看護ステーションにおける同一建物減算の実務ポイント


小規模訪問看護ステーションでは、介護保険の同一建物減算が適用されるケースは比較的少ないですが、医療保険では減算が比較的発生しやすいため、正しい理解が必要です。

適切な請求を行うためにも、制度の仕組みを正しく把握し、適正な訪問計画を立てることが重要です。

以下にポイントをまとめます。

1. 介護保険の減算は限定的

  • 介護保険の同一建物減算は、小規模ステーションでは該当しにくい
  • ただし、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や高齢者向けマンションへの訪問が増えると、将来的に減算対象となる可能性があるため、定期的な確認が必要

2. 医療保険では減算が発生することも

  • 医療保険では、同一建物内で1日に3人以上の利用者に訪問すると、3人目以降は基本療養費が50%減算される
  • サ高住や集合住宅での訪問が多い場合、同じ日に複数の利用者を訪問することで減算対象となるケースが増える
  • 減算が適用される場合でも、適正な請求を行い、正しい運営を心がけることが重要

3. 実務対応のポイント

  • 訪問先の利用者数を定期的にチェックし、減算が適用されるかどうかを把握する
  • 訪問スケジュールは、利用者の状態や必要なケアに基づいて適正に組む。減算が適用される場合でも、制度を理解し正しく請求する
  • 介護保険・医療保険の違いを理解し、誤った請求を防ぐ


訪問看護の同一建物減算に関するよくある質問と回答


訪問看護の同一建物減算について管理者からよく寄せられる質問に回答します。



介護保険では、事業所と渡り廊下等で連結している建物や、同一敷地内にある建物を指します。道路や川などを挟んで隣接する場合も同一敷地内とみなされます。

医療保険では敷地ではなく、建物単位で判断します。



医療保険の同一建物減算における不正請求は、制度の誤解や運用ミスから発生することがあり、小規模訪問看護ステーションにも関係する重要な問題です。以下に具体例と小規模ステーションへの影響を整理します。

  1. 減算適用漏れ
    同一建物内で3人以上訪問しているにもかかわらず、減算を適用せず通常の基本療養費を請求するケース。記録ミスや人数管理の不備が原因となり得ます。
  2. 訪問記録の虚偽記載
    訪問時間や人数を操作して減算対象外と偽る行為。小規模ステーションでは業務負担が増えることでこうしたミスが発生しやすくなります。
  3. 意図しない不正請求
    制度が複雑であるため、意図せず誤った請求をしてしまうリスクがあります。例えば、電子カルテや請求ソフトの設定ミスによる自動計算エラーなどが該当します。


  • 電子カルテや自動減算機能の導入:記録ミスを防ぎ、効率的な運営を実現します。
  • スタッフ教育と内部監査:制度理解を深め、不備を早期に発見する体制を整えます。


医療保険の同一建物減算は、小規模ステーションでも適切な運営と管理体制が求められる重要な制度です。

今後の改定に備え、制度内容を正しく理解し、適正な請求と法令遵守を意識した運営を行いましょう。

訪問看護の同一建物減算への対応を徹底しよう


訪問看護の同一建物減算は、医療保険と介護保険で仕組みが異なるため、正確な理解が重要です。

特に小規模ステーションでは医療保険の減算が発生しやすいため、訪問計画を適正に立てることが求められます。

制度を正しく運用し、減算対象を把握することで、収益への影響を最小限に抑えながら質の高いサービス提供を目指しましょう。

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