訪問看護の離職率と「きつい」と言われる背景データ

現場の状況を単なる感情論で片付けてはいけません。離職率や勤続年数などの客観的な数字から、小規模ステーションが直面している人材流出の危機を正しく把握しましょう。
訪問看護の離職率と平均勤続年数
日本看護協会の調査によると、訪問看護ステーションの離職率は約15%前後で推移しています。病院勤務の看護師(約11%)と比較しても高く、小規模な事業所ほど一人の離職が経営を揺るがす大きな問題となります。
離職の主な要因は、業務負荷の偏りや、相談相手がいない不安によるものです。病院のような交代制ではないからこそ、一人にかかる責任が重くなりやすい傾向にあります。管理者として、スタッフが抱える目に見えない負担を数値で理解し、対策を打つことが求められます。
| 項目 | 訪問看護(全体) | 病院(一般) |
| 平均離職率 | 約15.0% | 約11.0% |
|---|---|---|
| 主な離職要因 | オンコール、臨床判断の不安 | 結婚・出産、夜勤負担 |
| 組織の課題 | 特定の看護師への負担集中 | 交代制による労働時間の管理 |
看護師が「訪問看護 きつい」と検索する理由
看護師が「訪問看護 きつい」と検索する際、その背景には以下のような心理が隠れています。
- 自分のステーションの忙しさは異常ではないかという確認
- 今の職場を辞めて、もっと楽に働ける場所があるのかという探索
- 訪問看護という仕事自体を続けていけるかどうかの不安
これは単なる不満の吐露ではなく、「長く働ける環境か」を見極めようとする前向きな心理の裏返しでもあります。管理者がこのニーズをくみ取り、業務環境を整えることは、優秀な人材を確保する上でも避けて通れない取り組みです。
訪問看護業務が「きつい」と感じる7つの要因

現場のスタッフが負担を感じる理由は一つではありません。身体的な疲れから精神的な重圧まで、複数の要因が積み重なって限界に達します。
管理者として理解しておくべき「負担の正体」を7つの視点で整理しました。
| 要因 | 主な内容 | 影響 |
| ①オンコール | 24時間鳴り止まない不安 | 睡眠不足、精神的疲労 |
|---|---|---|
| ②孤独な判断 | 現場での単独意思決定 | 強いプレッシャー |
| ③人間関係 | 家族や多職種との調整 | 感情労働による摩耗 |
| ④移動環境 | 天候や衛生環境の悪さ | 身体的な消耗 |
| ⑤連携コスト | アナログな連絡の多さ | 時間的ロスの蓄積 |
| ⑥記録業務 | 帰宅後も続く事務作業 | 長時間労働の常態化 |
| ⑦給与の不満 | 負荷に対する報酬の低さ | モチベーション低下 |
①精神的負担が大きいオンコール対応
オンコールは、訪問看護師が「きつい」と感じる大きな理由の一つです。特に小規模ステーションでは3〜4人の看護師で交代するため、週に2回以上の待機が発生しやすくなります。
「いつ鳴るかわからない」という不安は、想像以上にストレスです。休日にお酒を飲めない、遠出ができないなどの制約が、生活の質をじわじわと下げていくのです。出動の有無にかかわらず、待機そのものが疲労を蓄積させ、離職の引き金になります。
②一人での訪問と判断に伴うプレッシャー
病院勤務から転身した看護師が不安になるのが、現場での孤独です。急変時や未知の症例に遭遇した際、相談できる医師や先輩がそばにいない環境は、強いストレスを生みます。
「自分の判断ミスが利用者の命に関わる」という重圧は、経験の浅いスタッフほど深刻です。同行訪問の期間が短いステーションでは、こうした不安が解消されないまま現場に出るため、スキル不足への恐怖が「仕事に行きたくない」という感情につながりかねません。
▼緊急時の対応フローや加算算定の要件はこちら
訪問看護の緊急時加算とは?複雑な医療保険・介護保険の緊急時加算について
③利用者や家族との人間関係と接遇
訪問看護は密室でのケアであるため、接遇の難易度が高い仕事です。理不尽な要求や、家族間の複雑なトラブルに巻き込まれるケースも少なくありません。
スタッフが疲弊する場面をいくつか挙げます。
- 家族からの過度な介護要求やクレームへの対応
- 利用者の自宅の衛生環境(ゴミ屋敷など)に対する心理的抵抗
- 医師の指示と家族の要望の間で板挟みになる状況
こうした感情労働が特定の看護師に集中すると、組織全体への不信感に発展します。
④移動負担と過酷な訪問環境
身体的な消耗も無視できません。夏場の猛暑や冬の積雪、激しい雨の中での移動は、体力を著しく奪います 。特に自転車移動が中心の地域では、天候の影響をダイレクトに受けます。
また、エレベーターのない団地での階段昇降や、不衛生な環境でのケアは、腰痛や皮膚トラブルの原因にもなります。病院のように空調の効いた清潔な環境ではないことが、離職を考える一因となります。
⑤多職種連携における調整コスト
訪問看護師は、医療と介護をつなぐ中心的な役割を担います。しかし、その連携業務がアナログなままだと、大きな時間的ロスが生じます。
主治医やケアマネジャーとの連絡手段が電話やFAXに依存している現場では、相手が捕まらないだけで作業が止まります。こうした本来の看護とは無関係な調整に追われることが、現場の士気を下げる一因となりかねません。
⑥記録業務による長時間労働と残業
「訪問看護は記録の仕事」と言われるほど、文書作成の量は膨大です。1日5〜6件の訪問を終えてステーションに戻り、そこから紙のカルテや報告書を作成する運用では、残業が常態化します。
業務プロセスが古いままでは、純粋なケア以外の時間が労働時間を圧迫し続けます。記録のためにプライベートの時間が削られる状況は、看護師のやる気を奪う結果を招くでしょう。
▼レセプト業務の効率化とシステム活用についてはこちら
【実務者必見】訪問看護レセプト業務の基本と対策|効率化と請求ミスゼロへ
⑦給与と業務負荷の不均衡
オンコール手当や緊急出動手当を含めても、「この大変さでこの給料?」と不満を持つスタッフは多いです。病院の夜勤手当と比較して、拘束時間に対する単価が低いと感じるケースが目立ちます。
賃上げのためのベースアップ評価料などの制度は整い始めていますが、小規模なステーションでは昇給の基準が不明確なことも多いです。将来のキャリアパスが見えないことも、長く働き続ける意欲を削ぐ原因になります。
小規模ステーション管理者が陥る「きつさ」の構造

管理者が現場のプレーヤーを兼ねる小規模ステーションでは、本来の経営業務が後回しになりがちです。現場と事務の板挟みになる構造を理解し、個人の頑張りに依存しない運営へシフトする必要があります。
プレイングマネージャーとしての限界
小規模ステーションの管理者の多くは、自身も訪問車を走らせながら、経営全般をこなしています。現場でのケアを終えた後に待っているのは、レセプト請求やシフト作成、さらには採用活動などの膨大な管理業務です。
本来、管理者が行うべき組織の仕組みづくりに時間を割けなくなることは、以下のリスクを招きます。
- 事務作業の遅れによる返戻リスクの増大
- スタッフの不満や体調変化に気づく余裕の消失
- 採用活動の停滞による人手不足の深刻化
これらが積み重なると、ステーション全体の運営が疎かになる悪循環に陥ります。管理者自身の余裕こそが、健全な組織づくりの基盤です。
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孤独な意思決定と相談相手の不在
管理職には、スタッフの人間関係トラブルや経営判断など、一人で抱え込みやすい課題が集中します。特に経営知識が不十分なまま管理者に就くと、相談相手もいないまま燃え尽きるケースが目立ちます。
管理者として抱え込みがちな役割と、その解決に向けた方向性を整理しました。
| 管理者の役割 | 具体的な悩み | 解決の方向性 |
| プレーヤー | 自身の訪問件数と疲労 | 訪問件数の調整とICT導入 |
|---|---|---|
| 経営者 | 資金繰りや加算取得 | 専門知識の習得と外部支援 |
| マネジャー | スタッフの離職防止 | 評価制度の構築と対話 |
責任感の強さから「自分が動けばなんとかなる」と考えてしまうのは危険です。外部ネットワークや、業務を自動化するシステムなどのパートナーを見つけ、相談できる環境を整えましょう。
きつい環境を変えるための具体的解決策と仕組み

訪問看護の過酷な労働環境は、個人の根性論ではなく、組織の仕組みを見直すことで改善します。ICTの導入や最新の制度活用により、スタッフが疲弊しない持続可能な運営体制を構築しましょう。
ICT活用による直行直帰と業務効率化
記録業務による残業を減らす最も有効な手段は、クラウド型電子カルテやタブレット端末の導入です。訪問先で記録が完結すれば、わざわざステーションに戻る必要がなくなります。
直行直帰のスタイルを取り入れることで、スタッフの移動時間と事務作業時間を大幅にカットできます。
ICTの導入によって、現場の働き方が具体的にどう変わるのかを比較しました。
| 項目 | 従来の運用(アナログ) | ICT活用後の運用(デジタル) |
| 記録場所 | ステーションに戻ってから入力 | 訪問先や移動の合間に完了 |
|---|---|---|
| 情報共有 | 電話・FAX・紙の申し送り | チャットツールでリアルタイム共有 |
| 勤務形態 | 全員が必ず事務所へ帰所 | 直行直帰による残業ゼロの実現 |
事務作業の負担が減ることで、看護師は本来のケアに集中できる余裕を取り戻せます。
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オンコール負担を抑える看護の工夫と組織の仕組み
小規模ステーションにおいて、オンコールはスタッフの定着を左右する大きな課題です。オンコールの悩みは、現場での看護の工夫と、組織としての仕組みの導入を組み合わせることで軽減できます。精神的なプレッシャーを減らすには、内側と外側両面からのアプローチが欠かせません。
看護の質で電話を減らす
オンコールが鳴る背景には、利用者やご家族の「夜を越せるか」という不安が隠れています。日中の訪問時に先回りした関わりを持つことで、深夜の呼び出しをある程度未然に防ぐことが可能です。
- 夕方の事前確認電話(プレ・コール)の実施
不安の強い利用者に、夕方の時間帯に状況確認の電話を一本入れます。この丁寧な関わりによって、夜間の不安が解消され、呼び出し頻度が下がるケースは少なくありません。 - 予測に基づく資材と薬剤の準備
夜間に起こり得る変化を予測し、頓服薬や吸引資材などをあらかじめ準備しておきます。ご家族へ具体的な対応手順を伝えておくことで、夜間の迷いによる電話を抑えられます。 - 「予防的視点」のスタッフ間共有
日中のケア内容を見直し、夜間のトラブルを予防する視点をチーム全体で共有します。
組織の体制で支える
大切なのは、電話の数を減らす工夫と、判断の重圧を分散させる仕組みを組み合わせることです。
- ICT(電子カルテ)を活用した情報共有
自宅からでも最新の指示書や経過を確認できれば、現場での判断の迷いを最小限に抑えられます。 - オンコール代行サービス(外部委託)の検討
夜間の一次受けを外部センターへ委託し、緊急性の低い相談をカットする手法です。ただし、「24時間対応体制加算」を算定している場合は、原則として自事業所のスタッフが直接受ける体制が求められるため、注意が必要です。 - 近隣ステーションとの連携
自社だけで抱え込まず、他ステーションと協力して24時間体制を維持する「複数事業所による連携」も、令和6年度の報酬改定でより柔軟な運用が可能になっています。
看護の質による予防策と、組織的なバックアップ体制による解決策を比較して整理しました。
| 対策の種類 | 具体的なアクション | 期待できる効果 |
| 内側の対策(看護) | 夕方の確認電話、事前の薬剤準備 | 呼び出し件数そのものの減少 |
|---|---|---|
| 外側の対策(仕組み) | ICT活用、外部委託、地域連携 | スタッフの安眠と心理的安心感 |
外部サービスや地域連携などの「仕組み」を使いこなす体制へアップデートしましょう。
▼オンコールの負担軽減と具体的な体制づくりについてはこちら
小規模訪問看護ステーション必見!オンコールの負担軽減・人材確保・緊急時対応を徹底解説
賃上げを支援する「緊急補助金」の活用と処遇改善
「仕事の負担に対して給料が見合わない」という不満は、スタッフが離職を考える大きな要因となります。これまで「ベースアップ評価料」などの仕組みもありましたが、事務負担の重さから活用しきれていないステーションも少なくありませんでした。
2026年1月現在、管理者が最も注視すべきは、2025年12月25日に通知が発表された「令和7年度 介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」です。これは令和8年度の報酬改定を待たず、人材流出を防ぐために国が実施する緊急的な支援策です。
この補助金制度の概要と、管理者が今すぐ確認すべきポイントを整理しました。
| 項目 | 内容 | 管理者が注意すべき点 |
| 対象事業 | 令和7年度 賃上げ・職場環境改善支援 | 令和8年度改定までの緊急的な措置 |
|---|---|---|
| 交付率 | 13.2%(訪問看護・介護予防) | 補助金の全額を賃金改善に充てること |
| 算定の基準月 | 2025年12月 | この1カ月の報酬実績が補助額のベース |
| 受給の要件 | ICT連携 または 職場環境整備 | いずれかの要件を満たす体制整備が必要 |
特に注意が必要なのは、2025年12月のサービス提供実績が補助金額のベースになる点です。この基準月の報酬額に応じて配分が決まるため、まずは12月の運営実績を確実に管理し、受給のための体制整備(システム加入や就業規則の改定など)を急ぐ必要があります。
補助金を受け取るには、ケアプランデータ連携システムへの加入や、職責に応じた賃金体系の整備などが求められます。こうした手続きを一つずつ進めることは、単なる資金確保にとどまりません。スタッフに対して「ステーションとして処遇改善に本気で取り組んでいる」という姿勢を示す、信頼構築のための重要なプロセスとなります。
小規模ならではの風通しの良い組織づくり
小規模ステーションの強みは、大規模にはない柔軟性と、スタッフ一人ひとりの声が届きやすい距離の近さです。
画一的な管理ではなく、個別の事情に合わせた働きやすさを追求しましょう。
- 定期的な1on1ミーティングを実施し、現場の小さな不安を早めに摘み取る
- 急な子供の病気などに柔軟に対応できるシフト協力体制を整える
- 現場のアイデアをすぐに運営へ反映させ、当事者意識を高める
「自分の居場所がある」と感じられる職場環境は、どんな高価なシステムよりも強い離職防止の力になります。
2026年以降に生き残るステーションの条件

団塊の世代がすべて75歳以上となった現在、訪問看護のニーズは過去最大に膨らんでいます。一方で、スタッフの選別も厳しくなっており、従来の運営体制のままでは生き残ることは困難です。
これからの時代に求められる選ばれるステーションの条件を、規模とIT化の視点から解説します。
機能強化型への移行と大規模化の検討
小規模ステーションが抱えるリスクを回避するには、組織を大規模化し「機能強化型訪問看護ステーション」を目指す戦略が有効です。人員体制が手厚くなることで、一人あたりのオンコール回数を物理的に減らし、安定した経営基盤を築けるからです。
看護師が10名以上在籍する規模になれば、教育体制の充実が可能になります。小規模ならではの良さを残しつつも、組織としての「体力」をつけることが、スタッフを「きつさ」から守ることにつながります。
ステーションの規模による運営体制の違いを比較しました。
| 項目 | 小規模ステーション | 機能強化型(大規模) |
| 看護師数(常勤換算) | 2.5名以上 | 5名〜7名以上 |
|---|---|---|
| オンコール体制 | 3〜4名での交代(月7〜10回) | 10名以上での交代(月3回〜) |
| 教育・バックアップ | 管理者個人のスキルに依存 | 組織的な研修や複数名でのフォロー |
| 収益性 | 算定できる加算が限定的 | 高い報酬単価(機能強化型加算) |
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DX加算算定に見る「働きやすさ」の指標
「訪問看護医療DX情報活用加算」を算定している事実は、求職者にとって「無駄な業務が少ない職場」であることの証明になります。この加算は、オンライン請求やマイナ保険証による資格確認など、IT化を推進している事業所に認められるものだからです。
IT活用が進んでいる職場では、情報の転記やレセプトの確認作業といった、看護の本質ではない事務時間が最小限に抑えられています。
- オンライン請求・オンライン資格確認の導入
- 電子カルテとモバイル端末の活用による直行直帰
- チャットツールによる迅速な多職種連携
これらが整っているステーションは、求職中の看護師から「看護に専念して働けそうだ」と評価されます。DX化は、採用市場で生き残り、スタッフの疲弊を防ぐための必須条件と言えます。
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まとめ

訪問看護の現場にある「きつい」という悩みは、決して管理者様やスタッフの方々の努力が足りないからではありません。むしろ、これまでの個人の献身的な頑張りに支えられてきた運営体制が、増え続けるニーズに対して限界を迎えていることが本質的な課題です。
訪問看護は、本来、利用者の人生に深く寄り添える尊いものです。そのやりがいを、過度な業務負担によって損なわないようにするためには、属人的な負担を組織の仕組みでカバーする体制への移行が欠かせません。ICTの導入や適切な加算の算定は、単なる効率化ではなく、利用者様へのケアの質を守り、共に働く仲間の笑顔を守るための大切な決断です。
2026年、訪問看護には「質の高い看護」と「デジタルを活用した効率的な運営」の両立が標準的に求められるようになります。この記事でご紹介した具体的な手順が、選ばれるステーションへと一歩踏み出すヒントになれば幸いです。持続可能な環境を整えることで、管理者であるあなた自身も、本来の看護の楽しさや経営の醍醐味を改めて実感できるはずです。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。





