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訪問看護の看護体制強化加算とは?【2024年改定対応】算定要件・届出・維持のコツまで丸ごと解説

訪問看護の看護体制強化加算とは?【2024年改定対応】算定要件・届出・維持のコツまで丸ごと解説

公開:

2025年11月27日

更新:

2025年11月27日

訪問看護ステーションの収益改善に有効な「看護体制強化加算」。しかし、「算定要件が複雑で、自事業所で取得できるのか判断できない」「算定できても、毎月の実績管理や維持が大変そうだ」などの理由で、申請をためらってはいませんか?

この記事では、小規模訪問看護ステーションの経営者の方に向けて、看護体制強化加算の算定要件や(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いをわかりやすく解説します。また、多くの事業所が直面する維持の難しさや、負担を軽減しながら経営改善につなげる具体的な方法も紹介します。

複雑な加算算定への不安を解消し、持続的な収益向上を実現できるよう、ぜひ参考にしてください。

目次


看護体制強化加算は、質の高いサービス提供体制を整えた事業所を評価する制度です。

算定率は(Ⅰ)が4.53%、(Ⅱ)が6.94と、多くの事業所が算定を見送っているのが現状です。しかし報酬が大きく、ステーションの安定経営に直結するため、積極的に検討する価値があります。

参考:令和2年厚生労働省『訪問看護』p.8




在宅医療の重度化に対応し、24時間体制での緊急時対応やターミナルケアなど、地域の中重度者を支える体制を整えた事業所を支援する制度です。

算定は質の高いケアを提供している証となり、地域の医療機関やケアマネジャーからの信頼獲得にもつながります。



算定による増収額を、利用者50名のステーションを例に試算しましょう(1単位=10円で計算)。

【看護体制強化加算の単位数(1人あたり/月)】

  • 看護体制強化加算(Ⅰ): 550単位
  • 看護体制強化加算(Ⅱ): 200単位


仮に、利用者50名のうち30名が加算対象となった場合の増収額は以下のように計算できます。

  • (Ⅰ)を算定した場合:月額165,000円の増収
    (550単位 × 30人 = 16,500単位/月)
  • (Ⅱ)を算定した場合:月額60,000円の増収
    (200単位 × 30人 = 6,000単位/月)


年間では(Ⅰ)が約198万円、(Ⅱ)が約72万円の増収となります。この増収分をスタッフの研修や待遇改善に充てることで、人材定着やケアの質向上などの好循環がうまれます。

※金額は地域区分等により変動します。


看護体制強化加算には(Ⅰ)と(Ⅱ)があり、単位数と要件が異なります。

ステーションの状況に合わせた目標設定のため、両者の違いを正確に把握しておきましょう。



(Ⅰ)と(Ⅱ)の大きな違いはターミナルケア加算の実績です。(Ⅰ)はより手厚い看取りの実績が求められる分、単位数が高くなります。

主な違いを以下の表にまとめました。

比較項目看護体制強化加算(Ⅰ)看護体制強化加算(Ⅱ)
単位数550単位/月200単位/月
【個別要件】前12ヶ月間で5名以上前12ヶ月間で1名以上
【共通要件①】実利用者総数の50%以上(前6ヶ月間)
【共通要件②】実利用者総数の20%以上(前6ヶ月間)
【共通要件③】地域の訪問看護人材の確保・育成に寄与する取り組みが望ましい
※介護予防訪問看護(100単位/月)は上記に加え、看護職員の割合が6割以上必要です。




事業所がどちらを算定できるか、以下の3ステップで現状を確認できます。

ステップ1:直近6ヶ月間の実績割合を確認する


まず、前6ヶ月間の実績で共通要件を満たしているかを確認します。

以下の2つの基準をチェックします。

  • 緊急時訪問看護加算の算定者 ÷ 実利用者総数 ≧ 50%
  • 特別管理加算の算定者 ÷ 実利用者総数 ≧ 20%


基準に満たない場合、利用者構成や算定漏れの有無を見直す必要があります。

ステップ2:過去1年間のターミナルケア実績を確認する


次に、前12ヶ月間のターミナルケア加算の算定者数を確認します。これが(Ⅰ)と(Ⅱ)の分岐点です。

判断基準は以下のとおりです。

  • 5名以上 :看護体制強化加算(Ⅰ)を検討できる
  • 1名以上5名未満 :看護体制強化加算(Ⅱ)を検討できる



ステップ3:今後の事業展開と照らし合わせる


最後に、実績だけでなく今後の事業方針も考慮に入れましょう。

例えば、将来的に看取りケアを強化したいなら、(Ⅰ)を見据えた体制づくりを始めるのも一案です。

まずは算定しやすい(Ⅱ)から始め、段階的に(Ⅰ)へ切り替える戦略も検討できます。


算定要件を理解した上で、それをいかに満たし、維持していくかが重要です。

ここでは、具体的なアクションと管理のポイントを解説します。



看護体制強化加算(Ⅰ)の鍵は、年間5名以上のターミナルケア実績です。達成には、地域の医療機関、特に退院支援に積極的な病院の看護師やソーシャルワーカーとの連携が欠かせません。退院前カンファレンスへ積極的に参加し、看取りまで対応できる体制があることを日頃からアピールしておきましょう。

注意点として、実績は「前12ヶ月間」という長期的な視点で評価されます。一過性の対応ではなく、継続的にターミナル期の利用者を受け入れられる体制づくりが求められます。



看護体制強化加算(Ⅱ)は年間1名以上のターミナルケア実績が要件であり、多くの事業所にとって現実的な目標といえます。まずは地域のクリニックやケアマネジャーとの関係を密にし、ターミナル期の利用者を「まずは1名」受け入れることから始めましょう。

(Ⅱ)でより重要になるのは、共通要件である「緊急時50%以上」「特別管理20%以上」の割合を安定して維持する点です。利用者構成が基準を常に満たしているか、日頃から意識しておく必要があります。



実績の確認は、毎月の請求業務と並行して正確に行う必要があります。確認すべき期間と計算方法は以下のとおりです。

  • 確認対象期間
    • 緊急時訪問看護加算・特別管理加算: 算定したい月の前6ヶ月間
    • ターミナルケア加算: 算定したい月の前12ヶ月間
  • 実績割合の計算:「期間内の加算算定者数 ÷ 期間内の実利用者総数」で算出


☝️【重要】「実利用者総数」の数え方
注意すべきは「実利用者総数」の定義です。例えば、前6ヶ月の間に同一の利用者に複数回訪問しても、実利用者総数としては「1人」と数えます。分母の計算を間違えないよう、利用者単位で管理することが重要です。


これらの実績を手書きの台帳やExcelで毎月集計するのは非常に煩雑で、ミスも起こりがちです。正確な管理には、実績を自動で集計できる仕組みづくりが不可欠です。



以下の4つの質問で、事業所の現在地を客観的に確認しましょう。


Q1. 前6ヶ月間の緊急時訪問看護加算の実績割合は50%以上ですか?

Q2. 前6ヶ月間の特別管理加算の実績割合は20%以上ですか?


Q3. 前12ヶ月間のターミナルケア加算の実績は5名以上ですか?

Q4. 前12ヶ月間のターミナルケア加算の実績は1名以上ですか?


  • Q1, Q2, Q3がすべて「はい」: 加算(Ⅰ)の算定要件を満たしている
  • Q1, Q2, Q4が「はい」でQ3が「いいえ」: 加算(Ⅱ)の算定要件を満たしている
  • Q1またはQ2が「いいえ」: 共通要件が未達の状態
  • Q1, Q2が「はい」でQ4が「いいえ」: 個別要件(ターミナルケア実績)が未達の状態

 


看護体制強化加算は、一度算定できれば終わりではなく、「維持し続ける」ことの難しさに多くの経営者が直面しています。

現場から聞こえる3つのリアルな理由を見ていきましょう。



大きな壁は、利用者の状態が常に変化する点です。例えば、特別管理加の対象だった利用者の状態が改善したり、重度利用者が一人入院するだけで、あっという間に「特別管理20%以上」の基準を下回ってしまいます。

利用者の状態改善は喜ばしいことですが、経営的には実績割れに直結してしまいます。常に実績割合を気にしながら利用者を受け入れることに、本来の看護との間で葛藤を感じる経営者も少なくありません。「加算の維持は奇跡」と言われるほど、常に実績割れのリスクと隣り合わせです。



スタッフの退職も加算維持を脅かす要因となります。特に介護予防で算定する場合、「看護職員6割以上」の人員配置要件があり、小規模ステーションでは看護師が一人退職するだけで基準を満たせなくなる可能性があります。

スタッフの離職は新規利用者の受け入れにも影響し、結果的に実績割合を悪化させることもあります。安定した人員体制の確保が、加算維持の重要な鍵です。



経営者を悩ませるのが、煩雑な実績集計と届出の事務負担です。毎月、請求業務と並行して、過去の実績を正確に算出し直す必要があります。安価なソフトやExcelでの手作業では、データ抽出だけでも一苦労です。

万が一、基準を下回れば「ただちに」変更届を提出する必要があり、プレッシャーと事務作業が経営者の時間を奪います。「一度取り下げたら二度と申請したくない」という声が上がるほど、負担は現場に重くのしかかっています。


算定要件を満たしていることが確認できたら、次に行政への届出が必要です。

ここでは、手続きの基本と、特に注意すべきルールを解説します。



加算の算定を新たに開始するには、事前の届出が必須です。

手続きの概要は以下のとおりです。

  • 提出期限
    算定を開始したい月の前月15日までが一般的ですが、自治体によって期限が異なるため、事前に確認しましょう。
  • 提出先
    事業所の指定を受けている都道府県、または市区町村の担当窓口(介護保険課など)
  • 主な提出書類
    • 介護給付費算定に係る体制等に関する届出書(体制届)
    • 介護給付費算定に係る体制等状況一覧表
    • 看護体制強化加算の算定要件を満たすことを証明する書類(実績計算書など)


※様式や必要書類は自治体のホームページで確認、ダウンロードできます。



特に注意すべきなのが、算定要件を満たさなくなった場合の対応です。

以下のルールを守りましょう。

  • 届出のタイミング
    月々の実績を確認し、基準を下回った場合は、ただちにその旨を届け出る必要があります。
  • 算定不可のタイミング
    基準を下回った場合、翌月から加算は算定できなくなります。
  • 手続き
    加算を取り下げる「加算なし」の届出、または(Ⅰ)から(Ⅱ)へ変更する届出など、状況に応じた手続きを行います。届出を怠ったまま請求を続けると、過誤請求として返還指導の対象となるため、厳格な管理が求められます。



看護体制強化加算の大きな障壁は、「維持管理の煩雑さ」です。この課題に対し、多くの経営者がExcelや手書き台帳で対応していますが、ヒューマンエラーや集計の手間が常に付きまといます。

誰でも正確に状況を把握できる仕組みづくりが、安定した加算維持の鍵です。



月末、請求業務の傍らで過去の記録を遡り、実績を計算する…。この方法では、基準を下回ったことに気づくのが翌月になってしまう、という事態も起こりかねません。

介護ソフトを導入する大きなメリットは、実績管理を「仕組み化」できる点にあります。管理者が不在でも、スタッフが日々の記録を正しく入力さえすれば、算定状況の判断材料となる正確な数字が、いつでも誰でも確認できる。この状態を作ることが、ミスや届出漏れなどのリスクを大幅に軽減します。



介護ソフトは「算定不可です」と教えてくれるわけではありません。しかし、経営者が的確な判断を、迅速に行うための材料を提供してくれます。

  • 算定状況のリアルタイム可視化
    日々の記録を入力するだけで、システムが実績を自動集計。「緊急時50%」「特別管理20%」などの基準に対し、現在の達成率がダッシュボード上で常に可視化されます。これにより、「基準値まであと少し」「今月は少し余裕がある」などの状況を、月末を待たずにいつでも把握でき、経営判断を助けます。
  • 正確な根拠資料の出力
    行政への届出や内部確認に必要な実績記録も、ボタン一つで簡単に出力できます。煩雑な集計作業から解放され、届出業務そのものに集中できます。




頻繁な報酬改定は、手作業管理の計算式やルールを陳腐化させ、経営者の不安を煽ります。

多くの介護ソフトは、報酬改定に合わせて計算ロジックが自動でアップデートされます。管理者は、常に最新の基準に基づいた正確な「判断材料」を手に入れることができるのです。

ITツールは、答えを教えてくれる魔法の杖ではありません。しかし、判断の精度とスピードを劇的に向上させ、経営者を日々の数字の呪縛から解放してくれる、強力なパートナーです。


看護体制強化加算に関して特に多く寄せられる質問についてお答えします。



介護予防訪問看護で加算を算定している場合、看護職員の退職により「看護職員の割合が6割以上」の人員基準を満たせなくなる可能性があります。基準を下回った場合は、速やかに加算の取り下げ、または体制変更の届出を行う必要があるため注意が必要です。



月の途中で実績割合が基準を下回った場合でも、その月は加算を算定できます。しかし、翌月からは算定できなくなるため、基準を満たさなくなったことが判明した時点で、管轄の行政窓口へ体制変更の届出を行う必要があります。届出を怠ると過誤請求となるため、厳格な管理が求められます。


看護体制強化加算は、ターミナルケア実績などの厳しい要件に加え、利用者の状態変化による実績割れのリスクや、煩雑な集計作業など維持の難しさがあります。

この加算を安定した収益の柱とするには、手作業による管理から脱却し、実績管理の仕組み化が欠かせません。実績の自動集計は、経営者を煩雑な事務作業やミスの不安から解放し、スタッフ育成や地域連携などの本来注力すべき業務に集中させてくれます。

看護体制強化加算の管理は、専門的な知識も求められます。信頼できる介護ソフトをパートナーに選び、相談しながら進めることが大切です。弊社では、お客様の状況に合わせ、看護体制強化加算の算定・維持をサポートいたします。ぜひお気軽にご相談ください。

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