訪問看護ステーション立ち上げで助成金が必須な理由

訪問看護ステーション立ち上げの資金調達は大きな課題の一つです。特に、小規模ステーションでは、潤沢な自己資金があるわけではない場合が多く、事業開始前から資金繰りに苦労することも少なくありません。そのような状況において、助成金は、事業の安定的な運営を支える重要な要素となります。
訪問看護ステーション立ち上げに必要な資金について、くわしくはこちらの記事をご覧ください。
≫【完全ガイド】訪問看護ステーション立ち上げ計画:成功するための心構えと準備
資金調達における助成金の重要性
訪問看護ステーションの立ち上げには、事業所の開設費用から備品購入、人件費、運転資金まで、さまざまな費用が必要となります。これらの費用をすべて自己資金でまかなうのは、現実的に難しい場合が多いでしょう。
そこで、助成金が重要な役割を果たします。
助成金は、国や地方自治体から提供される給付金であり、返済不要という大きなメリットがあります。
事業計画の初期段階から助成金を活用することで、資金繰りの不安を軽減し、安定したスタートを切ることができるのです。
助成金活用で経営を安定化させる
助成金は、単に資金を調達する手段としてだけでなく、経営の安定化にも貢献します。助成金を利用することで、初期投資にかかる費用を抑え、運転資金を確保しやすくなります。これにより、事業開始後も余裕を持った経営が可能になり、事業の継続性を高めることができるのです。
さらに、人材育成や業務改善を目的とした助成金もあり、これらを戦略的に活用することで、より質の高いサービスを提供できるようになり、結果的に経営の安定につながります。
小規模ステーションこそ助成金を活用すべき理由
小規模訪問看護ステーションは、人員や資金が限られているため、経営が不安定になりやすい傾向があります。そのため、助成金を活用することで、より経営の安定化を図ることが重要です。
助成金は、小規模ステーションにとって、経営基盤を強化し、サービス品質を向上させるための重要なツールです。助成金を積極的に活用することで、質の高い訪問看護サービスを持続的に提供できる体制を整えることができるのです。
訪問看護ステーション立ち上げ時に利用できる助成金

立ち上げ時特有の費用を支援する助成金があります。事業開始前の準備段階から活用することで、資金調達を有利に進めることが可能です。
各地方自治体では、以下のような助成金・補助金制度を設けています。種類は多くありませんが、利用することで初期投資の負担を大きく軽減できます。
- 創業支援制度
- 助成金の目安: 数十万円~数百万円程度※自治体により異なる
- 地域経済の活性化や雇用促進のための、自治体独自の創業支援制度
- 融資制度や専門家による相談サポートなども利用可能
- スタートアップ支援金:
- 助成金の目安: 数十万円~数百万円程度※事業内容や地域により変動あり
- 事業計画の策定から事業開始後の運営まで、幅広い側面を支援
- 設備投資や事業計画策定に関する費用を補助する場合がある
訪問看護ステーションを立ち上げる地域を管轄する自治体のウェブサイトなどを確認し、利用できる制度がないか検討してみましょう。
令和6年度の情報については、以下のサイトも参考に確認してください。
- (独)中小企業基盤整備機構:J-Net21 支援情報ヘッドライン
- 国や都道府県の補助金・助成金情報を網羅
- セミナー・イベント情報も充実し、まとめて検索できる
- 中小企業庁 :ミラサポplus
- 中小企業向け支援策を総合的に紹介
- オンラインでの申請手続きにも対応
訪問看護ステーション運営中も利用できる助成金(令和6年度版)

事業立ち上げ後も、継続的な成長とサービス品質の向上に向けて、さまざまな助成金を活用できます。ここでは、令和6年度に利用できる助成金の中から、立ち上げ時や運営中に活用できる制度を、目的別に整理して解説します。
人材育成のための助成金
質の高い訪問看護サービスの提供には、スタッフの専門性向上が不可欠です。以下の制度を活用し、計画的な人材育成を実現しましょう。
キャリアアップ助成金
非正規雇用スタッフのキャリア形成を支援する制度です。スタッフのキャリアアップを支援することで、モチベーション向上や離職防止につながります。
キャリアアップ助成金には以下の5つのコースが用意されています。※金額は中小企業の場合
- 正社員化コース
- 支給額:1人あたり最大80万円
- 対象:非正規から正社員への転換
- 賃金規定等改定コース
- 支給額:1人あたり最大6.5万円
- 対象:非正規スタッフの昇給実施
- 賃金規定等共通化コース
- 支給額:1事業所あたり最大80万円
- 対象:正規・非正規の賃金規定統一
- 賞与・退職金制度導入コース
- 支給額:1事業所あたり最大40万円
- 対象:非正規向け賞与・退職金制度の新設
- 社会保険適用時処遇改善コース
- 支給額:1人あたり最大50万円
- 対象:社会保険適用に伴う処遇改善
詳細については、厚生労働省のウェブサイト(キャリアアップ助成金|厚生労働省)を確認してください。
人材開発支援助成金
スタッフの専門性向上を支援する制度として、以下の4コースが用意されています。
- 人材育成支援コース
- 訓練経費の45%を助成
- 賃金助成:1人1時間あたり760円
- 研修やOJT訓練が対象
- 教育訓練休暇等付与コース
- 最大30万円/人を支給
- 有給の教育訓練休暇導入が対象
- 人への投資促進コース
- 訓練経費の30~60%を助成
- デジタルスキル習得などが対象
- 事業展開等リスキリング支援コース
- 訓練経費の最大80%を助成
- 新規サービス導入に向けた人材育成が対象
詳細については、厚生労働省のウェブサイト(人材開発支援助成金|厚生労働省)を確認してください。
業務効率化をサポートする助成金
質の高いサービス提供とスタッフの負担軽減の両立には、業務効率化が欠かせません。以下の制度を活用し、働きやすい環境づくりを進めましょう。
業務改善助成金
生産性向上と賃金引上げを実現する事業者向けの支援制度です。
- 対象:設備投資費用、賃金アップ
- 支給額:投資費用の3/4(中小企業)~4/5(小規模事業者) ※賃金引上げ額に応じて変動
詳細については、厚生労働省のウェブサイト(業務改善助成金|厚生労働省)で確認してください。
IT導入補助金
業務のデジタル化による効率向上を支援する制度です。
- 通常枠:5~150万円
- デジタル化基盤導入枠:5~350万円
- 活用例:電子カルテ、勤怠管理システムの導入など
詳細については、IT導入補助金の公式サイト( IT導入補助金2025)をご確認ください。
また、全国訪問看護事業協会のウェブサイトでも、雇用・労働分野の助成金情報がわかりやすく整理されていますので、併せてご確認ください。
(参考:全国訪問看護事業協会令和6年度の助成金等の紹介について )
訪問看護ステーションの助成金申請の注意点

助成金は訪問看護ステーションの経営を力強くサポートする一方で、申請時には細心の注意が必要です。ここでは、申請を成功に導くための重要なポイントを解説します。
助成金申請の前に確認すべきこと
助成金申請を成功させるためには、まず、申請前に確認しておくべき基本的な事項を理解することが重要です。
- 制度の理解を深める
- 申請資格の確認
- 支給要件の詳細把握
- 対象となる経費の範囲
- 申請可能な金額の上限
各助成金制度には独自の要件があり、これらを満たしていない場合は申請できません。事前に十分な情報収集を行い、自社の状況と照らし合わせることが重要です。
- 申請期限とスケジュールを把握する
- 申請受付期間
- 書類提出期限
- 審査にかかる期間
- 支給までのスケジュール
申請期限を過ぎると、要件を満たしていても助成金を受けることができません。年間の事業計画に申請スケジュールを組み込み、余裕を持った準備を心がけましょう。
助成金申請をスムーズに進めるために
助成金申請をスムーズに進めるためには、事前の準備と計画的な行動が不可欠です。
- 必要書類の事前準備
- 助成金申請には、事業計画書、経費見積書、開業届など、様々な書類が必要になります。これらの書類を事前に準備しておくと、申請手続きをスムーズに進めることができます。また、書類の内容に不備があると、審査に時間がかかったり、最悪の場合、申請が却下されることもあります。申請書類は、正確に記入し、必要な添付書類をすべて揃えて提出しましょう。
- 最新情報の確認
- 助成金制度は、毎年度内容が変更されることがあります。そのため、申請する際には、必ず最新の情報を確認する必要があります。厚生労働省や各自治体のウェブサイト、専門機関の情報を参考に、最新情報を入手するように心がけましょう。特に、申請要件、支給額、対象となる経費などが変更されることが多いので、注意が必要です。
- 専門家・相談窓口の活用
- 助成金申請は、複雑な手続きや専門的な知識を必要とする場合があります。社会保険労務士などの専門家に相談することも、申請をスムーズに進める上で非常に有効です。
地域の中小企業支援センターや地元の商工会議所も、中小企業や小規模事業者の経営をサポートする重要な機関であり、助成金に関する相談にも対応してくれます。申請書類の作成や手続きをサポートしてくれるため、安心して申請に取り組むことができます。
- 助成金申請は、複雑な手続きや専門的な知識を必要とする場合があります。社会保険労務士などの専門家に相談することも、申請をスムーズに進める上で非常に有効です。
助成金以外に活用できる資金調達方法

訪問看護ステーションの経営基盤を強化するには、助成金と併せて多様な資金調達手段を検討することが賢明です。本章では、効果的な資金調達の選択肢を紹介します。
自己資金と親族・知人からの出資
自己資金は、最も基本的な資金調達方法です。自己資金が多いほど、金融機関からの融資審査でも有利になることがあります。また、親族や知人からの出資も、初期段階での資金調達に有効な手段です。ただし、出資を受ける際には、返済条件や契約内容を明確にしておくことが大切です。
融資制度(銀行融資など)
銀行や信用金庫などの金融機関では、事業者向けの融資制度を提供しています。融資を受けるためには、事業計画書や財務諸表など、様々な書類を提出する必要があります。また、審査には時間がかかるため、余裕を持って申し込む必要があります。融資制度は、事業規模や事業内容に合わせて、様々な種類があります。
(参考:日本政策金融公庫 )
クラウドファンディング
クラウドファンディングは、インターネットを通じて、多くの人から資金を調達する方法です。クラウドファンディングには、購入型、寄付型、投資型など、様々な種類があります。訪問看護ステーションの立ち上げを支援したいという人を集めやすく、共感を得やすいストーリー性のある企画であれば、資金調達を成功させることが可能です。
各資金調達方法には、それぞれ特徴やメリット・デメリットがあります。自身の事業計画や経営方針に合わせて、最適な組み合わせを検討することをお勧めします。
訪問看護ステーションの助成金活用事例

実際の成功事例をもとに、効果的な助成金活用のポイントを紹介します。
助成金活用の実例紹介
①創業補助金180万円を受給した事例

創業時に創業補助金を活用し、180万円の助成金を受給しました。この助成金は、事業所の開設費用、備品購入費用、広告宣伝費などに活用され、自己資金だけでは難しかった事業スタートをスムーズに切ることができました。また、申請にあたっては、助成金関係に詳しい社労士さんに相談し、申請書類の作成や手続きをサポートしてもらいました。
②新任訪問看護師育成支援事業を活用した事例

新任訪問看護師育成支援事業を活用し、新卒看護師の採用を積極的に行いました。この助成金は、新卒看護師の人件費の一部を補助するもので、6ヶ月間1時間あたり1,200円=約126万円受給できます。新卒看護師の採用と育成に力を入れることができました。この助成金を活用することで、看護師の質向上にも繋がり、結果的に訪問看護の質の向上にも貢献しました。
③複数の助成金・補助金を活用した事例

解説まであと100日を切った頃に、事業計画の相談に商工会で相談に乗ってもらいました。国の支援だけでなく、県や自治体独自の制度の情報も教えてもらい、スタートアップ加速化事業補助金、持続化補助金、キャリアアップ助成金、IT導入補助金を受給。正直手続きは大変ですが、社員へ還元し、持続可能な組織にしていくため、経営者として大切な仕事だと感じています。
助成金と融資の効果的な組み合わせ方
助成金と融資は、それぞれ特徴が異なります。助成金は返済不要ですが、審査が厳しいものもあり受給額も限られます。一方、融資はまとまった資金を調達できますが、返済義務があります。
これらの特徴を理解し、助成金を優先的に活用し、不足する資金を融資で補うことで、より安定した資金調達が可能です。
融資を受ける際には、助成金の受給実績をアピールすることで、審査で有利になることもあります。
訪問看護ステーション立ち上げで失敗しないための具体的な方法についてはこちらの記事をご覧ください。
≫【事例から学ぶ】訪問看護ステーション立ち上げで失敗しないための完全ガイド
令和7年度予算で訪問看護ステーション経営を強力サポート

令和7年度の厚生労働省予算案では、社会的課題への取り組みを重点的に支援する新たな制度が盛り込まれています。本章では、訪問看護ステーション経営に関連する支援制度を紹介します。
令和7年度予算の特徴
令和7年度予算では、以下の3つの分野を中心に支援が強化されます。
- 医療・介護の構築: 創薬、DX推進、感染症対策などを強化
- 労働市場改革と人材活躍: 賃上げ支援、リスキリング、多様な人材の活躍を促進
- 包摂的な社会の実現: 地域共生社会、医療アクセスの向上、在宅医療の基盤整備を目指す
新設・拡充される訪問看護ステーション関連の助成金
訪問看護ステーションの経営を支援するため、主に以下の制度が設けられる予定です。
- 人材開発支援助成金: 研修実施など、人材育成を支援(賃金助成拡充)
- 両立支援等助成金: 仕事と育児・介護の両立を支援
- 共働き・共育て推進のための給付: 男性の育休促進、時短勤務の賃金低下を補填
- 訪問看護ステーションの大規模化やサテライト型事業所の設置支援: 在宅医療ニーズに対応するため、大規模化やサテライト型事業所の設置に必要な設備費用などを支援
これらの制度を活用することで、訪問看護ステーションは、人材育成、職場環境改善、業務効率化、在宅医療ニーズへの対応などを進め、より質の高いサービスを提供することが期待できます。
具体的な支援内容や申請方法は、厚生労働省や自治体のウェブサイトで順次公開される予定です。
小規模訪問看護ステーション立ち上げで助成金活用に関するよくある質問

助成金活用に関してよく寄せられる質問にお答えします。
Q:助成金は返済する必要がある?
A:助成金は、国や地方自治体から支給される給付金であり、原則として返済不要です。ただし、助成金には様々な種類があり、中には返済が必要な融資制度もあります。また、助成金によっては、事業計画の進捗状況や成果に応じて、返還を求められる場合もありますので、申請の際には必ず詳細な条件を確認する必要があります。
Q:助成金と補助金の違いは?
A:助成金と補助金の違いを、以下の表にまとめました。
項目 | 助成金 | 補助金 |
目的 | 雇用や労働環境の改善など | 新規事業や設備投資など |
受給の仕組み | 要件を満たせばほぼ受給できる | 先に投資が必要で、新規事業の際にかかった経費の何%分を補助という形で支給 |
主な共通要件例 | 正社員雇用、雇用保険加入など | 各制度による |
管轄 | 厚生労働省 | 経済産業省(中小企業庁) |
受給のしやすさ | 比較的受給しやすい | 審査が厳格 |
訪問看護ステーションでは、助成金の方が受給しやすい傾向にあります。
Q:助成金は必ずもらえる?
A:助成金は、申請すれば必ずもらえるというものではありません。助成金には、それぞれ対象となる事業者や事業内容、申請要件などが定められています。また、申請件数が予算額を上回る場合には、審査の結果、不採択となることもあります。そのため、助成金申請には、事前の準備と計画的な取り組みが不可欠です。
まとめ|助成金を活用して訪問看護ステーションの立ち上げを成功させよう
訪問看護ステーションの立ち上げには様々な課題が立ちはだかりますが、助成金を効果的に活用することで、その多くを乗り越えることができます。
資金面での不安を解消し、理想のステーション運営を実現するためにも、この記事で紹介した助成金制度を積極的に検討してください。経営の安定化と、より質の高い訪問看護サービスの提供に向けて、確かな一歩を踏み出せることでしょう。
最後までお読みくださりありがとうございました。
(この記事は、2025年1月31日時点の情報にもとづいています。)