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小規模訪問看護ステーションのための口腔連携強化加算「超」実践ガイド【2025年最新】

小規模訪問看護ステーションのための口腔連携強化加算「超」実践ガイド【2025年最新】

公開:

2025年5月2日

更新:

2025年5月2日

「口腔連携強化加算? 月50単位(約500円)の加算のために、また手間が増えるのは割に合わない…」。訪問看護ステーション管理者として、そう感じていませんか? 特に人員不足の小規模ステーションでは、もっともな意見です。

しかし、この加算、見方を変えればチャンスかもしれません。単なる収入増だけでなく、利用者の健康維持やスタッフの負担軽減といった、人員不足のステーションが抱える課題解決のヒントが隠れているからです。

この記事では、多忙な小規模訪問看護ステーション管理者のあなたへ、令和6年度新設の口腔連携強化加算について、「面倒…」というホンネに寄り添い、算定できる実践ステップを具体的に解説します。

ぜひ最後まで読み、持続可能なステーション運営にお役立てください。

 

2024年の介護報酬改定全般についてはこちらの記事をご覧ください。

 

≫【知らないと減算⁈】訪問看護の2024年介護報酬改定|リハビリの変更点など徹底的に読み解きます!

 

 

目次


「これ以上、業務は増やせない」…その通りです。しかし、この加算への取り組みは、人員不足という厳しい状況下においても、ステーション運営を支え、質の高いケアを提供し続けるための一助となり得ます。

【口腔連携強化がもたらす好循環 】

  1. ケアの質向上 → ADL・QOL向上 → 看護師のケア負担軽減
    適切な口腔ケアは利用者のADL・QOL向上に繋がり、セルフケア能力が高まれば、日々の介助負担が軽減される可能性があります。
  2. 入院リスク低減 → 業務の効率化
    口腔ケアは誤嚥性肺炎などの予防に重要です。入院が減れば、緊急対応や退院後業務が減り、計画的な人員配置がしやすくなります。
  3. 多職種連携強化 → チームケア進化 → 業務円滑化・精神的負担減
    歯科専門職との連携で質の高いチームケアが実現し、看護師個人の判断の迷いや不安が軽減され、精神的負担も軽くなります。


短期的な手間はあっても、中長期的には利用者の健康、スタッフ負担軽減、ステーション安定経営につながる取り組みです。


まず、基本的なルールを押さえましょう。



訪問看護で、利用者の口腔状態を評価し、その情報を歯科医療機関及び担当ケアマネジャーに提供することなどを評価する、令和6年度新設の介護報酬の加算です。

(出典:日本老年歯科医学会リーフレット「口腔機能連携加算について」



  • 訪問介護
  • 訪問看護*
  • 訪問リハビリテーション*
  • 短期入所生活介護*
  • 短期入所療養介護*
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護*
    (*介護予防サービス含む)




口腔連携強化加算を算定するには、以下の体制を整備した上で、算定要件を満たす必要があります。

  1. 歯科医療機関との連携体制構築と届出
    • 連携先の確保: 歯科訪問診療実績のある歯科医院を探し、歯科医師または歯科衛生士等に相談できる体制を確保(複数可、かかりつけ歯科医OK)。
    • 文書での取り決め: 相談可能な体制(相談日時・方法など)を文書で明確化。
    • 都道府県等への届出: 体制が整ったら、定められた様式で届け出る。詳細は管轄自治体に問い合わせを。
  1. 利用者の口腔状態評価と情報提供
    • 口腔アセスメント実施: 看護職員等が利用者の口腔状態を評価(特別な資格不要)。歯科医師等による専門的な判断が必要と考えられる場合は、その旨も記録。
      • 【主な評価項目】開口、歯・口腔内の汚れ、歯肉状態(腫れ・出血)、左右奥歯での噛み合わせ、むせ、ぶくぶくうがい、食物のため込み・残留、その他(義歯、口臭、乾燥、痛みなど)
    • 情報提供:
      • 評価結果を連携歯科医療機関・ケアマネジャーに文書などで提供(厚労省「別紙様式6」活用推奨。様式はダウンロード可能)
      • FAX、メールなども可(個人情報注意)
      • 必要に応じ主治医(医科)にも連携
    • 【算定上の留意点】
      • 利用者・家族の同意: 情報提供について、事前に同意を得ることが必須です。初回だけでなく、必要に応じて再確認しましょう。
      • 他の加算などとの調整
        • 他事業所で同加算を算定中の利用者は対象外です。
        • 「口腔・栄養スクリーニング加算」「居宅療養管理指導(歯科)」算定中の利用者も対象外となります。




  • 点数: 50単位/月
  • 算定回数: 月1回まで



具体的な導入ステップです。ポイントを絞って解説します。



まずは連携体制を構築します。

  1. 連携候補リストアップ: 地域歯科医師会HP、医療情報ネット(ナビイ)、ケアマネの情報などを参考に。歯科訪問診療実績の確認が重要。
  2. 連携先決定と文書取り交わし: 利用者意向も踏まえ決定。覚書などで連携内容(相談可能な日時、相談方法など)を文書化。
  3. 届出: 「口腔連携強化加算に関する届出書(別紙11)」を都道府県等へ提出。事前に要確認。




連携体制ができたら、利用者の口腔状態を評価します。

  1. 担当者決定・情報共有: ステーション内で役割分担を明確に。
  2. アセスメント実施: 訪問時に口腔状態を観察・評価・聞き取り。
  3. アセスメントシート活用(任意): 効率化と記録のために独自シート作成も有効。評価漏れ防止にも。


評価項目例確認ポイント例
歯科受診状況かかりつけ医有無、最終受診日
口腔内の清潔状態歯・歯茎・舌の汚れ、口臭
歯・歯肉の状態虫歯、揺れ、腫れ・出血、痛み
義歯(入れ歯)有無、適合、清掃状況
口腔乾燥口唇・舌・粘膜の乾燥
口腔機能(嚥下関連含む)開口、左右で噛めるか、むせ、ぶくぶくうがい、食べこぼし・ため込み
セルフケア状況歯磨きなどの実施状況、介助の要否
利用者・家族からの訴え痛み、食事の悩み、困りごと




評価内容は必ず関係者へ共有し、ケアに繋げます。

  1. 情報提供書作成: 評価結果をまとめる(以下の、厚労省「口腔連携強化加算に係る口腔の健康状態の評価及び情報提供書(別紙様式6)」活用が基本)。


  1. 情報提供: 取り決めた方法(FAX、メールなど)で連携歯科・ケアマネへ送付(個人情報に注意)。
  2. フィードバック反映と継続連携: 歯科医師や歯科衛生士からの助言や指導は看護計画に反映。状態変化に応じ定期的に情報提供し、ケアの改善につなげる。



いかに効率よく加算関連業務を行うかが、継続の鍵です。



アセスメントシートや情報提供書(別紙様式6ベースなど)のテンプレートを事前作成・共有し、記録・書類作成時間を短縮。チェックボックス形式の活用も有効。



ステーション内の情報共有や、場合によっては歯科医療機関との連携(要合意・セキュリティ配慮)に活用。

ツールメリット例
ビジネスチャットツール・スタッフ間の迅速な情報共有・相談
・連絡履歴が残る
クラウド型訪問看護ソフト・記録・書類の電子的管理・共有
・書類保管・印刷・FAX手間削減
・他機能との連携



口腔連携強化加算は「手間」だけではありません。利用者の「食べる」「話す」喜びを守り、QOLを高める、訪問看護の重要な役割を後押しするものです。

歯科連携による専門的視点はケアの質を向上させ、利用者のADL維持、リスク低減に繋がります。これは巡り巡ってスタッフの負担軽減、ステーションの経営安定化にも貢献します。

本記事のステップやヒントが、導入を検討される際の参考になれば幸いです。まずはできることから始め、地域との連携を深めて、チームで利用者の豊かな生活を支えていきましょう。

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