包括型訪問看護療養費とは?令和8年度改定で新設された背景

まずチェック!あなたのステーションは「包括型」の対象?
包括型訪問看護療養費は、すべての建物訪問に適用されるわけではありません。また単に施設併設・隣接していれば対象になるわけではありません。重要なポイントは、「建物」×「利用者」×「回数」の3つの条件が重なったときのみ算定される点です。
- 建物の条件: 高齢者向け住まい等(サ高住、有料老人ホームなど)に併設・隣接している
- 利用者の条件: 当該建物に居住しており、かつ以下のいずれかに該当する重症者
- 厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7:末期がん、難病等)特別な管理を要する状態(別表第8:人工呼吸器、気管カニューレ等)
- 特別訪問看護指示書に基づき指定訪問看護を受けている
- 実施の条件: 1日に2回以上の訪問看護を行う場合
つまり、地域を広く回る独立型ステーションにとっては、主要な算定項目ではなく、特定の施設内ケアに特化した報酬体系と言えます。
制度新設の狙い:施設居住者への効率的・頻回な訪問の適正化
これまで、サ高住などの建物内にステーションを構えるケースでは、移動時間をかけずに、1日に何度も訪問しその都度算定することが可能でした。今回の改定では、そうした移動の効率性を報酬に反映(適正化)する一方で、24時間体制で密度の高い看護を提供する実態を「1日単位の包括報酬」で適切に評価する狙いがあります。
訪問時間と人数による定額報酬のしくみ
包括型を算定する場合の具体的な点数は、建物の居住者数と合計訪問時間によって、以下の表のように区分されています。
| 単一建物居住利用者の人数 | 30分-60分未満 (イ) | 60分-90分未満 (ロ) | 90分以上 (ハ) | 90分以上(加算) (ニ) 別に厚生労働大臣が定める場合※ |
| 20人未満 | 7,010円 | 11,010円 | 14,010円 | 15,510円 |
|---|---|---|---|---|
| 20人以上50人未満 | 6,310円 | 9,910円 | 13,730円 | 15,200円 |
| 50人以上 | 5,960円 | 9,360円 | 13,450円 | 14,890円 |
※(ニ)別に厚生労働大臣が定める場合
- 包括型訪問看護療養費に規定する厚生労働大臣が定める者に、訪問看護ステーションが緊急時において即時に適切な指定訪問看護が実施できる体制がある
- 当該訪問看護ステーションが指定訪問看護を実施し、包括型訪問看護療養費を算定する利用者全員における訪問看護の実施時間の1日あたりの平均が120分以上
包括型訪問看護療養費算定の施設基準とサービス提供体制

包括型の算定には、従来の基本療養費よりも厳しい基準と記録が求められます。
拠点と建物の定義——「1ステーション1か所」の原則
包括型訪問看護療養費を算定できるのは、以下の要件を満たすステーションです。
- 拠点の指定: 訪問看護ステーションは、包括型を算定する建物として、高齢者向け住まい等の建物を1か所のみ指定できる(複数拠点は不可)
- サテライトの扱い: サテライト事業所単独で併設・隣接している場合には届出ができない。本体のステーションが物理的にその建物に拠点を置いている必要がある
サービスの実施ルール——管理者の責任と資格の制限
質の高いケアを担保するため、提供方法にも以下の詳細なルールが設定されています。
- 日中・夜間のセット訪問義務: 日中および夜間帯(午後6時〜午前8時)に、それぞれ少なくとも1回ずつの実訪問が必要
- 頻回訪問の基準: 1日の合計実施時間が60分以上の場合は、1日当たり3回以上の訪問が必須
- 准看護師の制限: 1日に少なくとも1回は、看護職員(准看護師を除く。看護師、保健師、助産師)による訪問を含まなければならない
- 管理者のコミットメント: 責任者(管理者等)は、訪問看護計画書について1日に1回以上の確認を行い、必要に応じて見直しを行うことが義務付けられている
夜間帯の職員配置と待機体制
特に高い点数区分(90分以上)を算定する場合、以下のとおり夜間の職員配置が具体的に数値化されています。
| 90分以上の区分を算定する利用者数 | 必要となる夜間看護職員数(常時) | 勤務場所の要件 |
| 30名以下 | 1名以上 | 当該建物内での対応・待機 |
|---|---|---|
| 31名〜80名 | 2名以上 | 当該建物内での対応・待機 |
| 81名以上 | 3名以上 (50名増すごとに+1名) | 当該建物内での対応・待機 |
- 待機場所の要件: 90分以上の区分(ハ・ニ)を算定する場合、24時間体制で利用者等からの連絡・相談を当該建物内で受けられる体制が必須(90分未満の区分では、建物内で対応できることが望ましいとされている)
- 兼務の制限: 夜間対応職員は、建物内の包括型を算定しない利用者への対応は可能だが、建物外の利用者への訪問看護との兼務はできない
実務担当者が知っておくべき「包括」の範囲(併算定不可項目)

包括型訪問看護療養費を算定する日は、これまで個別に算定していた多くの加算が「丸ごと含まれる(包括される)」ことになります。何が取れて、何が取れないのかを整理しましょう。
包括範囲に含まれるもの(別に算定できない項目)
以下の項目は包括型訪問看護療養費に含まれるため、別途算定することはできません。
- 訪問看護基本療養費(Ⅰ)、訪問看護基本療養費(Ⅱ)のハを除く
- 精神科訪問看護基本療養費
- 難病等複数回訪問加算
- 特別地域訪問看護加算、長時間訪問看護加算
- 複数名訪問看護加算、複数名精神科訪問看護加算
- 夜間・早朝訪問看護加算、深夜訪問看護加算
- 訪問看護管理療養費、24時間対応体制加算(区分ニでは緊急訪問看護加算も含む)
包括型とは別に算定できる項目(例)
以下の項目は包括型訪問看護療養費とは別に算定することができます。
- 緊急訪問看護加算(区分イ・ロ・ハを算定し、要件を満たす場合)
- 訪問看護物価対応料2(1日につき20円〜40円)
包括型訪問看護療養費の運営ガバナンスと地域連携・処遇改善の新ルール

今回の改定では、組織としてのガバナンス(統治)や地域とのつながりも強く求められます。
医療安全・衛生管理の徹底
包括型訪問看護療養費を算定するステーションは、以下の医療安全・衛生管理体制を整備する必要があります。
- 安全指針の文書化: 事故発生時の対応方法等を文書化した指針の整備
- アクシデント報告体制: 事故やインシデントの報告制度、およびその分析を通した改善策の実施体制
- 職員研修: 安全管理体制確保のための職員研修を年2回程度実施すること
- 衛生管理: 高齢者向け住まい等の設置者・運営者と連携し、居住スペースの衛生環境を維持すること
地域の医療機関等との連携実績
地域包括ケアの一翼を担うため、以下の実績も施設基準となります。
- 連携責任者の配置: 地域の保険医療機関や他ステーションとの連携を担当する責任者を配置
- 合同研修の実施: 直近1年間に、他機関と合同で実施する研修や事例検討会等を2回以上実施
- 情報提供の実績: 地域の関係機関に対し、自所の訪問看護に関する情報提供を行った実績
看護職員の負担軽減と処遇改善
看護師を守るための以下の取り組みも求められます。
- 改善責任者の配置: 勤務状況を把握し、改善を提言するための責任者を配置
- 多職種連携の推進: 役割分担の状況を把握・改善するための責任者を配置
- 改善計画の策定: 具体的な取り組み内容と目標達成年次を含めた「看護職員の負担軽減計画」を作成し、職員に周知徹底すること
包括型訪問看護療養費と独立型訪問看護ステーションへの影響

ここでは、包括型訪問看護療養費が独立型訪問看護ステーションにどのような影響を与えるのかを解説します。
包括型訪問看護療養費と基本療養費(Ⅱ)の運営モデルの違い
地域を広く支える独立型ステーションと、施設特化型の包括型ステーション。その立ち位置の違いを再確認しましょう。
| 比較項目 | 包括型訪問看護療養費(施設特化) | 訪問看護基本療養費(Ⅱ)(地域密着) |
| 目指す姿 | 施設内での高密度・頻回なケア | 地域の多様な生活を支える個別ケア |
|---|---|---|
| 報酬の仕組み | 1日定額(効率性と重症度評価) | 1回ごと(専門的な看護の積み上げ) |
| 人員配置 | 建物内常駐、夜間複数配置など | 地域を奔走する機動力と個別対応 |
このように、包括型は、大規模施設などにおいて移動の効率性を背景に行われていた頻回かつ短時間の訪問を適正化し、1日単位の包括評価という枠組みで看護の質を担保する仕組みです。それに対し、従来の出来高制(基本療養費)は、一回の訪問ごとの丁寧な看護を適切に評価する、独立型ステーションの価値を支える制度です。
独立型も要注意!「基本療養費(Ⅱ)」の新・細分化ルール
実は、施設併設ではない独立型ステーションであっても、集合住宅へ訪問している場合は、改定の影響を受ける可能性があります。今回の改定では、包括型を算定しない場合であっても、従来の「基本療養費(Ⅱ)」そのものが、訪問日数や人数に応じて細かく減算される(細分化)ことになりました。
知らないうちに同一建物居住者の報酬単価が下がっていた……という事態を防ぐためにも、この「人数・日数による細分化」のルールは正確に把握しておきましょう。
▼あわせて読みたい:同一建物の算定ルールが大きく見直される「難病加算」の解説はこちら
【2026年度改定】難病等複数回訪問加算の要件ガイド|同一建物の細分化と管理のポイント
包括型訪問看護療養費における「記録書Ⅲ」と電子化への対応

包括型において、事務負担の要因の一つとなるのが新たな訪問看護記録書Ⅲと電子化です。
訪問看護記録書Ⅲとは
包括型を算定する場合、従来の訪問看護記録書(Ⅰ・Ⅱ)に加え、新たに訪問看護記録書Ⅲを1日ごとに作成する必要があります。

このように、1日の合計訪問時間や、各訪問の開始・終了時刻を分単位で時系列に記載する専用様式です。
電子記録保存の義務化
包括型を算定する場合、計画書や記録書(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)はすべて電子的方法によって記録し保存しなければなりません。
※通常の基本療養費のみを算定する利用者については、現時点では紙の記録も認められています。
これらの複雑な集計や夜間配置の管理をミスなく行うには、システム(訪問看護ソフト)の活用が現実的な選択肢です。
📢 2026年度改定のパートナーに「えがおDE看護」
複雑な算定・記録業務を効率化するのが、訪問看護支援システム えがおDE看護 です。
- 改定に完全対応した自動集計: 訪問看護記録書Ⅲに基づく分単位の集計や、同一建物居住者数に応じた複雑な報酬計算もシステムが自動で行います。
- 記録の質と信頼性の向上: 正確な記録を電子化することで、医師やケアマネへの報告が迅速かつ正確になります。
- スタッフの定着を支える: 事務作業の不安をITで取り除くことで、看護師の心理的な負担を軽減し、看護の本質に集中できる環境をつくります。
包括型訪問看護療養費に関するQ&A

管理者が実務上で直面する疑問についてお答えします。
Q:同じ日に、包括型対象者と非対象者が混ざる場合はどうする?
A: 包括型対象者は「1日の合計時間」で、非対象者は「訪問看護基本療養費(Ⅱ)」で算定します。包括届出済みの建物において、非対象者に基本療養費(Ⅱ)を算定できるのは「1日の訪問回数が1回の場合のみ」です。対象者と非対象者で算定ルールが異なるため、スタッフの巡回順序や実績管理に注意が必要です。
Q:施設が包括型を届けている場合、外部ステーションは入れない?
A: いいえ、入れます。利用者の希望や専門的なケアが必要な場合、届出外のステーションも従来通り「基本療養費(Ⅱ)」等で介入が可能です(1日1か所の原則は維持されます)。
Q:24時間対応体制の「夜間訪問」は必ず行わなければならない?
A:はい。包括型を算定する日は、日中と夜間(午後6時〜午前8時)のそれぞれに少なくとも1回以上の訪問が必要です。このセット訪問が成立しない日は、包括型ではなく通常の基本療養費での算定となります。
まとめ:令和8年6月1日施行に向けた管理者のチェックリスト

包括型訪問看護療養費は、施設併設型における効率性を適正化しつつ、重症者対応の質を高めるための大きな転換点です。
以下にチェックリストをまとめました。
- [ ] 拠点建物の指定: 自社のメイン拠点が建物併設か。サテライト単独ではないか。
- [ ] 夜間配置のシミュレーション: 利用者数に応じた看護職員の確保と、建物内待機の部屋の準備。
- [ ] 電子化の準備: 記録書Ⅲへの対応および電子保存ルールの徹底。
- [ ] ガバナンスの整備: 安全管理指針の作成、地域連携責任者の配置、負担軽減計画の策定。
地域包括ケアシステムを担う訪問看護ステーションとして、包括型訪問看護療養費の動向を注視し、自社のサービス品質向上に努めていきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。





