難病等複数回訪問加算とは?1日2回以上の訪問を評価する基本ルール

難病等複数回訪問加算は、医療ニーズの高い利用者に対し、1日に2回以上の訪問看護を行った場合に算定できる、医療保険の訪問看護基本療養費における加算です。
2026年度改定でも、対象となる疾病や状態、1日の回数制限などの基本骨格は維持されます。
「別表第七・第八」および「特別指示書」に該当する対象者
以下のいずれかに該当する利用者が対象です。
- 別表第七に掲げる疾病等の者
末期がん、ALS、脊髄小脳変性症、パーキンソン病(ヤール3以上かつ生活機能障害度Ⅱ度以上)など。進行性疾患で頻回なケアが必要な方が対象です。 - 別表第八に掲げる者
在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者(実務上は、週3日以上の点滴管理が必要なケースが中心)、気管カニューレ挿入、真皮を超える褥瘡(床ずれ)、人工呼吸器の使用状態など。疾患名ではなく管理の重症度で判断されます。 - 特別訪問看護指示書が交付されている期間
急性増悪等で頻回訪問が必要と認められ、特指示が交付されている(最長14日間)利用者も対象です。
指示書の病名と別表第七・第八の照らし合わせは、算定の基本となるため慎重に行いましょう。
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基本となる「1日2回」と「3回以上」の点数体系
改定の複雑なルールを確認する前に、まずはベースとなる点数体系を押さえておきましょう。
1日に何回の予定訪問を行ったかによって、以下の2区分に分かれています(※以下は同一建物内の算定者が1〜2人の場合の基本点数です)。
- 1日2回訪問した場合:4,500円/日
- 1日3回以上訪問した場合:8,000円/日
このように、「2回」か「3回以上」かで金額が大きく変わるのが本加算の基本です。
【2026年改定】同一建物内での算定人数による評価の細分化

2026年度改定の最大の変更点は、同一建物内で加算を算定する人数に応じた評価の細分化です。
集合住宅などへの訪問効率を考慮し、同一建物内での算定人数が多いほど加算額が段階的に低くなる仕組みが強化されます。
これまでは3人以上で一律でしたが、10人、20人、50人など段階的に点数が調整されるようになります。

「1日2回」の評価体系
1日2回訪問した場合の人数区分ごとの所定額は以下のとおりです。
| 同一日に算定する同一建物内の人数 | 所定額 |
| 1人又は2人 | 4,500円 |
| 3人以上9人以下 | 4,000円 |
| 10人以上19人以下 | 3,700円 |
| 20人以上49人以下 | 3,500円 |
| 50人以上 | 3,300円 |
「1日3回以上」の評価体系
1日3回以上の算定では、同一建物の人数に加え、1月当たりの算定日数(20日まで/21日目以降)によって細かく点数が変動します。月の後半になるほど点数が調整される点に注意が必要です。
| 同一日に算定する同一建物内の人数 | 1月当たりの算定日数 | 所定額 |
|---|---|---|
| 1〜2人 | (日数要件なし) | 8,000円 |
| 3〜9人 | 20日まで | 7,200円 |
| 21日目以降 | 6,900円 | |
| 10〜19人 | 20日まで | 6,300円 |
| 21日目以降 | 5,200円 | |
| 20〜49人 | 20日まで | 4,800円 |
| 21日目以降 | 3,500円 | |
| 50人以上 | 20日まで | 4,100円 |
| 21日目以降 | 3,000円 |
たとえば10人〜20人規模のマンションや施設であっても、月21日目以降は点数が段階的に下がります。管理者は、利用者の「居住実態」と「その日の算定人数」、さらに「建物ごとの月間累計日数」を正確に把握し、請求へ反映させる必要があります。
「同一敷地内」も含まれる同一建物の定義範囲
今回の改定では、評価の適正化に伴い同一建物の定義がより明確化されます。
同一地番の敷地内にある建物や、公道に出ずに一体的に行き来できる敷地内の別棟は、同一建物居住者として扱われる場合があります。一方で、広大な敷地に建物が点在し、移動時間が明らかに異なるケースなどは含まれません。敷地内の状況を改めて確認しておくことが不可欠です。
1日3回以上の訪問で注意すべき月21日目以降の評価区分
同一建物内に3人以上の利用者がいる場合、月21日目以降は点数がさらに低くなります。月の後半になるほど評価が下がるため、正確なカレンダー管理が欠かせません。
月21日目以降の区分は、当月にその建物で該当する算定(1日3回以上など)を行った日数管理が重要になります。利用者単位の回数管理だけでなく、建物単位の算定日数もあわせて把握する必要があります。特に、10名〜20名規模の施設であっても、日によって変動する算定人数や、建物ごとの累計日数を手作業で管理するのは限界に近く、算定ミスがそのまま経営リスクに直結します。
2026年度新設の包括型訪問看護療養費と難病等複数回訪問加算の関係

2026年度の報酬改定では、頻回な訪問看護を包括的に評価する包括型訪問看護療養費が新設されます。
実務において管理者が特に注意すべき点は、同一建物内で「従来の加算(出来高制)」の対象者と、「新設された包括型(定額制)」の対象者が混在するケースです。
自ステーションが担当する同一建物内の利用者に、1人でも「包括型(定額制)」の対象者がいる場合、人数区分の計算が従来よりも複雑になります。
合算ルールの仕組みと返戻リスク
算定ルールのポイントは以下のとおりです。
- 包括型を算定する日は、難病等複数回訪問加算を重ねて算定することはできない
- 人数区分を決定する際は、自ステーションが担当する「難病等複数回訪問加算の対象者」と「包括型の対象者」を合算してカウントする
たとえば、同一建物内で合計10人の難病等複数回訪問加算の対象利用者を担当しているとします。
そのうち5人が新しい「包括型(定額制)」に切り替わった場合、残り5人の「難病等複数回訪問加算」を請求する際の人数区分は、「3〜9人」ではなく、「10人以上」の区分で計算しなければなりません。
少ない人数区分(高い単価)で請求してしまうと、返戻の対象となります。
「精神科複数回訪問加算」の対象者も合算対象に含まれる点に注意
さらに留意すべきルールとして、同一建物内に「精神科複数回訪問加算」の算定対象者がいる場合、その人数も「難病等複数回訪問加算」の人数に足し合わせて計算する必要があります。
日々の業務において、「その建物内に合計で何人の対象者がいるか」「それぞれが包括型、難病の加算、精神科の加算のどの対象か」を正確に把握し続ける必要があります。
これらの算定要件は手作業や紙ベースでの管理が限界に近いほど複雑化しており、目視での確認だけでは請求ミスのリスクが非常に高くなる変更点と言えます。
訪問看護全般で義務化された訪問時刻の記録と実地指導対策

2026年度(令和8年度)から、すべての訪問看護において実際の訪問開始時刻と終了時刻の記録が義務化されます。これにより、難病等複数回訪問加算の算定根拠となる「2時間の間隔」が厳格に判定されるようになります。
1日に複数回の訪問を算定する場合、原則として「前回の終了時刻から、次回の開始時刻までが2時間以上空いていること」が算定のための必須条件です。
- 2時間以上の間隔がある:別々の訪問としてカウント(加算が取れる)
- 2時間未満の間隔:原則として合算して1回の訪問とみなす(加算は取れない)
これまでは曖昧になりがちだった時間が、分単位の記録によって明確になります。もし記録上の間隔が「1時間59分」であれば、それだけで加算そのものが不成立となり、返戻や実地指導での指摘対象となるリスクが高いです。
人的な判定ミスを防ぎ経営を守る訪問看護ソフトの活用メリット
えがおDE看護のような訪問看護専用ソフトなら、今回解説した複雑な計算をすべて自動で処理します。
- 自動判定:その日の算定人数や、累計日数が21日を超えたかどうかをリアルタイムで反映。
- スマホ記録:開始・終了時刻をタップするだけで、レセプトと自動で整合性が取れます。
「今日も計算を間違えていないか?」という不安から解放されることで、管理者は本来の役割である現場の管理やケアの質の向上に全力を注げるようになります。
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難病等複数回訪問加算に関するよくある質問

Q1:精神科訪問看護でも、難病等複数回訪問加算を算定できますか?
A:精神科訪問看護基本療養費を算定する場合は、原則として「精神科複数回訪問加算」を検討します。難病等複数回訪問加算との整理は、疾患名や主治医の状況によって細かく分かれるため、最新の告示・通知をセットで確認するようにしましょう。
Q2:1回の訪問が20分未満になった場合、加算はどうなりますか?
A:2026年度改定では訪問看護は30分が標準という考え方が一段と強まりました。20分未満の訪問は、原則として基本療養費も加算も算定できません。たとえ2時間空けて再訪問したとしても、1回ごとの質が問われるため、分単位の正確な記録が必要不可欠です。
まとめ

今回の2026年度診療報酬改定は、重症者を受け入れているステーションにとって、管理の難易度が上がります。
同じ建物に何人いるか、今月は何度目の算入か、開始・終了の時間は正しいか……。これらを手作業で追い続けるのは、本来の看護業務を圧迫するだけでなく、経営的なリスクそのものです。
しかし、この複雑なルールは、医療ニーズの高い方々への手厚い支援を国が求めている証でもあります。「えがおDE看護」のようなICTツールを賢く味方につけ、事務負担を最小限に抑えることで、スタッフが安心して目の前の利用者さんの看護に専念できる環境を整えていきましょう。





