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訪問看護DX加算50円の価値とは?小規模ステーション管理者が知るべき導入メリットと要件

訪問看護DX加算50円の価値とは?小規模ステーション管理者が知るべき導入メリットと要件

公開:

2025年6月19日

更新:

2025年6月19日

「DX加算とか、なんだか難しそう…」
「うちみたいな小さなステーションには関係ないのでは?」
日々、ケアやスタッフのマネジメントに追われる管理者にとって、新しい制度対応やIT化は負担に感じられるかもしれません。DX(デジタルトランスフォーメーション)と聞いても、どこから手をつければ良いのか途方に暮れてしまうこともあるでしょう。しかし、国が推進する医療DXの流れは、訪問看護ステーションも無関係ではありません。

2024年度に新設された「訪問看護医療DX情報活用加算」は、小規模ステーションにとっても、身近なところからDXを進め、業務改善や連携強化につなげるための一つのきっかけとなり得ます。

この記事では、加算の基本から算定要件、そして導入のメリットまでをわかりやすく解説します。

目次

訪問看護医療DX情報活用加算とは?


この加算は、訪問看護ステーションがオンライン資格確認等システムを通じて利用者の診療情報や薬剤情報を取得し、それを活用して質の高い訪問看護を提供することを評価するものです。

令和6年度(2024年度)診療報酬改定で新設され、月1回、利用者一人あたり50円を算定できます。

国が訪問看護でのDXや情報活用を推進する背景には、高齢化や医療ニーズの多様化があります。多職種間の情報連携を円滑にし、個々に最適化されたケア提供の必要性が高まっています。

オンライン資格確認等システムの活用で、訪問看護ステーションは利用者の同意のもと、以下の情報を取得・活用し、より安全で効果的な看護を提供できます。

  • 薬剤情報: 最新の処方情報を把握し、重複投与や相互作用リスクを回避
  • 特定健診等情報: 過去の情報を参照し、生活習慣病の重症化予防や健康管理指導に活用
  • 診療情報: 他院での受診歴や検査結果を確認し、多角的なアセスメントを実施


加算だけじゃない!小規模ステーションでも始めやすいDXのヒント


「DX」と聞くと大掛かりなシステム導入を想像しがちですが、小規模ステーションだからこそ、まずは身近な課題解決から費用を抑えてスモールスタートを切ることができます。

以下に、訪問看護ステーションで比較的導入しやすく、効果を実感しやすいDXの例をいくつかご紹介します。これらは直接的に今回のDX加算の算定要件ではありませんが、ステーション全体の業務効率化や情報共有の円滑化に繋がり、結果としてより質の高いケア提供体制の基盤となります。

  • 記録・情報共有の効率化:
    • タブレット端末と訪問看護ソフト: 手書き記録からの解放で時間短縮と読み間違いの防止
    • クラウド型情報共有ツール: スタッフ間のスケジュール共有や利用者情報の安全な共有。Google WorkspaceやMicrosoft 365などのグループウェアには、カレンダー、ファイル共有、チャット機能などが含まれており、小規模チームでも活用しやすい
  • コミュニケーションの円滑化:
    • ビジネスチャットツール: 迅速な連絡や申し送り事項の伝達漏れ防止。LINE WORKSやSlack、Microsoft Teamsなどが代表的
    • Web会議システム: 多職種連携会議やスタッフ研修での活用。ZoomやGoogle Meet、Microsoft Teamsなどが無料で利用できる範囲も広い
  • 事務作業の効率化:
    • 勤怠管理システム: 出退勤の自動化でミスと手間を削減。無料プランや小規模向けプランを提供しているサービスも。
    • 訪問看護ソフト: 多職種連携会議やスタッフ研修での活用


一度に全て導入する必要はありません。まずはステーションの課題を洗い出し、「一番困っていること」「少しでも楽になりそうなこと」から着手し、少しずつ試していくのが成功のコツです。

DX加算の算定要件と施設基準


この加算を算定するには、以下の要件を満たし、地方厚生局長等への届出が必要です。



加算算定の基本ルール「算定要件」のポイントは以下です。

  • 対象者: 訪問看護ステーションの看護師等(准看護師除く)
  • 実施内容:
    1. 電子資格確認(オンライン資格確認)で利用者の診療・薬剤情報を取得
    2. 取得情報を踏まえ、指定訪問看護の計画的な管理を行う
  • 算定: 月1回50円を加算

(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【在宅(在宅医療、訪問看護)】)p.38」


💡オンライン資格確認システムの導入に加え、情報取得とケア計画への活用が求められます。




加算算定には、オンライン資格確認システムを適切に運用できる体制が必要です。

必要なこと具体的な内容
オンライン資格確認を行う体制マイナンバーカードを健康保険証として利用できる仕組みを整備
機器導入・顔認証付きカードリーダー
・対応PC/タブレット
・ネット環境
運用開始日の登録医療機関等向けポータルサイトで運用開始日を登録
情報取得・活用の体制看護師等がオンライン資格確認から利用者情報を取得・活用
利用者の同意情報取得・活用前に利用者から同意を得る


これらの準備には費用と期間がかかるため、早期計画が重要です。



ステーションが医療DXを推進し質の高い訪問看護を提供する体制であることを、事業所内掲示とウェブサイト掲載で「見える化」します。

事業所内への掲示例

  • 情報活用の明示: 「当ステーションは、オンライン資格確認等システムで取得した情報を活用し、質の高い訪問看護を提供します。」
  • 医療DX推進の姿勢: 「当ステーションは、マイナンバーカード(マイナ保険証)の利用を促進するなど、医療DXを通じ質の高い医療提供に努めます。」


ウェブサイトへの掲載
原則、上記と同様の内容を公式ウェブサイトに掲載します。

🗒️公式ウェブサイトがない場合

すぐにウェブサイトを作成するのが難しい場合は、まず管轄の地方厚生局に相談してみましょう。地域や状況によっては、対応について指示を受けられる場合があります。将来的には、ステーションの情報を発信し、信頼性を高めるためにも、簡単なものでも良いのでウェブサイトを持つことを検討する良い機会かもしれません。無料または低コストで作成できるホームページ作成サービスも多数あります。




要件・基準を満たした上で管轄の地方厚生(支)局長等へ届出を行いましょう。

なお、掲示に関する経過措置は2025年5月末で終了となっています。

小規模ステーションがDX加算に取り組むメリット


50円/月の加算額は小さく感じられるかもしれませんが、それ以上に以下のようなメリットが期待できます。

  • 業務効率化とスタッフ負担軽減:
    • オンライン資格確認で保険情報の確認が迅速・正確に
    • 薬剤情報や診療情報の共有で、情報収集の手間が軽減
  • 情報共有の円滑化とケアの質向上:
    • 医師や薬剤師との情報連携がスムーズになり、より的確なケアを提供
    • 正確な薬剤情報で副作用リスク低減
    • 多職種連携が強化され、利用者さん中心のチームケアが向上
  • BCP(事業継続計画)対策にも:
    • 災害時等でも、クラウド上で情報が保全されていれば、情報アクセスが比較的容易


DX加算取得に向けたステップとポイント


  1. オンライン資格確認システムの導入準備:
    • システム事業者を選定し、導入を進める(顔認証付きカードリーダー等が必要)
    • 医療機関等向けポータルサイトでの運用開始日の登録も忘れずに
  2. 掲示物・ウェブサイト掲載内容の準備:
    • 施設基準で求められる内容を準備し、掲示・掲載
  3. スタッフへの説明と協力体制づくり:
    • 加算の目的やメリット、操作方法などをスタッフに丁寧に説明
    • 利用者への説明と同意取得(オンライン資格確認の運用上)もスムーズに行えるように準備
  4. 情報セキュリティ対策の徹底:
    • 個人情報を取り扱うため、セキュリティ対策は万全に
  5. 活用できる補助金・支援制度の確認:
    • 国や自治体の補助金制度の活用を検討


※オンライン請求・オンライン資格確認の対応手順や活用できる補助金についてはこちらの記事で詳しく解説しています。 👉【まだ間に合う!】訪問看護のオンライン請求・オンライン資格確認の義務化 | 対応や補助金申請期限などをわかりやすく解説 | 株式会社カーネル


まとめ


「訪問看護医療DX情報活用加算」は、小規模ステーションにとっても、業務改善やケアの質向上につながる重要な取り組みです。

まずはオンライン資格確認システムの導入から着実に進め、算定要件をクリアしていきましょう。この加算への取り組みを一つのステップとして、できることからDX化を進めてみてはいかがでしょうか。

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