2026年度診療報酬改定の概要とスケジュール

2026年度改定は、前回に続き医療DXと処遇改善(賃上げ)が大きな柱となります。
全体改定率は +3.09%(うち賃上げ分+ 1.70%)と、前回より手厚い改定となる予定です。6月施行となるスケジュールと、具体的な数字を解説します。
改定率+3.09%の意味:医療現場への投資
今回の改定率は、全体で +3.09% です。
この数字は、過去の改定と比較しても異例の高さです。前回(2024年度)の医療改定率は+0.88%でしたので、今回はその約3.5倍という規模です。
その内訳は以下のとおりです。
| 項目 | 改定率 | 意味 |
| 全体改定率 | +3.09% | 診療報酬全体のプラス幅 |
|---|---|---|
| 賃上げ対応分 | +1.70% | 医療従事者(看護師等)のベアアップに限定した予算 |
これは、物価高に負けない賃上げを医療現場でも実現するのが目的です。
介護職員処遇改善加算で介護側の賃上げが先行していましたが、2026年は医療保険側でも本格的な賃上げが行われます。医療依存度の高い利用者が多いステーションは、この影響を大きくに受けることになります。
施行はいつから?スケジュールの変更点(6月施行)

2024年改定同様、施行時期は 6月1日 です。
主なスケジュールは以下のとおりです。
| 時期 | アクション |
| 〜2026年3月 | 詳細情報の発表(告示・通知) ここで具体的な点数が確定します。 |
| 4月〜5月 | 準備期間 ・レセコンのアップデート確認 ・スタッフへの新ルール周知 ・利用者さんへの説明準備 |
| 6月1日 | 改定施行(新点数スタート) |
3月に点数が発表されてから施行までにおおよそ2ヶ月の準備期間があります。
この期間を有効に活用し、後述するDX加算の要件確認や、賃上げ計画の策定に充てることが、6月以降の安定経営のカギとなります。
訪問看護における2026年改定の主要な3つの論点と解決策

ここで、特に影響が大きい変更点を3つのポイントに絞り、現場で具体的にどう動くべきかを解説します。
1. 物価高騰と賃上げ対応(支援事業とベースアップ)
スタッフの給与アップと物価高騰への対応策として、以下の2つの支援が用意されています。
- 賃上げ・物価高騰支援事業(即効性)
- 内容 : 訪問看護ステーションに対し、施設単位で給付金が支給されます。
- 金額 : 1施設あたり 22.8万円(※病院・診療所とは金額が異なります)。
- 特徴 : 診療報酬とは別の補助金扱いのため、申請が必要です。
- ベースアップ評価料の拡充(継続性)
- 内容 : 訪問看護ベースアップ評価料の要件が見直されます。
- 変更点 : +1.70%の改定枠を活用し、対象職種の拡大や計算式の簡素化が議論されています(1/30時点案)。これにより、これまで算定をためらっていたステーションでも導入しやすくなる見込みです。
2. 医療DXの推進(新設:訪問看護医療情報連携加算)
今回の目玉の一つが、訪問看護医療情報連携加算の新設です。
これまで、医師やケアマネジャーへのICT(チャットや電子カルテ共有機能)を使った連絡は、効率的であるものの点数にはならない(持ち出し)業務でした。ここに評価がつきます。
| 項目 | 旧来の評価 | 新設(2026年〜) |
| ICT連携 | 評価なし(業務効率化のみ) | 「訪問看護医療情報連携加算」として算定可能 |
|---|---|---|
| 要件(案) | – | 医療情報連携基盤(MCSやLINE WORKSなど)を用いて、医師・薬局等と情報を共有すること。タブレット端末等の整備。 |
【新設】訪問看護遠隔診療補助料(D to P with N)が登場
これまでは、訪問看護師が利用者の自宅でオンライン診療の補助(D to P with N)を行っても、「点数が取れない(医師側の点数に含まれるため、持ち出しになる)」という大きな課題がありました。
今回の改定で、「訪問看護ステーションが直接算定できる点数」として『訪問看護遠隔診療補助料』が新設される見込みです。
- 対象 : 訪問看護指示書の有効期間内に、医師の指示を受けて緊急に訪問し、オンライン診療の補助を行った場合(定期的な訪問以外)。
- メリット : 医師の手足となって動く看護師の労力が、正当に評価されます。「ドクターは画面越し、看護師は現場」という新しい訪問診療の形が、ビジネスとしても成立するようになります。
- 点数 : 現時点では未定(詳細な点数は3月発表)。
「訪問看護師が、医師の目となり手となる」新しい業務スタイルが、制度として正式に認められました。
また、オンライン資格確認の導入も義務化が進んでいます。
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オンライン資格確認の導入手順や補助金については、こちらの記事で図解付きで解説しています。
▶ 訪問看護のオンライン請求・オンライン資格確認の義務化 | 対応や補助金申請期限などをわかりやすく解説
3. 質の高い在宅医療と精神科訪問看護(Type 4の新設)
精神科訪問看護には、評価と適正化のメリハリが鮮明に打ち出されました。
1. 【評価】機能強化型訪問看護管理療養費4(新設)
- これまで「機能強化型」は「看取り実績」等が必須で、精神科特化型ステーションには高いハードルでした。
- 今回、精神科に特化した機能強化型(Type 4)が新設されます。現時点で判明している主な要件(案)は以下のとおりです。
- 人員 : 常勤の看護職員が4名以上。
- 体制 : 24時間対応体制の届け出。
- 実績 : 精神障害を有する者(重点的な支援を要する者)への訪問看護実積(※具体的な人数等は未定)。
- 連携 : 退院時の共同指導や、地域の医療機関・住民への研修・相談対応の実績(※「相当な実績」とされ、数値基準は今後発表)。
- これまで「機能強化型」を諦めていた精神科ステーションにとって、正当な評価を得る大きなチャンスとなります。
2. 【適正化】訪問時間の厳格化(20分ルール)
- 頻回な短時間訪問(いわゆる30分未満の訪問)に対し、適正化のメスが入ります。
- 実際の訪問開始・終了時刻の記録が義務化される見込みです。20分未満の訪問は算定不可になるなど、ルールの厳格化が予想されます。
「精神科だから短時間でもOK」という曖昧な運用は許されなくなります。レセコンやタブレットでの正確な時間管理が必須となります。
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精神科訪問看護の詳しい算定要件や研修については、こちらの記事で解説しています。
▶ 精神科訪問看護のまるわかり算定ガイド|算定要件から研修、レセプトまでわかりやすく解説
【管理者向け】改定に向けて今から準備すべき3つのこと

改定内容(1/30時点)を受けて、今すぐ管理者が動くべきアクションプランは以下の3点です。
1. 「精神科比率」と「訪問時間」の現状分析
まず、自社のレセプトデータを確認しましょう。
特に精神科訪問看護を行っている場合、以下の2点を洗い出してください。
- 機能強化型4の要件に届きそうか?(精神科利用者の割合、重症者対応数など)
- 30分未満の訪問実績がどれくらいあるか?
もし30分未満が多い場合、6月以降減収になるリスクがあります。今のうちに訪問スケジュールの見直し(標準的な30分以上のケアへの移行)を検討する必要があります。
▼精神科訪問看護の改定詳細はこちら
「機能強化型4」の要件や、訪問時間の厳格化ルールについては、以下の記事で深掘りします。精神科メインのステーション様は必読です。(※公開予定)
2. ICT連携ツールの導入検討(医療介護連携SNS、ビジネスチャット等)
訪問看護医療情報連携加算を算定するには、地域の医師や関係機関とつながれるICTツールが必要です。
以下の視点でツール選定を進めましょう。
- 地域の医師会・多職種は何を使っているか?(相手に合わせるのが一番です)
- 医療介護専用の連携システムか、セキュリティ対策されたビジネスチャットか
- セキュリティは担保されているか
▼精神科訪問看護の改定詳細
「機能強化型4」の要件や、訪問時間の厳格化ルールについては、以下の記事で深掘りします。精神科メインのステーション様は必読です。(※公開予定)
3. 賃上げ支援金の申請準備
前述の「賃上げ・物価高騰支援事業」の 22.8万円 は、自動的に振り込まれるものではなく、申請が必要です。
都道府県ごとに申請窓口や時期が異なります。都道府県のホームページをこまめにチェックする体制を作りましょう。
まとめ:デジタル対応と賃上げが2026年のキーワード

2026年度改定は、事務負担を減らしながら人(賃金)とデジタルに投資する事業所が評価される仕組みです。
面倒なことが増えたと捉えるのではなく、給与を上げて良い人を採用し、ICTで楽をするチャンスが来たと捉えてみてください。
今回の改定を機に、まずは今できる現状分析から、新しい時代に強いステーション作りへの第一歩を踏み出し、スタッフも利用者さんも安心できる未来を創っていきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
※本記事は2026年1月30日時点の中医協「個別改定項目(案)」に基づき作成されています。正式な点数や要件は3月以降の告示をご確認ください。
参考資料:厚生労働省『個別改定項目について』





