オンライン請求の返戻とは?

オンライン請求で返戻通知が来ても、基本を知れば落ち着いて対応できます。まずは「減点調整」との違いや、返戻が起こる主な原因を理解しておきましょう。
「返戻」と「減点調整」の違い
混同しやすい「返戻(へんれい)」と「減点調整」の違いを整理します。この2つは意味も対応も全く異なるため、区別することが的確な初動につながります。
項目 | 返戻 | 減点調整 |
意味 | 記載不備による差し戻し | 審査による請求内容の減額 |
---|---|---|
対応 | 修正して再請求が必要 | 原則として再請求は不要 |
入金 | されない(再請求後) | 減額されて入金される |
一番の違いは、返戻は「再請求が必須のアクション」である点です。
返戻が起こる主な3つの理由
返戻の多くは日々の確認漏れが原因です。訪問看護の現場で起こりがちな代表的な理由を紹介します。
- 保険者番号や公費情報の入力ミス
保険証の確認漏れや登録時の入力ミスなど、基本的な情報伝達の誤り - サービス内容とレセプト内容の不一致
計画書と実績の不一致や、加算の算定要件を満たしていないケース - 月をまたいだ請求の誤り
月末のサービスが翌月分として請求されるなど、請求期間のズレが原因となるパターン
オンライン請求で返戻が来たときのやり方|5つのステップで解説

どのソフトをお使いでも、返戻から再請求までの工程は共通しています。ここでは5つのステップで対応方法を解説します。
Step1: 返戻レセプト情報をダウンロードする
まず、審査機関のシステムサイトから「返戻レセプト」の電子データをダウンロードします。
紙の通知はなく、このデータに返戻理由など全ての情報が含まれています。
ダウンロードには期限があるため、通知を確認したら速やかに行いましょう。
Step2: 介護ソフト(レセコン)へデータを取り込む
次に、ダウンロードした返戻データをお使いの訪問看護ソフトへ取り込みます。この作業で、返戻内容がソフト上に反映され、修正作業の準備が整います。
詳しい操作はソフトのマニュアルで確認してください。
Step3: 返戻内容を確認・レセプトを修正する
訪問看護ソフト上で返戻内容を確認し、該当レセプトを正しい情報に修正します。返戻データにはエラー事由が示されているため、その指示に従いましょう。
例えば「保険者番号の誤り」なら利用者情報を、「サービス内容の不一致」なら提供実績を見直します。
Step4: 再請求用のデータを作成する
レセプト修正後、再請求用の請求データを訪問看護ソフトで作成します。
修正内容を反映した「新しい請求データ」として出力する、月次請求とは別の作業です。返戻分のみを対象とするなど、作成範囲はソフトの仕様を確認しましょう。
Step5: オンラインで再請求し、受付結果を確認する
最後に、作成した再請求用データをオンラインで送信します。
送信だけで終わらせず、後日必ずシステムサイトで「受付完了」となっているか確認してください。この結果確認をもって、一連の対応は完了です。
⚠️地域による独自ルールも存在します 基本はオンラインで完結しますが、自治体によっては独自のルールが存在するため注意が必要です。 例えば、京都府の国民健康保険(福祉医療)のように、オンラインで請求しても返戻の修正は紙の請求書で再提出を求められるケースもあります。 |
お使いのソフトが、こうした地域独自の紙様式での出力にも対応しているか、事前に確認しておくと安心です。
参考:社会保険診療報酬支払基金「オンライン請求システム」
京都府国民健康保険団体連合会「訪問看護(医療保険請求分)の電子化に係るリーフレット」
返戻のやり方で迷ったら|ソフト会社に確認すべきポイント

実際のソフト操作で迷うときは、一人で悩まずサポートデスクに頼るのが一番の近道です。
いざ問い合わせる際に何から聞けばよいか戸惑わないよう、そのまま使える質問リストを用意しました。問い合わせの際に、ぜひご活用ください。
□「返戻データのダウンロード方法と、ソフトのどこから取り込めばよいか教えてください」 最初のステップである、返戻データの入手とソフトへの反映方法を確認する質問です。 |
□「取り込んだ返戻内容は、ソフトのどの画面でどのように確認できますか?」 エラー内容を見て修正作業に入るための、具体的な画面や操作方法を尋ねます。 |
□「修正後、再請求用のデータを作成して送信するまでの手順を教えてください」 修正から再請求完了までの一連の流れを、お使いのソフトに沿って確認する質問です。 |
□「私たちが事業所を置く都道府県の、何か特別な(ローカルな)返戻ルールに対応していますか?紙での再提出が必要な場合も、スムーズに出力できますか?」 地域独自ルールへの対応状況を確認します。 |
これらのポイントを押さえて質問すれば、返戻対応に必要な操作は一通り把握できます。遠慮せずに、専門家のサポートを上手に頼りましょう。
オンライン請求の返戻を未然に防ぐ3つの工夫

返戻対応そのものを減らすには、日々の業務での工夫が効果的です。
ここでは、返戻を未然に防ぐ3つの工夫を紹介します。
工夫1:「ダブルチェック」の仕組みを作る 請求データを送信する前は、必ず担当者以外がチェックするルールを設けます。自分では気づきにくいミスも、他者の目を通せば発見しやすくなります。 新人分はベテランが確認するなど、役割分担を決めると良いでしょう。 |
工夫2:スタッフ間の情報共有を徹底する 利用者の保険証変更といった重要事項は、即座に全員へ共有します。口頭だけでなく、連絡ノートなど複数の方法で伝えると確実です。 この情報伝達の徹底が、保険関連の返戻を大きく減らします。 |
工夫3:オンライン資格確認を活用して入力ミスを防ぐ 保険証の番号や資格、負担割合の誤りが返戻の主な原因です。オンライン資格確認を導入すれば、これらの情報を正確に取得できるため、返戻リスクそのものを大幅に減らすことができます。 人の目に頼るだけでなく、制度とシステムを積極的に活用してエラーを防ぐ視点が、管理者の負担を大きく軽くします。 |
▼オンライン請求・資格確認の基本から知りたい方はこちら
【まだ間に合う!】訪問看護のオンライン請求・オンライン資格確認の義務化 | 対応や補助金申請期限などをわかりやすく解説
返戻対応もスムーズに!ソフト選びは「柔軟性」と「予防策」で

返戻が起きた時こそ、ソフトの使いやすさが実感できます。
いざという時の対応まで見据えると、ソフト選びでは「ルールへの柔軟性」と「返戻の予防策」という視点が重要です。
地域独自ルールにも対応できる「柔軟性」
全国一律のルールだけでなく、例えば京都府の独自様式のように、地域ごとの請求ルールに対応できるソフトは非常に心強い存在です。
オンラインで完結しない紙での再提出が必要な場合でも、スムーズに出力できるかどうかも確認したいポイントです。
オンライン資格確認で、そもそも返戻を「予防」する
返戻対応の手間をなくす最も効果的な対策の一つが、オンライン資格確認の活用です。
保険証の資格喪失や負担割合の間違いといった返戻の根本原因を、入力段階で防ぐことができます。
まとめ

今回は、オンライン請求における返戻対応について、その全体像と具体的な流れを解説しました。
返戻の通知が届いても、慌てる必要はありません。ご紹介した5つのステップに沿って、自分が今どの段階にいるのかを把握することが、落ち着いた対応への近道です。
日々の業務での少しの工夫の積み重ねや、オンライン資格確認の積極的な活用で、返戻そのものを減らしていくことも可能です。
この記事が、あなたの事業所の請求業務を少しでもスムーズにする一助となれば幸いです。
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