訪問看護における退院時共同指導加算とは?

退院前カンファレンスを評価する「退院時共同指導加算」。基本と、混同しやすい「退院支援指導加算」との違いを解説します。
加算の目的とメリット
病院・施設スタッフと訪問看護師が退院前に共同指導や情報共有を行う、患者の円滑な在宅療養移行の支援を評価する加算です。
これは収益向上だけでなく、医療機関との連携強化、ケアの質向上につながります。
「退院支援指導加算」との違い
退院時共同指導加算は退院前に病院等で共同指導を行うことが要件です。一方、退院支援指導加算は退院当日に利用者の自宅で単独指導や環境確認を行うことが要件の診療報酬です。
つまり、退院前の「連携」が共同指導、退院当日の「自宅支援」が支援指導です。要件を満たせば両方算定可能です。
【保険別】訪問看護 退院時共同指導加算の算定要件:医療・介護の違い

退院時共同指導加算は、医療保険と介護保険で算定要件や単位(費用)が異なります。それぞれの違いと共通点を整理しましょう。
一目でわかる!医療保険・介護保険 比較表
まず、主な違いと共通点を比較表で確認します。
項目 | 医療保険 | 介護保険 |
単位/費用 | 8,000円/回 | 600単位/回 |
---|---|---|
実施者(訪看) | 看護師等 (准看護師 不可) | 同左 |
算定回数 | 原則1回(別表7・8該当者は2回まで可) | 原則1回(特例で月2回あり) |
指導方法 | 対面 or ICT(ビデオ通話等、条件あり、電話不可) | 同左 |
記録/文書 | 文書で提供 | 文書または履歴が残るメール等で提供 |
特別の関係 | 特別な関係にある医療機関等との共同指導でも算定可 | 同左 |
前月実施分の請求 | 前月実施分も初回訪問日に算定可能 | 同左 |
その他特記事項 | 退院時共同指導加算の上乗せ加算あり(2,000円/回、詳細は後述) | 初回加算との併算定不可。同月に定期巡回・随時対応型訪問介護看護費等は算定不可 |
【医療保険】算定ポイント総まとめ
医療保険での退院時共同指導加算(費用)のポイントです。
- 費用: 8,000円/回
- 対象者: 保険医療機関または介護老人保健施設もしくは介護医療院に入院中(入所中)で、訪問看護受療希望者またはその看護者
- 実施者: 看護師等と主治医等が共同指導
- 算定回数: 原則1回。ただし、別表7・8該当者は2回算定可能。
- 指導方法: 対面が原則。本人の同意を得てリアルタイム画像(ビデオ通話)での参加も可 ※医療情報システムの安全管理ガイドライン(厚労省)対応
- 文書提供: 指導内容を文書で提供
- 記録: 訪問看護記録書に記録
- 特別管理指導加算(上乗せ加算): 特別管理加算の対象状態該当者は、+2,000円/回
- 留意点:
- 2回算定利用者を複数ステーションが担当する場合、1回ずつの算定も可
- 初回訪看前に死亡・再入院した場合は算定不可
【介護保険】算定ポイント総まとめ
退院時共同指導加算(単位数)のポイントです。
- 単位数: 600単位/回
- 対象者: 病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院に入院中(入所中)の退院(退所)時利用者
- 実施者: 看護師等と医師等が連携
- 算定回数: 原則1回。ただし、特別管理加算の対象状態でケアマネが複数回必要と認めた場合は月2回まで。
- 指導方法: 本人の同意を得てリアルタイム画像(ビデオ通話)での参加も可
- 文書提供: 文書または履歴の残るメール等可
- 記録: 訪問看護記録書に記録
- 併算定不可:
- 医療保険で算定する場合や初回加算を算定する場合は算定不可
- 同月に定期巡回・随時対応型訪問介護看護費、複合型サービス費、医療保険の当該加算は算定不可
- 限度額: 区分支給限度基準額の対象
- 留意点: 月2回算定対象者を複数ステーションが担当する場合、1回ずつの算定も可
(出典:厚生労働省R6年介護保険最新情報Vol.1213、介護報酬改定における改定事項について)
💡医療保険の上乗せ加算、介護保険の2回の算定が認められる特別管理加算について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。 ≫訪問看護の特別管理加算とは?算定条件やⅠ・Ⅱの違いなど、知っておきたいポイントを解説します! |
【実践】算定漏れゼロ!退院時共同指導の情報提供書テンプレート&記載例

退院時共同指導加算の確実な算定には適切な記録が必須です。ここでは記載項目、共通テンプレート、保険別記載例と注意点を解説し、算定漏れを防ぎます。
記載すべき項目と効率的な作成のコツ(共通)
医療・介護保険共通で押さえておきたい記載項目は以下のとおりです。
- 実施日時・場所
- 出席者(医療機関側、訪看ST側、利用者・家族、ケアマネ)
- 指導・共有内容(利用者状態、医療的管理、療養上の注意点、訪看への指示、役割分担、利用者意向など)
- 今後の計画・方針
- 文書提供の方法
これらの項目を網羅することで、算定根拠となる記録が明確になります。
効率的な記録作成のコツ
- テンプレート活用:記載漏れ防止、時間短縮
- 要点集約:5W1H意識、客観的事実と必要情報を簡潔に
- カンファレンス直後記録:正確性向上、手間削減
【共通テンプレート】退院時共同指導 記録様式(ダウンロード可)
以下に、退院時共同指導の記録に使える汎用的なテンプレートの項目例を示します。このテンプレートは、ステーションの状況に合わせてカスタマイズしてご活用いただけます。PDF形式でダウンロードも可能ですので、ぜひご活用ください。
【テンプレートご利用の際の注意点】
- このテンプレートはあくまで一例です。必ず貴ステーションの記録規程や運用に合わせて内容を修正・追加してください。
- 必要な項目が網羅されているか、要件を満たしているか等は、ご自身の責任においてご確認をお願いいたします。
【記載例】医療保険・介護保険 それぞれのケースでの書き方と注意点
医療保険と介護保険それぞれのケースでの具体的な記載例を画像で示し、特に注意すべきポイントを解説します。
医療保険の場合の記載例・ポイント
💡摘要欄記載: レセプトの摘要欄には以下のように簡潔に記載するとよいでしょう。
- 例1(基本):「R7.5.14 △△病院にて退院時共同指導(医 佐藤、看 鈴木、MSW 田中、本人、家族、当ST看 訪問)」
- 例2(上乗せ):「R7.5.14 △△病院にて退院時共同指導(対象:別表第七該当、医 佐藤、看 鈴木、MSW 田中、本人、家族、当ST看 訪問)、特管指導加算(退院時共同指導上乗せ分)」
介護保険の場合の記載例・ポイント
💡ケアマネジャーの参加(原則)、利用者・家族への文書提供(メール等も可、同意記録)、月2回算定のケース、初回加算との併算定不可などがポイントです。
訪問看護の退院時共同指導を円滑に!多職種との連携術

退院時共同指導加算の算定には、多職種とのスムーズな連携が欠かせません。
病院・施設、ケアマネとの効果的な情報共有と連携のポイント
円滑な連携のためには、それぞれの専門職との間で、ポイントを押さえた情報共有が重要です。
- 病院との連携:
- 依頼・調整時:カンファレンス日時、場所、目的、患者情報を事前確認。
- 当日:訪問看護ステーションの役割を明確にし、必要な情報を漏れなく共有。退院後の生活を見据えた具体的な指導内容を協議。
- ケアマネジャーとの連携:
- 事前共有:利用者の状態、退院後の意向、加算算定の可能性を共有。
- カンファレンス後:決定事項、指導内容、訪問看護計画の概要を速やかに報告。
「加算を知らない」ケアマネへの対処法
ケアマネジャーが退院時共同指導加算について詳しくない場合もあります。その際は、以下の点を丁寧に説明し、協力を依頼しましょう。
- 加算の目的と利用者メリット: 在宅移行支援の質の向上
- 算定根拠の提示: 必要であれば、関連通知や資料を簡潔に示し、ケアプランへの位置づけを依頼。介護保険の場合、区分支給限度基準額の対象であることを伝える。
まとめ:加算を確実に算定し、質の高いケアと安定経営へ

今回は、訪問看護の退院時共同指導加算について、算定要件から記録・連携のポイントまで解説しました。
特に小規模ステーションにとって、この加算の確実な算定は、質の高い在宅療養支援の実現と、安定したステーション経営の両立には欠かせません。
この記事でご紹介したテンプレートや記載例、連携のコツを参考に、日々の業務の中で算定漏れを防ぎ、積極的に加算取得を目指しましょう。それが、利用者さんの安心と、ステーションの未来につながる一歩となるはずです。
最後までお読みくださりありがとうございました。